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8月28日公開の映画『東京島』(篠崎誠監督)に主演する女優・木村多江(39)がこのほど、ORICON STYLEの取材に応じた。直木賞作家・桐野夏生のベストセラー小説が原作で、若い男23人と、40代の女がひとり、無人島に漂着するという逆ハーレム状態の設定がセンセーショナルな同作。出演を依頼された時、そして撮影中も「何で、私? 本当に私でいいの?」と悩み続けたという。「だって、木村多江と言えば、薄幸で控えめな女の役のイメージでしょ?」。悩みながらも木村は、無人島でのサバイバル生活の中で、しなやかに生き抜くヒロイン・清子をタフに演じている。
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撮影は鹿児島県の沖永良部島と徳之島で40日以上に及ぶ過酷なオールロケが敢行された。「私でいいの? これでいいの?」という不安は、“島生活”が長くなるにつれ、解消されていく。「いつもは撮影前に役作りのプランが7割くらい出来ているのですが、今回は全く想像がつかなかった。頭で考えるのではなく、現場で共演者たちと一緒に体感しながら自然と清子になっていった感じです。お芝居をしながら、急に気持ちがざわついたり、うぁーと感情がこみ上げてきたり、そんなこと初めてでした」。
木村のほかには、清子の3番目の夫・GM役の福士誠治、単独行動をとるワタナベ役の窪塚洋介、トラブルの調整役を務めるオラガ役の柄本佑ら、男性キャストばかり。「私は毎日のように撮影に追われていましたけど、ほかの役者たちは待ち時間が多い日もあって、ほかにすることもなくて、『東京に帰りたい』と弱気になっていた方もいらした。それがいい感じで映画にも反映されていると思います(笑)。お芝居の上では、男も女もなく戦いたいという思いがあったのですが、みなさん本当にいい人たちで…『もっとしっかりしてよ』と思っているのが、清子なのか、私なのか、わからなくなっていました(笑)」。
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助けのこない無人島に置き去りにされたら…、どうする?との問いに木村は、「清子ほどポジティブになれないかもしれないが…」と前置きしつつ、「毎日助けの船が着ているかどうかをチェックして、でも、欲張りだから島での暮らしも楽しもうとすると思う。今日はどれだけ魚が釣れるか、今日はあの山に登ってみようか、と、自分を奮い立たせながら、意外と生きることに貪欲かもしれない(笑)」と十分にタフな答え。
さらに木村は、「開き直った女性は強い。開き直った時、女性であることを放棄してしまうかどうかで、その後の生き方が変わっていく」と、ヒロインから学んだ“女らしさ”を説く。無人島生活で肌は日焼けし、服もボロボロ。「だんだん、どうでもよくなってくる。その方が楽だし、その気持ちはすごくよくわかる。男たちが女として意識してくれているうちは、見た目を気にして女としていられるんですけど、やがて、女として特別扱いされなくなってきた時にどうするか。清子が本当にカッコ良くなるのは、自分のためではなく、誰かのために生きる強さを見せてから。女性の美しさ、女らしさって、見た目ではなく、母性愛みたいなものにあるのかな」。
ずぶとく生きる清子の姿は時に滑稽で、その時々に発する言葉が印象に残る。木村のお気に入りのセリフは「何がハッピーエンドかは、自分で決めるわ」。「清子は言葉の力を借りて、どんどん前に進んでいく。孤独や行き詰まりを感じていたら、この映画を観て、清子の強さや自由さを体感して、自分の中にも見つけてもらえたら、うれしい。そして、清子のセリフをどんどん使って、ポジティブで、パワフルで、タフでエレガントな女性を目指してほしいですね」。
『東京島』
ヨットで夫婦ふたり旅の途中で嵐に遭い、清子(木村)と隆(鶴見辰吾)は無人島に漂着する。意外にもサバイバル能力を発揮する清子に対し、夫は何の役にも立たず、日に日に衰弱していく。そこにある日、16人の若いフリーターの男たちが流れ着き、さらに密航に失敗した6人の中国人も加わり、彼らは島を<東京島>と名づけ、男23人、女1人という奇妙な共同生活が始まる。やがて隆が謎の死を遂げ、ただひとりの女性として女王のように君臨し始める清子。しかし、楽園のような暮らしも長くは続かず、少しずつ島のバランスが崩れ始める。 監督:篠崎誠 原作:桐野夏生 『東京島』(新潮社刊) 出演:木村多江 窪塚洋介 福士誠治 柄本佑 木村了 染谷将太 鶴見辰吾ほか 配給:GAGA 8月28日(土)より全国ロードショー 公式サイト|予告編動画 |
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2010/08/27