デビュー10周年を迎えた林部智史が4月15日、全曲が加藤登紀子作詞・作曲・プロデュースによるニューアルバム『Koibumi』をリリースした。2人の最初のコラボ作となった「忘却のタンゴ」をはじめ、書き下ろしの新曲5曲、加藤登紀子の名曲カバー2曲の全8曲を収録。さまざまな形の“愛”を綴り、アニバーサリーイヤーにふさわしい愛にあふれたメッセージが詰まった作品となった。本作を通じてさらに“縁”を深めた2人にアルバム制作の様子や互いの音楽観について、加藤登紀子の行きつけの酒場KOiBUMi(東京・渋谷)で語ってもらった。
■自分では書かない言葉を使っていただけることも楽曲を依頼する大きな楽しみ(林部)
【加藤】アルバム制作のお話をいただいたときはすごくうれしかったんですよ。5年前、林部くんが小椋佳さんの全曲書き下ろしによるアルバム『まあだだよ』をリリースされたとき、とても興味深く聴かせていただいていましたから。
【林部】登紀子さんとは僕が一昨年リリースしたカバーアルバム『カタリベ〜愛のエクラン〜』で「難破船」と「愛のくらし」をカバーさせていただいたことをきっかけに、昨年オリジナルアルバム『縁(えにし)』に収録するための新曲を書いていただけないかとお願いしたのが最初でしたよね。依頼を受けてくださったことはもちろん、わずか3日で、しかも2曲も書いてくださったことに本当に驚かされたんですけど、そのご縁を非常にありがたく感じながら、10周年を迎えるにあたり、可能だったらもう少し書いていただいて、登紀子さんプロデュースのアルバムが作れたらと考えたんです。
【加藤】『縁』に収録された「忘却のタンゴ」は九州に行く飛行機の中で作ったんです。私はタンゴが大好きで、アストル・ピアソラの楽曲に訳詞をつけて歌ったりもしているけれど、実はこれまでオリジナルでタンゴの楽曲を作ったことはなかったんです。でも、今回、依頼を受けたとき、林部くんは柔らかくてゆったりしているバラードが多いので、それとは反対の、ちょっとグッとくるようなドラマティックで、気持ち的には切迫しているようなリズムの楽曲がいいなと思って。林部くんの声を思い描いていたら、自然とメロディーが浮かんできたんです。
【林部】タンゴ調だったことも驚きでしたけど、男心の歌だったことにも驚きました。カバーさせていただいた「難破船」もそうですが、僕は女性心を歌うことが多かったですから。しかも“目の前から消えてくれ”とか、僕が今まで歌ったことのない歌詞が綴られていて。
【加藤】狂っちゃうくらい恋しいんだけど、言い切っちゃうみたいな男ってカッコイイなって思ったんです。私は林部くんとは反対に、男性の気持ちを歌った歌が好きなので、男性ボーカリストが歌う男心の歌を作ることにすごく面白さを感じるんですけど、男性って女性に比べて用心深いし、歌詞の世界観では、どっちつかずの、曖昧にしておくみたいな表現が多いでしょ。だから、林部くんには言い切れる男になってくれっていう思いがあったんです。
【林部】でも、僕の声を入れたデモを聞いた後、登紀子さんは僕の声に寄せるべく、「もうちょっとマイルドな言葉のほうがいいかしら」って違う歌詞を提案してくださったんですよね。けれど、僕はむしろ挑戦させてほしいとお願いして、元の歌詞のままいかせてもらった。僕が歌詞を書かない人だったら、自分に寄せてくれたほうがいいと思うかもしれませんが、自分では書かない言葉を使っていただけることも楽曲を依頼する大きな楽しみですから。
■曲は映画を作るようなもの。林部くんを主役に何を紡ぐかを考えるのは面白かった(加藤)
【林部】今回のアルバムの新曲も、どれもかなり歌詞の修正のやり取りを重ねましたよね。僕の中で過去イチ、変更が多かった作品になりました(笑)。そのやり取りの中でとくに印象に残っているのは、「相手との心の距離感」でした。もっと近いほうがいいのではないかとか、「近い遠い」というワードが登紀子さんとの会話の中で多かったことがとても記憶に残っています。
