| 日本のマーケットをターゲット バリー・マニロウと岩崎宏美が新作で共演 日本でのエルダー・マーケットは果たして、本当に成熟しているのだろうか。紙ジャケなどの懐古ものは注目されてはいるが、新譜は、きちんとリスナーの耳に届いているのだろうか。アメリカでのバリー・マニロウのヒットを検証しつつ、そのバリーと岩崎宏美の共演がもたらす、マーケット活性化の可能性を探る。 すでにスポーツ紙などで報じられているので、ご存知の方も多いだろうが、8月上旬、歌手の岩崎宏美がラスベガス・ヒルトン・ホテルで、バリー・マニロウのステージに客演した。これはバリーの最新アルバム『ザ・グレイテスト・ソングス・オブ・ザ・フィフティーズ』に、2人のデュエット曲が収 | |||
| 録されていることから実現したもので、ステージでバリーは「今夜は美しい日本のシンガーをお招きしております」と岩崎を紹介。アルバムに収録された「シンシアリー/今夜教えてね」を2人で歌った。 同ステージはバリーが昨年から長期公演を行っている場所で、お客さんの中には日本からのファンの姿も見られ、2人のデュエットには熱い歓声が飛んだとか。観客には思わぬプレゼントとなっただろう。 ところでその『ザ・グレイテスト・ソングス〜』は、アメリカでは1月末にリリースになり、初登場1位を成し遂げ、未だ売れ続けている。アルバムを手掛けたのは、現ソニーBMGの北米最高経営責任者のクライヴ・デイヴィスで、クライヴが74年に起こしたアリスタ・レーベルこそが、バリーを発掘し、スターに育てたレコード会社だ。 BMG JAPANの落合隆氏は、「むろんロッド・スチュワートのコンセプトを手本にしてバリーのアルバムは作られたのでしょうが、このアルバムは楽曲の存在感、すばらしさで売れたと言えます。ロッドが歌ったのは本当のスタンダード曲。でもバリーが歌ったのは、50年代にジュークボックスから流れていた曲ばかりで、アメリカ人の生活、心に溶け込んでいる、身近な曲ばかり。そういう曲の魅力と、バリーの圧倒的な歌唱力がうまくマッチしてヒットにつながったのでしょう」と分析する。 確かにアルバムに並ぶ楽曲は(日本盤ボーナストラックを除けば)すべて50年代の楽曲。不勉強な私には初めて出会う曲も多いが、50年代に音楽を聞いていた世代に聞くと、確かに懐かしい曲が多いらしい。おそらくロッドやサンタナで確立された「エルダー・マーケット」は、選ばれた楽曲そのもの、またロッドやサンタナという「ロック・ミュージシャン」という存在ゆえ、ジュニア・エルダー層とも言える、40代あたりが中心であったのでは? と推測される。しかし今度は50年代の楽曲で、美しい声でポップスを歌うバリー・マニロウというシンガーを登場させ、さらにその上を行くシニア・エルダー層をターゲットにした作品で、まさにそのツボにハマったゆえの成功だといえる。 しかし実はそれだけに終わらなかった。今やアメリカでは大統領のジョークにも登場する、国民的人気番組『アメリカン・アイドル』に、バリーは出演した。ここでは「出演者が50年代の名曲を歌い、それをバリーが歌唱指導するというコンセプトで進められ、バリーも番組で歌いました。それによってまたチャートの4位まで再浮上したんです」(落合氏)ということで、番組をきっかけにして購買層が50歳以上のシニア・エルダー層以外にも広がったわけだ。元々はシニア層がメイン・ターゲットであったのだろうが、「結局は曲の強さ、曲の良さはいつの時代も変わらない」(落合氏)のだろう、エルダー層にアピールするものは、他の層にも十分アピールすることを証明し、息の長いヒットとなっている。 さてそうしたヒットの前、アルバム・リリースに先がけ、ニューヨークでバリーに対面した落合氏。そこでバリー本人から「日本のファンに特別なプレゼントをしたい」とお願いされたとか。特別な、と言われても何だろう? と落合氏も当初悩んだそうだが、彼が85年に西城秀樹と共演したことを覚えていて、それがヒントとなり、誰か日本の女性シンガーとのデュエットはどうだろう? と提案。これをクライヴが快諾して、企画がスタートした。これまでの背景にはC・デイヴィスの日本での新規エルダー・マーケット開拓の狙いがある。 とは言ってもバリーの歌唱力に見合う実力のある人を探すのは難しく、様々な人に相談をもちかけたとか。そんな中で「岩崎宏美さんはどう?」と言われてピ〜ンときたと落合氏は言う。彼女の歌唱力、キャリア、コアなファン層の年代、さらに彼女が最近『ディア・フレンズ』というポップスの名曲を独自の解釈で染め直すアルバムを作っているなどが決め手となり、「この2人の組み合わせなら、聴いてもらえる」と確信して、落合氏から岩崎宏美サイドへのオファーがなされ、企画がスタート。そしてCDが出来上がり、さらにそれがステージでの共演にまで発展したわけだ。 (取材・文/和田靜香) | |||
2006/08/30