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「千の風になって」ミリオンへ向かって

「千の風になって」(秋川雅史)のヒットを生み出したタクミノートの取り組み

 昨年からロングヒット中の、秋川雅史「千の風になって」。5/28付ランキングで累積売上枚数は89.4万枚。ミリオンを射程内にとらえつつ、高いセールスを保って売れ続けている。この曲の主な購入者層は、普段あまりCDを買わないとされる50〜60代。この異例のヒットを生み出したのが、大人向けの音楽を届けるため、テイチクエンタテインメントに06年4月に立ち上げられたばかりの新レーベル「タクミノート」だ。秋川がヒットした過程には、大人に音楽を届けるためのヒントがあるはず。レーベルマネージャーの大江敏雄氏に聞いた。

プロモーション先を絞り、時間をかけることが必要

 

 「千の風〜」は、05年9月に発売された秋川のアルバム『威風堂々』の収録曲。“クラシカル・クロスオーバー”と銘打ち、日本の名曲を秋川がカバーした中の一曲で、もともとは海外で生まれた作者不詳の詩に新井満が日本語詞とメロディを付けて歌っていたものだった。コンサートでこの曲を歌うと、多くの観客が涙するのを目の当たりにした秋川やスタッフは、この曲の持つ力を確信。そこで、より多くの人に伝えるため、06年5月にクラシック歌手としては異例のシングルカットを行った。

 「プロモーション戦略的には、50〜60代の女性をターゲットとしました。もともと秋川についていたファンがその層でしたし、この歌に共感できるのは、ある程度年齢を重ねて、身近な人を亡くした経験のある世代ですから。その層が普段どこへ行き、どんな媒体を見ているのかがわかれば、そこに向けてのプロモーション方法を見つけられます」

 秋川の場合、各地の民放ラジオ局の番組、NHK、そして新聞。主にこの3つに絞って重点的にプロモーションが行われた。
 「ここに出たら50〜60代の人たちが確実に見てくれるはずだ、という所に絞ったんです。ラジオも、ただ曲を流してもらうのではなく、影響力をもったDJの番組で、必ずひとことコメントを言ってもらうように働きかけました」

 当初はクラシックコーナーに置かれることが多かったが、営業の各担当者はJ-POP売場に置いてもらうよう、根気強くショップ担当者に働きかけた。また、秋川本人稼動によるキャンペーン活動も全国各地で実施。特に多く実施したのは、デパートでのインストアイベントだった。その理由とは。

 「地域のショッピングセンター等では、人は集まるけれどCDは買ってくれない。でもデパートだと売れる。客層が違うんですね。この曲の特性をふまえ、効率を考えた結果です」

 発売から半年間、100位にさえ入らなかったが、セールスが急激に伸び始めたのは、『NHK歌謡チャリティコンサート』に出演した直後の06年11月末だった。さらに『NHK紅白歌合戦』出場を経て、年明けにはついにランキング1位を獲得。それから4ヶ月以上たった現在も、週間売上1.2万枚という高い数字を保っている。驚くべきは、時間の経過とともに購入者の年齢層が若い世代へと広がりつつも、いまだ購入者の大半を占めているのが50〜60代のユーザーだということだ。

 「これだけプロモーション展開して、紅白をはじめとするテレビにも露出して、90万枚近く売れていても、世の中には知らない人がまだたくさんいる。それをつくづく感じます。テイチクに電話してきて“CDが欲しいんだけど、どうやって買うんですか?”と尋ねる方もいらっしゃるくらいです」

 そんな、これまでCDを一度も買ったことのないような人までもが「千の風」を買い求めているという事実。そうしたユーザーの特性もあって、この曲に関してはいまだ音楽配信も着うた配信も行っていない。大人に伝えるためには時間をかけて粘らなければいけないことを、大江氏は実感しているという。

 タクミノートには秋川以外にも、普天間かおり、彩風、渚ようこ、城之内ミサ、永山尚太、関口由紀らが所属。いずれも大人に向けた音楽を作るアーティストばかりだ。どのアーティストにも、代表曲と呼べるヒット曲を出すことが当面の目標だという。大人に音楽を届けていくための秘訣とは…。

 「当たり前ですが、まずは良い詞と良い楽曲。それからなるべく恋愛の歌はやらず、普遍的なテーマで作ろうとアーティストには言っています。はるかに人生経験を積んだ大人の人たちに向かって、恋愛について歌ったところで説得力がないですから。また“物語のあるものを作ってほしい”とも言っています。その歌からメッセージやドラマ性が感じられるかどうか。そこをしっかりやらないと、大人の共感を得るのは難しい。それはうちのアーティスト全体に共通するテーマです」
 伸び悩むCD市場を開拓するためにも、タクミノートの今後に期待したい。



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