【加藤】林部くんの声を聞いて、歌詞を変えて、もう一度歌ってもらって、結局また元に戻したなんてこともありましたよね(笑)。でも、それができたことも本当に楽しかった。私は作った作品に対して、「この歌詞、嫌なんですけど」って言ってもらったほうがいいと思っているんです。だって、一緒に作るというのが原則なんですから。頭で歌い手の声を思い描きながら作っても、実際歌ってもらったら変えたほうがいいと思うことはいっぱいありますしね。だから変更は当たり前なんだけど、スタッフは変更をすごく嫌がるのよね(苦笑)。でも、朝、目覚めたときとか必ずああしたほうがいいかなとか1滴出てくるんですよ。だから「最後の最後、レコーディングに至るまで、最後の1滴まで申し訳ないけど悩ませて」って、私はいつも言っているの。
【林部】わかります。僕自身、10年間やってきて、「あそこをこう変えれば良かったな」って思うことがやっぱりあるので、登紀子さんのおっしゃることは大事だなって思います。
【加藤】皆さん、実は笑っちゃうくらい小さいことで悩んでいるのよね。けど、最後まで悩んでいいと思う。あと、今回、私が何より嬉しかったのは、新曲を書いてほしいと言われたことなんです。というのも、去年60周年を迎えて、2組のアルバムをリリースしたのだけど、過去作がいっぱいあるものだから、最初は「ベスト盤で」って言われたの。私としては、ライブに毎年来てくださるお客様もいるし、毎回新しいステージを作るために新曲を生みたいと思っているのだけれど、スタッフたちからは「新しい楽曲が欲しい」というリクエストを全然もらえない! で、遠慮して2年くらい新曲を出していなかったんだけど、60周年のアルバムでは叱られることを承知で新曲を数曲書いたっていう出来事があったので。しかも今回は、私とは音域も声も雰囲気も違う林部くんに書くということで、久しぶりに新鮮でとても楽しかったです。
【林部】今回、登紀子さんが書き下ろしてくださった楽曲は、どれも伝えたいことがすごくストレートで、しかも僕が等身大で入り込める世界観だと感じました。初見で聞いたときにストーリーがわかりやすいって歌い手としてあるべき姿だと思っているんですけど、ただ、その分、伝え方については本当に歌力が試される作品たちだなって思いました。たとえば、最初に「愛に愛されて」と「どうして伝えよう」をいただいて、割に明るめな楽曲だったので、今回のジャケ写のイメージはこの2曲に近い雰囲気にしたんですけど、この2曲に関しては、登紀子さんから「もっと幸せに歌って」って言われましたよね。僕なりに精一杯幸せになったつもりで歌っていたんですけど(笑)。
【加藤】この2曲は、微妙に哀愁漂う林部くんがちょっと幸せになって、というイメージで作ったんです。声と風土って関係があるんですよね。私は森繁久彌さんに「君に記憶はなくても、君の声は満州の冷たい風を知っている声だ」って言われたことがあるんですけど、林部くんも山形出身だから、寒い所で育った哀愁がある。曲って映画を作るようなもので、誰が歌うかってすごく大事で、林部くんを主役に約3分間で何を紡ぐか。そう考えていって、アルバムの中には幸せに満ちた曲も入れたいと思ったんです。
■生きている限り、一生歌い続けてほしい(加藤)
【林部】今回、登紀子さんが1985年にリリースされた「駅」と1988年にリリースされた「My Song My Love」もカバ―曲として収録させていただきました。新曲に関しては登紀子さんのイメージを活かして作り上げましたが、カバーに関しては「お任せします」と言ってくださったので、僕からいろいろ提案させてもらいました。
【加藤】カバー曲も入れるという話になって、だったら、私の中であまりポピュラーになっていない曲で、いつかちょっと光を当ててみたいなってずっと思っていた曲がいいと思って提案させてもらった中から選んでくださって。私の好きな楽曲を、素晴らしくしてくださって本当に嬉しかったです。とくに「My Song My Love」は、ゴスペルが入った意外な展開の、私とは対極な雰囲気になっていてビックリしました。
