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(更新: ORICON NEWS

妻夫木聡 SPECIAL INTERVIEW 魂の叫びみたいなものが詰まっている

妻夫木聡がこの監督の色に染まるとどうなるのか──。10代の頃から役者として着実なキャリアを重ねてきた妻夫木が、初の井筒和幸監督作『黄金を抱いて翔べ』で金塊強奪作戦の実行犯を演じた。「自分の考えを否定していった」と話す彼が、役へ投影した思い、そして表現者としての今の在り方について語った。

妻夫木聡を抜き去って 役としてどう生きるか

──映画全体から、ハードボイルドという言葉では収まらないほどの生々しい欲望や生命力を感じました。
妻夫木この作品は、いわゆる日本人がイメージする、銃の撃ち合いや爆破シーンがあったりする“ハードボイルド”の枠にハマらないですよね。もっと、魂の叫びみたいなものが詰まっているんだと思います。

──撮影のずいぶん前から、舞台となった大阪の街を訪れていたんですよね。
妻夫木幸い時間に余裕ができたので、ひとりで町中を歩いて回っていたんです。僕が演じた幸田という人物は、孤独で悲しい男でもあるけど、それ以外にも心に抱えているものが多いと感じていて。その正体を探る旅をしていました。自分の中から妻夫木聡を抜き去って、幸田としてどう生きるか、そのために幸田の人間性を探らなきゃ。そういう思いと闘う時間を過ごしていました。

──役の青写真を描くのではなく、精神面から近づいて行ったと。
妻夫木役に関して「こうありたい」と考えることは、『悪人』以降やめたんです。自分の中に答えを出したら、スクリーンに現れるのもその顔でしかなくなる。それはきっとつまらないことなんじゃないかな、と考えるようになったんですよね。昔は役をイメージすることも、現場でそのイメージが変化していく感覚も楽しんでいた時期があったんですけど、最近は変わってきました。リアリティを求めるということではないんですけれど、見せ方を気にするより、演者としての表現に集中しようという意識になってきたんです。精神的なところから入る役作りに変えてから、「こういう風に演じよう」という足し算の芝居じゃなくて、むしろどんどん自分の考えを否定していって、役の精神性になろうっていう、引き算の芝居に変わりました。そうしたらすごく役へ集中できるようになって。シンプルなんですけど、自分がどれだけその役の人間として生きられるかだけを考えればいいんだよなって、気づけたんです。

──引き算の芝居、つまり引いていくというのは、自分の芯がしっかりしていないと難しいですよね。おのずと自信も求められる。
妻夫木自信なんてないですよ(笑)。ずっと悩んでいます。僕はこの役者のお仕事を始めて14年目で、デビュー当時からプロとしての自覚は持つようにしていたけど、今は昔より「プロとはこうだ」と構えなくなったというか。余計な肩の力が抜けた感じなのかな。以前はお仕事一つひとつに対して、“責任感”とか“メッセージ”とか、“作品へ込めた思い”とか、まるごと全部考えていたんですよ。もちろん今も大切なことだと思うけど、それよりまず表現者としての立ち位置を、改めて重視するようになったんです。

人間としての色気を感じる 考えずに出た表情

──キャリアを重ねて知識が増えていくほどに、原点がよりクリアになってきたわけですね。
妻夫木経験を重ねることはいいことでもあるけど、ともすれば新鮮味を無くしてしまう力でもありますよね。だからこそ、原点に意識を向けるようになったのかもしれないです。シンプルに、感じたことをそのまま表現できる自分であろう、という気持ちが強くなっています。役に集中して、その瞬間何も考えずに出た表情とかに、人間としての色気を感じるんです。

──初めての井筒和幸監督の現場はいかがでした?【妻夫木】 
いやー、楽しかったです!こんなにみんなに愛される現場も珍しいんじゃないかっていうくらい、映画愛に溢れた監督とスタッフが結集していました。実はクランクイン前から監督と話したくて仕方なかったんですよ。一緒に飲みに行きたいなって(笑)。でもそれをすると、役から妻夫木聡に戻っちゃうからグッと我慢して、撮影がすべて終わってからいろんなことをお話しさせてもらいました。

──妻夫木さんから見た井筒監督の魅力ってどういういうところですか?
妻夫木やっぱりあの人間性ですね。ストレートに作品にも表れていると思います。映画を観ていて「あれ?泣くつもりじゃなかったのに涙が出てきた」っていうことが、井筒監督作品には多いんですよ。それって痛みや悲しみだけじゃなく、説明できない心の動きを描いているからなんだと思うんです。だから監督の表現する世界には独特のロマン性も感じる。今作にも、生きることへの貪欲さや、人間の存在そのものに対する問いかけが詰め込まれていると感じています。今の世の中って、社会の仕組みとして、求めれば大抵のことが叶う便利さがありますけど、割り切れないこととか理屈では語れない部分の、一人ひとりが“感じる”ことをもっと大事にしてもいいと思うんですよね。この映画はそういう意味では“感じさせる”映画、そして感情を吐き出す勇気をくれる映画だと思っています。
(文:奥浜有冴/撮り下ろし写真:片山よしお)

映画情報

黄金を抱いて翔べ

 大阪に本店を置くメガバンク。その地下には240億円相当の金塊が眠るという。物語は、その金塊を強奪するという大胆な計画を企て、集結した6人の男たちによる"命がけの挑戦"だ。彼らは鉄壁の要塞を突破するための綿密な作戦を練り始める。しかし、計画の過程で謎の事件が次々と発生。そこには誰も知らない、それぞれの過去が絡み合っていた。徐々に見え始める彼らの背景、そして明かされる真実……。果たして、"黄金"に人生のすべてを賭けた男たちの運命は――。

監督:井筒和幸
出演:妻夫木聡 浅野忠信 桐谷健太 溝端淳平 チャンミン(東方神起) 西田敏行
【映画予告編】 【OFFICIAL SITE】
2012年11月3日(土)全国ロードショー (C)2012「黄金を抱いて翔べ」製作委員会

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