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好調な新シリーズ、NHKでの再放送…未だ衰えぬ『セーラームーン』人気の理由
『セーラームーン』以降、“少女漫画原作”の戦うヒロイン(魔法少女)が定番化
どこにでもいる普通の女子中学生、月野うさぎ。泣き虫でドジな彼女はある日、人間の言葉をしゃべる不思議な黒猫と出会い、美少女戦士セーラームーンに変身する力を与えられる。その使命は、月のプリンセスを探し出して守護すること――。こうしてあらすじを書き出してしまうと、どこにでもある何の変哲もない物語と思われるかもしれない。しかし、今となっては「どこにでもある」ものでも、この時点ではまだ“どこにも”なかったのだ。まず、少女漫画を原作としたアニメで、ヒロインが変身して戦うというコンセプトそのものが斬新だった。それ以前の“戦うヒロイン”の代表格といえば『キューティーハニー』がすぐに思い浮かぶが、こちらは少年漫画が原作。コスチュームなどセクシーさを前面に押し出した作りで、女の子の憧れと呼ぶには少しかけ離れたものとなっていた。(余談だが、『セーラームーン』シリーズの後番組として1997年にスタートしたリメイク作『キューティーハニーF』は少女漫画テイストの強い作風となっている。これもまた『セーラームーン』が強い影響力を及ぼしたひとつの事例といえるだろう)
また、「普通の女の子が偶然に手に入れた不思議な力で変身する」という点で、『セーラームーン』は魔法少女アニメの系譜に位置するといえるが、それ以前の魔法少女アニメで変身するものといえば、様々な職業のプロフェッショナルやアイドル歌手など、現実の延長線上にあるものが主流だった。描かれる内容も、身の周りの問題を魔法で解決したり、主人公自身の成長を描いたりと日常に寄り添ったものがほとんどで、悪者との対決なども皆無ではなかっただろうが、メインの見せ場となることはなかった。魔法少女なのに、戦う。この大胆な作風が女児を中心とした幅広い層に受け入れられたことで、以降の魔法少女アニメの多くがバトル要素を取り入れることとなる。2014年に10周年を迎えた『プリキュア』シリーズや、深夜アニメの『魔法少女まどか☆マギカ』など、例を挙げればキリがないほどだ。
◆“女の子は憧れ”“男性ファンは熱狂”性別越え虜にした『セーラームーン』
一方で『セーラームーン』は、男性ファンが熱狂するような要素も少なからず含んでいた。『セーラームーン』の仲間として登場するセーラー戦士たちは個性豊かなキャラクターばかりで、アイドルグループのメンバーから推しを決めるように、お目当ての戦士の活躍を見るだけでも十分すぎるほど楽しめていたはず。色分けされた複数の戦士によるバトルシーンは『スーパー戦隊シリーズ』などを彷彿とさせて、男性ファンでも作品世界に入りやすかったはず。セーラー服をモチーフとしたコスチュームは直接的なセクシーさはないものの、それがかえって健康的なお色気となって世の男性たちをドキドキさせていた。
「セーラームーンになりたい」願望が様々なコラボ商品に投影
これまでネット配信のみということで、どうしても視聴者層が限られるという点が否めなかった『〜Crystal』ではあるが、地上波での放送開始となればより視聴者層・ファン層の拡大が期待できる。放送局や放送開始時期の発表は今後となる予定で、気になるのはどの時間帯、どの放送枠になるかというところ。今の子供たちにも視聴可能な時間帯ならばこの先10年、20年、30年……と『セーラームーン』と普遍的なコンテンツになる可能性は十分にあるはずだ。
(文:仲上佳克)