【林部】僕自身、曲を作っているので、登紀子さんの作品の歌詞の意味とか世界観とか、今回は本当にたくさんの刺激をいただきました。きっと今後、曲を作る際、登紀子さんのエッセンスをもらっているなと感じる瞬間が出てくる気がするので、今はそれも非常に楽しみになっています。
【加藤】私は林部くんのオリジナルの詞が好きですよ。「あいたい」もそうだけれど、すごくシンプルな言葉の強みがあって、心に来るし、林部くんの声にもとても合っている。ただ、過去の作品って、それよりすごいものを作らなくてはって思うから、自分にとってライバルになるのよね。そうなると、高度な展開にしてみたりとか、どんどん音楽が難しくなっていく。今、世の中的に少しずつそういう傾向になっているし、それは仕方がないことだと思うけど、シンプルなものってやっぱり本当に魅力的。なので、自分の中で込み入ったものに向き合わないという意識も必要ととらえて、林部くんにはこれからもシンプルでいい歌を作ってほしいなって思いますね。今、10周年でしょ、私が迎えた60周年まであと50年もありますからね。
【林部】50年後は僕はもう米寿です(笑)。
【加藤】いやいや、シャルル・アズナヴールって94歳まで歌っていて、その生のステージが完璧で、私は「本当に歌ってるの?」って聞いてしまったくらいだったのよ。イヴ・モンタンもジュリエット・グレコもそうだけど、シャンソンの人ってけっこう死ぬまで歌うんです。それはなぜかというと、自分のために歌っているからだと思うの。音楽を商品ととらえて完璧な形で送り届けることを求められると、ピークで終わらなければいけなくなるからポップスの人は割と短命で終わる。でも、シャンソンの人は自分が商品として完璧かという基準値は気にしていなくて、生きているから歌っているし、死ぬまで歌うからよろしくっていう感覚でいるのよね。ポップスの世界ではいいところで終わるのがカッコイイみたいに言われちゃうし、それはそれで大事な尺度だと思うけど、私は林部くんにも一生歌い続けてほしいなって思います。
取材・文:河上いつ子
<作品情報>
林部智史『Koibumi』
リリース日:2026年4月15日
品番:AVCD-63877/価格:3200円(税込)
収録曲
01. 望郷のワルツ(新曲)
02. 恋文(新曲)
03. 愛に愛されて(新曲)
04. 忘却のタンゴ(AL『縁(えにし)』収録)
05. My Song My Love(オリジナルリリース 1988年)
06. 駅(オリジナルリリース 1985年)
07. 光と影(新曲)
08. どうして伝えよう(新曲)
※全8曲収録
※全曲作詞・作曲:加藤登紀子
■自分では書かない言葉を使っていただけることも楽曲を依頼する大きな楽しみ(林部)
【加藤】アルバム制作のお話をいただいたときはすごくうれしかったんですよ。5年前、林部くんが小椋佳さんの全曲書き下ろしによるアルバム『まあだだよ』をリリースされたとき、とても興味深く聴かせていただいていましたから。
【林部】登紀子さんとは僕が一昨年リリースしたカバーアルバム『カタリベ〜愛のエクラン〜』で「難破船」と「愛のくらし」をカバーさせていただいたことをきっかけに、昨年オリジナルアルバム『縁(えにし)』に収録するための新曲を書いていただけないかとお願いしたのが最初でしたよね。依頼を受けてくださったことはもちろん、わずか3日で、しかも2曲も書いてくださったことに本当に驚かされたんですけど、そのご縁を非常にありがたく感じながら、10周年を迎えるにあたり、可能だったらもう少し書いていただいて、登紀子さんプロデュースのアルバムが作れたらと考えたんです。
【加藤】『縁』に収録された「忘却のタンゴ」は九州に行く飛行機の中で作ったんです。私はタンゴが大好きで、アストル・ピアソラの楽曲に訳詞をつけて歌ったりもしているけれど、実はこれまでオリジナルでタンゴの楽曲を作ったことはなかったんです。でも、今回、依頼を受けたとき、林部くんは柔らかくてゆったりしているバラードが多いので、それとは反対の、ちょっとグッとくるようなドラマティックで、気持ち的には切迫しているようなリズムの楽曲がいいなと思って。林部くんの声を思い描いていたら、自然とメロディーが浮かんできたんです。
