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森川美穂、デビュー40周年アルバム『Legendary』 豪華作家陣による珠玉の書き下ろし曲が示した40年の足跡【インタビュー】

 シンガー森川美穂はどんなにキャリアを重ねても守りには入らない。バンドで歌ったかと思えばピアノ一本で迫り、従来のオリジナル曲のみならず大胆なカバーにも挑むし、デビューから圧倒的だった歌唱力は今も一層の表現力を拡げている。しかも近年は精力的にライブもこなしつつ毎年必ず新作を届けてくれる存在だ。デビュー40周年を迎え、2025 年はVAP在籍時代のオリジナルアルバムをパッケージした『森川美穂 1985-1989 5 Original Albums COMPLETE BOX+』でも驚かせてくれたが、彼女の真骨頂といえばやはりオリジナルアルバム。アニバーサリーを飾る『Legendary』はここ数年、コラボレーションを続けている作詞家・松井五郎プロデュース。ASKA、亀井登志夫、来生たかお後藤次利、コモリタミノル、塩入俊哉、中崎英也、林哲司、馬飼野康二、マシコタツロウ、松本俊明、山川恵津子という、もはや彼女でしかあり得ない豪華作曲家陣が名を連ねる。大阪芸術大学演奏学科で教鞭もとる彼女の教え子がコーラスで参加したり、若手ミュージシャンとのクロスオーバーも聴きどころで、リッチなサウンドと名曲ズラリの傑作を完成させた森川美穂に訊いた。

デビュー40周年アルバム『Legendary』をリリースした森川美穂

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■38年ぶりに実現したASKAの楽曲提供… その名も「復讐」

――40周年記念オリジナルアルバム『Legendary』はものすごく気合いの入った内容で感銘を受けました!

【森川】すごいでしょ? (楽曲提供陣の)名前だけ見てもびっくりしますよね。本当に、もう松井五郎さんの力と言いますか…。(「生活」を作曲した)来生たかおさんはご自分の活動でもお忙しいのに、五郎さんが直に電話したんですよ。“松井さんから直接電話もらったら断るわけはいかないよね”みたいなことがあったり(笑)。プロデューサーとして松井五郎さんがいなければできなかったアルバムです。

――美穂さんと五郎さんのコラボレーションも長くなってきて、五郎さん自身の熱もすごく入っているし、美穂さんのアニバーサリーということで一層力の入りようが…。

【森川】そうですよね。本当ありがたいです

デビュー40周年を迎えた森川美穂

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――サウンド面も妥協していないし実にリッチな音のアルバムを聴いた気がしました。多くの曲をカシオペア電撃加入のキーボーディスト安部潤さんが手がけていて…。

【森川】そうですね。他にもさまざまなお仕事でお忙しくされていますけども、安部さんも五郎さんの紹介です。そして十川ともじさん、野崎洋一(※崎=たつさき)さんにもアレンジしていただきました。で、ASKAさんに38年ぶりに書いていただいたのも目玉ですね(※1987年発表2ndアルバム『おんなになあれ』以来)。

――「復讐」は楽曲と美穂さんが対峙している緊張感が凄まじいです。

【森川】そうかな? そうかも。あまりああいう楽曲を歌ったことがなかったんで。もう3年ぐらい前になるのかな? 神戸で五郎さんとASKAさんのコンサートを見せていただいて、翌日京都でご飯を食べようとなったときにね、曲を書いてほしいなってちらっとは言ったんですけど。ただ、アーティスト活動をされている方は、やっぱり自分の作品がまず先じゃないですか。五郎さんに「ASKAさんに曲書いていただきたいですよね」って言ったら、「ASKAに連絡してみる」と。作詞作曲がASKAさんで「復讐」っていうインパクトのあるタイトルですけど。

――「復讐」は本当に美穂さんのために書き下ろされたという!

【森川】ずっと待っていたら、ある日朝起きたらASKAさんから「できたよ」ってメールが来てて。その時点ではまだ歌詞がついてなくて、一回五郎さんも歌詞をつけてくださったんですけど、「やっぱり自分でも一回トライしたい」って最終的にASKAさんご自身で歌詞も書いてくださって、仮歌を歌ったトラックを送ってくださいました。その仮歌がめっちゃかっこいいんですよ。「好きに歌っていいよ」と言ってくださったものの、 曲がすごくく難しいので最初は「これ、私歌えないと思うんだけどな」と思って。アレンジもデモテープの段階で藤山翔太さんが考えてくださって、このアレンジを元に、さらに澤近泰輔さんが森川美穂用のキー、テンポで改めてアレンジをやってくださった感じです。

――あのテンション高い演奏にどう美穂さんが歌ったのかが聴きどころですね。

【森川】あのアレンジに歌わせてもらったっていう感じです、やっぱアレンジって大事ですね。今さらながら。

――シンガーとしてのさらなる挑戦をされている様がいちばんに伝わってきました。

【森川】挑戦ですよね、私にとっても。とりあえず皆さん、「復讐」ってタイトルでびっくりしたところがあると思うんですけど、職業作家と言われる方たちが書けないような作品ですよね。アーティスト色があって、アーティストだからこそ書けるっていう。

