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佐々木蔵之介『心が動くから走る』
ふんどし姿は役者の自己責任で…
佐々木昨年、嵐山が洪水で渡月橋の上にまで水が氾濫したときがありましたよね。撮影があの頃だったんです。だから、天候のせいで予定が急に変わることも多かったです。京都の流れ橋で撮影するはずが、急きょ木造では日本一長い、静岡の蓬莱橋まで行って撮影をしたりしていました。
――この作品も、急に参勤交代を命じられて、無理難題を知恵で乗り越える物語でしたけど、撮影現場も同じ感じだったんですね。
佐々木大名行列のシーンを撮る予定で、かなりエキストラの人を集めていたにも関わらず、雨のせいで延期になったり、現場はいつも製作費や時間との戦いでしたね。でも、変更したことがいい方向に働いたこともありました。映画の最後に出てくる橋は、当初の予定よりも立派な橋に変更になったので、いい感じで長回しの参勤交代のシーンが撮影できたということもありました。
――それだけ苦労があったら、共演者の方とも仲良くなったりしたのでは。
佐々木映画のなかでは、とにかく走るんですね。山も浜も走ったし、ドロドロになって、それが終わったらみんなで風呂に入るんですよ。その後、飲みにも行きましたし、本当に絆は太くなりましたね。
――ふんどしのシーンなんかもありましたね。
佐々木殿はふんどしにはならないだろうということで、僕がなることはなかったんですけど、藩士役の方たちは“自己責任”でやっていました。
――自己責任というと……?
佐々木普段、衣装は衣装スタッフさんに着せてもらうんですけど、ふんどしは、各自が自分でしめるし、自分で持って帰って、また持ってくるんです。できあがった映画を観て、ふんどしのシーンはおもしろかったですね。監督の意向で、知念(侑李)くんがよく映るように一番後ろになったり、最後スローがかかったりしています(笑)。でも、あのシーンは、物語のなかでは「ああ、その手があったか!」という場面だから、単に笑わせているだけではなくて、一生懸命だからいいんですよね。
ポップで自由でかっこいい時代劇
佐々木僕は、西村(雅彦)さんをはじめ、藩士のみんなと飲むこともあったし、知念くんは未成年なのでもちろんいないんですけど、そのほかにも、陣内(孝則)さん、石橋(蓮司)さん、(市川)猿之助さんという徳川幕府チームとも飲んだし、深田(恭子)さん、伊原(剛志)さんというメンバーでも飲みました。深田さんと伊原さんは、京都ロケのときは僕の家にも来ましたね。
――ご実家の酒蔵にですか?
佐々木そうなんです。蔵見学をして、お酒の説明をして、最後に利き酒をして、それで京都の町に飲みにいくという流れでした。実は、僕は高校時代までは京都でしたけど、大学は神戸で、会社は大阪だったので、そんなに京都のお店を知らなかったんです。でも、今回は2ヶ月間、京都に滞在したことで、改めて京都の良さをいろいろ知りました。
――映画には、アクションシーンもありましたが、準備はされましたか?
佐々木みんなで立ち回りを覚えたり、乗馬をしたり、けっこう稽古はしていました。殿も藩士も、普段はゆるいキャラクターなんですけど、最後にみんなで立ち回るときには、「ゆるく見えてたみんなが、こんなにかっこよかったんだ」というカタルシスがあるんです。
――時代劇ではあるけれど、新鮮な作品でしたね。最初に台本を読んだときは、どのような感想を持たれましたか?
佐々木まず、タイトルにパンチがありますよね。で、台本を読み始めたら、タイトルの通り超高速で読み進めてしまいまして、藩士たちのキャラクターも、一回読んだだけで、すごくイメージが沸きました。しっかりとした時代劇でありながら、ポップで自由でかっこいいなと思いました。
やわらかくて力にもなった、あたたかい言葉
佐々木実はこの一年、舞台『非常の人 何ぞ非常に〜奇譚 平賀源内と杉田玄白〜』で平賀源内を演じ、猿之助さんと『スーパー歌舞伎II(セカンド)「空ヲ刻ム者―若き仏師の物語―」』でも共演し、自分にとって時代劇がすごく身近なものになりました。今回の映画も、知念くんをはじめ、若い人も出ているし、時代劇の意外な魅力も伝わると思うんです。この作品が時代劇を観るひとつのきっかけになればと思いますね。
――佐々木さんが演じられた殿のキャラクターも素敵でした。
佐々木殿は閉所恐怖症で、スーパーマンというわけでもないんですよね。殿が農民のところに行って馬を下りて、土のついたまま大根をかじるシーンがありますが、そういうシーンに殿の生き方がにじみ出ていると思います。それと、演じるなかで、いわき弁が力になりましたね。なんともやわらかくて、ピンチに陥っても、自然と大丈夫という気持ちになれる、あたたかい言葉でした。台本の第一稿では標準語だったんですけど、第二稿でいわき弁になったんです。自分でも、こういうニュアンスをいわき弁で言い換えたいんだけど、というふうに方言指導の方に聞いたりしていました。
――そんなふうに、スタッフさんや監督に提案することも多かったんですか?
佐々木監督には、とにかく「走りましょう」と言っていました。やっぱり、「急ぐ」にしても「逃げる」にしても「追いかける」にしても、心が動くから走るわけなので。
――監督は、「300年前のサムライ魂を観てほしい」と仰られていましたが、佐々木さんがこの映画で観てほしいところとは。
佐々木やっぱり、不屈の精神で困難に立ち向かっていく、殿と藩士の精神を観てほしいと思います。ちょっとゆるいけれど、やるときはやる藩士たちの姿を観て、元気になってもらえるとうれしいですね。
(文:西森路代/撮り下ろし写真:鈴木一なり)
超高速!参勤交代
関連リンク
・『超高速!参勤交代』公式サイト