【林部】タンゴ調だったことも驚きでしたけど、男心の歌だったことにも驚きました。カバーさせていただいた「難破船」もそうですが、僕は女性心を歌うことが多かったですから。しかも“目の前から消えてくれ”とか、僕が今まで歌ったことのない歌詞が綴られていて。
【加藤】狂っちゃうくらい恋しいんだけど、言い切っちゃうみたいな男ってカッコイイなって思ったんです。私は林部くんとは反対に、男性の気持ちを歌った歌が好きなので、男性ボーカリストが歌う男心の歌を作ることにすごく面白さを感じるんですけど、男性って女性に比べて用心深いし、歌詞の世界観では、どっちつかずの、曖昧にしておくみたいな表現が多いでしょ。だから、林部くんには言い切れる男になってくれっていう思いがあったんです。
【林部】でも、僕の声を入れたデモを聞いた後、登紀子さんは僕の声に寄せるべく、「もうちょっとマイルドな言葉のほうがいいかしら」って違う歌詞を提案してくださったんですよね。けれど、僕はむしろ挑戦させてほしいとお願いして、元の歌詞のままいかせてもらった。僕が歌詞を書かない人だったら、自分に寄せてくれたほうがいいと思うかもしれませんが、自分では書かない言葉を使っていただけることも楽曲を依頼する大きな楽しみですから。
■曲は映画を作るようなもの。林部くんを主役に何を紡ぐかを考えるのは面白かった(加藤)
【加藤】林部くんの声を聞いて、歌詞を変えて、もう一度歌ってもらって、結局また元に戻したなんてこともありましたよね(笑)。でも、それができたことも本当に楽しかった。私は作った作品に対して、「この歌詞、嫌なんですけど」って言ってもらったほうがいいと思っているんです。だって、一緒に作るというのが原則なんですから。頭で歌い手の声を思い描きながら作っても、実際歌ってもらったら変えたほうがいいと思うことはいっぱいありますしね。だから変更は当たり前なんだけど、スタッフは変更をすごく嫌がるのよね(苦笑)。でも、朝、目覚めたときとか必ずああしたほうがいいかなとか1滴出てくるんですよ。だから「最後の最後、レコーディングに至るまで、最後の1滴まで申し訳ないけど悩ませて」って、私はいつも言っているの。
【林部】わかります。僕自身、10年間やってきて、「あそこをこう変えれば良かったな」って思うことがやっぱりあるので、登紀子さんのおっしゃることは大事だなって思います。
【加藤】皆さん、実は笑っちゃうくらい小さいことで悩んでいるのよね。けど、最後まで悩んでいいと思う。あと、今回、私が何より嬉しかったのは、新曲を書いてほしいと言われたことなんです。というのも、去年60周年を迎えて、2組のアルバムをリリースしたのだけど、過去作がいっぱいあるものだから、最初は「ベスト盤で」って言われたの。私としては、ライブに毎年来てくださるお客様もいるし、毎回新しいステージを作るために新曲を生みたいと思っているのだけれど、スタッフたちからは「新しい楽曲が欲しい」というリクエストを全然もらえない! で、遠慮して2年くらい新曲を出していなかったんだけど、60周年のアルバムでは叱られることを承知で新曲を数曲書いたっていう出来事があったので。しかも今回は、私とは音域も声も雰囲気も違う林部くんに書くということで、久しぶりに新鮮でとても楽しかったです。
【林部】今回、登紀子さんが書き下ろしてくださった楽曲は、どれも伝えたいことがすごくストレートで、しかも僕が等身大で入り込める世界観だと感じました。初見で聞いたときにストーリーがわかりやすいって歌い手としてあるべき姿だと思っているんですけど、ただ、その分、伝え方については本当に歌力が試される作品たちだなって思いました。たとえば、最初に「愛に愛されて」と「どうして伝えよう」をいただいて、割に明るめな楽曲だったので、今回のジャケ写のイメージはこの2曲に近い雰囲気にしたんですけど、この2曲に関しては、登紀子さんから「もっと幸せに歌って」って言われましたよね。僕なりに精一杯幸せになったつもりで歌っていたんですけど(笑)。
