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忽那汐里 SPECIAL INTERVIEW 自分も同じ気持ちで揺れ動きながら……
女性のずるさがある
【忽那】 台本は全体を読んでいましたので、それぞれの撮影にはかかわっていないのですが、完成作を観るのを楽しみにしていました。同じ映画でありながらも、別のパートはそれぞれ雰囲気も異なっていて、「艶(つや)」にまつわる人の思いとか背景も違いますし。音楽が人の呼吸と調和するように絶妙に入っていることで緊迫感が増していて、とてもおもしろかったです。
――「つや」に対して、忽那さんはどういうイメージを持っていましたか?
【忽那】 私が演じる麻千子は「つや」のことをまったく覚えていないんですよね。そういう未知の存在である「つや」と、複雑な大人の関係で繋がっていたと思います。「つや」には女性のずるさがありますし、母から父を奪ったという憎い思いが麻千子にはありますし……。自分は「つや」の被害者なんですね。でも、そういう「つや」への気持ちが麻千子の行動の原動力になっていたと思います。
――麻千子は、「つや」に父を奪われたわりには、それを悲観視しないで純粋な部分もたくさん持っているように見えましたが、そこは意識しましたか?
【忽那】 ぱっと見は純粋に育ったように見えても、その背景っていうのはどこかに漏れていると思うんですよね。でも、麻千子はひたむきで好奇心旺盛で、知らないものに対するまっすぐさがあったほうがいいかなとは思っていました。
―― 一方で、麻千子は自ら大学教授との危うい関係にも飛び込んでいきますね。
【忽那】 麻千子の気持ちを突き動かすものってなんだろうと思ったときに、ひとつはお父さんに会いたいっていうのがあると思いますが、それ以上に、お母さんの気持ちを知りたいっていうのがあったと思います。そこで必要だったのが教授とのシーン。大人の女性の感情を、教授と近づくことによって知ることができると。でも、彼女のまっすぐすぎる行動力も、怖いといえば怖いですよね。
気持ちがどう変化していくのか……
【忽那】 麻千子の気持ち自体が白黒はっきりしているものではなかったので、とにかく監督と話し合いながら演技をしていました。これが正解というものがはっきりとなかったので、とにかくよく考えて、自分も麻千子と同じで揺れ動きながら演技していました。
――監督からの指示で印象に残っていることはありますか?
【忽那】 シーンごとにたくさん話し合いました。教授と一緒にホテルのエレベーターを降りて、廊下をふたりで歩くシーンがあったんですが、そこはただ歩くのではなく、ふたりの距離感とか後姿とか、そういう微妙なところで見せるべきシーンだっていうことを話し合ったりしました。そのほかにもたくさんのシーンで、動きの一つひとつにまで多くのことが必要な役なんだなって思いました。
――阿部寛さん演じるお父さんとの再会のシーンは衝撃でした。今まで、忽那さんはドラマ『家政婦のミタ』にしても、今回の映画にしても、父親から父性というものを感じられない役が続いているような気がするのですが……。
【忽那】 私自身にとっても父性とはどういうものかはっきりとはわからないんですけど……。今の時代だったら、阿部さん演じる父親にしても、長谷川博己さん演じる父親にしても、とっさに娘に対してとる行動に父性がないとしても、それは仕方がないという気もするんです。その行動に共感できるっていう人もきっといるんじゃないかと……。阿部さん演じる父親とのシーンは、すごく短いシーンではありましたが、これまでに麻千子が抱いていた気持ちとか、これからその気持ちがどう変化していくのかまで、本当にいろんなものが詰まっていると思います。
――お母さん役の大竹しのぶさんとはどんな風にコミュニケーションしていましたか?
【忽那】 撮影現場では、ほとんど演技の話はしなかったんです。でも、それが自然な感じなので、母親とのコミュニケーションにも近い気がしました。そういう空気ができあがっていたので、母とふたりで生きてきたという感じを演じやすかったです。この役は、大竹さんとじゃないと無理だったんじゃないかなって思います。
(文:西森路代/撮り下ろし写真:鈴木一なり)
スタイリスト:櫻井まさえ/グリーンワンピース【spoken words project】
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