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アイドルにとって“卒業”とは!?

アイドルにとって“卒業”とは!?

 人気アイドルグループ・AKB48の大島優子が、昨年大みそか恒例の『第64回紅白歌合戦』のステージで卒業を発表し、注目を集めた。“AKB48を卒業=アイドルからの卒業”を宣言した大島は、6月9日に東京・秋葉原のAKB48劇場で行われた卒業公演もって同グループを卒業し、その後は女優業に専念する。近年、アイドルの卒業宣言を耳にすることが多いが、アイドルにとって“卒業”とはいったいどういったものか、改めて考えてみた。

おニャン子クラブを期に“卒業制度”が定着

  • 大島優子(C)ORICON NewS inc.

    大島優子(C)ORICON NewS inc.

 まず、「アイドルと卒業」を考える前に、そもそもアイドルとは何なのか?現在に続くスタイルのアイドルは70年代に端を発する。南沙織が源流とも言われるが、当時は“アイドル=アイドル歌手”。10代の少女にしか表現できない世界を歌うのがアイドルだった。20歳を越えて数年も経てば、大人の歌手になるか、女優になるか。引退しなければ“アイドル卒業”は儀式もなく、気づけばいつの間にか終わっているものだった。

 アイドルが初めて“卒業”という言葉を大々的に使ったのは1986年、おニャン子クラブから中島美春と河合その子が離れるときだった。中島は歯科衛生士を目指して芸能界から引退、河合はソロ歌手として活動を続けたが、おニャン子クラブは「女子高生の放課後のクラブ活動」をコンセプトにしていたため、グループからの離脱を“卒業”と呼ぶのは自然だった。その後、語感のキレイさから、グループを抜けることを“卒業”と呼ぶのが一般化。アイドルに限らず、引退や番組降板の婉曲表現としても“卒業”は重宝されている。

アイドルからの卒業=“サービス業”から“製造業”へ転職……

 男性アイドルは、単純に“カッコイイ憧れの存在”的な意味合いが強く、年齢に左右されにくいが、女性アイドルは“少女性”が大きな要素な分、いつまでも名乗れるものではない。では、アイドルは卒業したら何になるのか?肩書きで言えば、女優、アーティスト、バラエティタレントなどに変わる。ただ、それらの仕事自体はアイドルもやっていること。一方、アイドルを卒業した翌日から、基本なくなる仕事が握手会やそれに順次たイベント。数年後にはファンクラブも解散することが多い。また、“アイドル映画”というジャンルもあり、その定義のひとつが、「アイドルが演技に取り組む姿自体を鑑賞する映画」といったもの。もちろん、演技がうまいアイドルもいるが、ファンには巧拙は二の次。ある意味、子供の学芸会を親が楽しむスタンスで、握手会などで直に交流しながら、成長過程を見せるのがアイドルだ。

 だが、アイドルを卒業してイチ女優として映画に出るなら、そうはいかない。本来は役者や監督たちが作り上げた世界を楽しむのが映画だ。頑張っても成長しても、思い入れのない一般客には関係なく、スクリーンに映されたものがすべて。アーティストになってもバラエティタレントになっても、そこは同じことだ。

 アイドルからの卒業。それは、職種がサービス業から製造業に変わること。自分自身を見せるより、自分が作ったもの(演じている自分自身も含めて)を見せる仕事に。統計で言えば、この“転職”の成功率は低い。だが、サービス業の経験を活かして成功したアイドル卒業生も少なくない。女優として第一線で活躍する小泉今日子や篠原涼子など、いまだにそのサービス精神を作品の根底に感じる。約4年ほど前からアイドル戦国時代と言われてきた今、卒業生たちの第2ラウンドも始まりつつある。

(文:斉藤貴志)

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