【加藤】この2曲は、微妙に哀愁漂う林部くんがちょっと幸せになって、というイメージで作ったんです。声と風土って関係があるんですよね。私は森繁久彌さんに「君に記憶はなくても、君の声は満州の冷たい風を知っている声だ」って言われたことがあるんですけど、林部くんも山形出身だから、寒い所で育った哀愁がある。曲って映画を作るようなもので、誰が歌うかってすごく大事で、林部くんを主役に約3分間で何を紡ぐか。そう考えていって、アルバムの中には幸せに満ちた曲も入れたいと思ったんです。
■生きている限り、一生歌い続けてほしい(加藤)
【林部】今回、登紀子さんが1985年にリリースされた「駅」と1988年にリリースされた「My Song My Love」もカバ―曲として収録させていただきました。新曲に関しては登紀子さんのイメージを活かして作り上げましたが、カバーに関しては「お任せします」と言ってくださったので、僕からいろいろ提案させてもらいました。
【加藤】カバー曲も入れるという話になって、だったら、私の中であまりポピュラーになっていない曲で、いつかちょっと光を当ててみたいなってずっと思っていた曲がいいと思って提案させてもらった中から選んでくださって。私の好きな楽曲を、素晴らしくしてくださって本当に嬉しかったです。とくに「My Song My Love」は、ゴスペルが入った意外な展開の、私とは対極な雰囲気になっていてビックリしました。
【林部】僕自身、曲を作っているので、登紀子さんの作品の歌詞の意味とか世界観とか、今回は本当にたくさんの刺激をいただきました。きっと今後、曲を作る際、登紀子さんのエッセンスをもらっているなと感じる瞬間が出てくる気がするので、今はそれも非常に楽しみになっています。
【加藤】私は林部くんのオリジナルの詞が好きですよ。「あいたい」もそうだけれど、すごくシンプルな言葉の強みがあって、心に来るし、林部くんの声にもとても合っている。ただ、過去の作品って、それよりすごいものを作らなくてはって思うから、自分にとってライバルになるのよね。そうなると、高度な展開にしてみたりとか、どんどん音楽が難しくなっていく。今、世の中的に少しずつそういう傾向になっているし、それは仕方がないことだと思うけど、シンプルなものってやっぱり本当に魅力的。なので、自分の中で込み入ったものに向き合わないという意識も必要ととらえて、林部くんにはこれからもシンプルでいい歌を作ってほしいなって思いますね。今、10周年でしょ、私が迎えた60周年まであと50年もありますからね。
【林部】50年後は僕はもう米寿です(笑)。
【加藤】いやいや、シャルル・アズナヴールって94歳まで歌っていて、その生のステージが完璧で、私は「本当に歌ってるの?」って聞いてしまったくらいだったのよ。イヴ・モンタンもジュリエット・グレコもそうだけど、シャンソンの人ってけっこう死ぬまで歌うんです。それはなぜかというと、自分のために歌っているからだと思うの。音楽を商品ととらえて完璧な形で送り届けることを求められると、ピークで終わらなければいけなくなるからポップスの人は割と短命で終わる。でも、シャンソンの人は自分が商品として完璧かという基準値は気にしていなくて、生きているから歌っているし、死ぬまで歌うからよろしくっていう感覚でいるのよね。ポップスの世界ではいいところで終わるのがカッコイイみたいに言われちゃうし、それはそれで大事な尺度だと思うけど、私は林部くんにも一生歌い続けてほしいなって思います。
取材・文:河上いつ子
<作品情報>
林部智史『Koibumi』
リリース日:2026年4月15日
品番:AVCD-63877/価格:3200円(税込)
収録曲
01. 望郷のワルツ(新曲)
02. 恋文(新曲)
03. 愛に愛されて(新曲)
04. 忘却のタンゴ(AL『縁(えにし)』収録)
05. My Song My Love(オリジナルリリース 1988年)
06. 駅(オリジナルリリース 1985年)
07. 光と影(新曲)
08. どうして伝えよう(新曲)
※全8曲収録
※全曲作詞・作曲:加藤登紀子
2026/04/15