――ASKAさんご自身でもセルフカヴァーされるのでは!?という力の入れようです。

【森川】ぜひ歌ってほしいですね。最初、歌詞が送られてきたときは強烈でしたし、「この歌詞で何を歌えばいいんだろう!?」ってわからなかったんです。“ふたりはきっとふたりは 終わりたかった”の部分が結構インパクトがあって、多分柱になっているだろうそこを中心に、自分で温度感とか気持ちの入れ方とか、あとエネルギーの出し方というか…。でもね、こういうのってもう考えてできるものじゃないから。今思うんですけど、きっとライブの方が絶対もっとかっこよく歌えると思うんですよね。今回「復讐」だけが五郎さんの詞じゃないんです。

■原点にも還りつつ、未来を見ながら作れた一枚

デビュー40周年を迎えた森川美穂

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――レコーディングはいかがでしたか?

【森川】基本的にボーカル録りのときには全ての楽器トラックが完成したデータを事前にいただいて、レコーディングスタジオの歌入れ用ブースで歌いました。澤近さんのときはギターダビングでちょっとスタジオに顔を出した後に歌入れをしましたね。十川さんは歌入れに来てくれましたし、「彷徨う二人」ではコーラスアレンジもしてくださったのでコーラスにもトライしました。

――色彩感に富んだ楽曲が集まっていて、美穂さんのロックテイストも押し出されたなと。

【森川】別に演技しているつもりはないんですけど、曲によってコロコロ変わっていく自分を結構楽んだところがあって。塩入俊哉さんの「カゴの鳥」も相当変わった曲だと思うんです。そう思うと「彷徨う二人」はやっぱり林哲司さんのメロディだな、「それはただの幻」は馬飼野康二さんならではだなとか。中崎英也さんの楽曲はことあるごとに結構歌わせていただいているんですけど、「Reminiscence」は新たな中崎メロディだったなって思います。作曲家の方それぞれの色合いがよく出ている楽曲に、松井五郎さんという大作詞家が言葉を乗せることによって、一つのまとまりが出たかなっていうのは思いますね。今回、初めて「わたしの証」で後藤次利さんの楽曲を歌わせてもらったんですけど、結構あの辺はチャレンジでした。あんまりやったことない世界観だったので面白かったです。もう何を歌っても私だからって言える作品になったっていうのはあります。

――不思議とブラックミュージックやR&B、ラテンテイストもあって、美穂さんの40年の歩みが凝縮している印象もあります。

【森川】本当にまさしくそうですね。やっぱりラテンは結構好きなんで、どこかでまたちゃんとやりたいです。50代も後半に差しかかってくる世代なんですけど、そういう人に松井五郎さんは「もう一回ゼロからやろう」って。なんか五郎さん、「Treasure hunt」で面白いこと言うなって思った。自分に対してのメッセージでもあるんですけど、今からでも遅くないよって。五郎さんもよく書いてくださったなと思って。「Treasure hunt」を聴いたファンの方は「自分が10代の頃に聴いていたような感覚になりました」みたいな声がすごく多かったですね。

――ディープな歌謡曲テイストやピアノジャズみたいなところにも可能性がありますし、今の美穂さんなら多分何でもできると思うのですが、それでも40周年のタイミングだからこそ『Legendary』ができたんだなって。

【森川】うんうん、人生っていつまで続くかわからないけど、アニバーサリーも一つの通過点でしかないんですよね。ずっと歌っているつもりではいましたけど、でも皆さんにおめでとうと言っていただけるような40周年を迎えるとは、若い頃はもちろん考えてはいなかったですし。ある意味原点に立ち返るとか、戻るというか。「自分が本当にやりたかったことって何だろう!?」とかね、このアルバムって多分そういうものだと思うんですよ。「Treasure hunt」やコモリタミノルさんが書いた「砂に落ちたイヤリング」は、私の10代の頃のテイストだと思うんですけど、ああいう原点を歌いながらも、さまざまな変化球もある楽曲を歌い、「復讐」みたいな新たなる世界を自分で歌うっていう。 だから原点にも還るんだけれども、未来を見ながら作れた一枚だなって。

――“森川美穂、コモリタミノルさんを歌う”なんてライブも開催されましたね。

【森川】コモリタさんも配信で観てくれたんですけど、「こんなことする人いる?」って(笑)。なんていうのかな、コモリタメロディを上手く表現できるのは、多分私の右に出る人はいないと思います。

――「砂に落ちたイヤリング」ではコモリタさんもスキャットで参加されていて。

【森川】コーラスというか、スキャットというか、なんかわからないけど(笑)、コモリタさんに曲をいただくと今までもずっとそうなんですけど、必ず入っているんですよ。

■若いミュージシャンや新境地にも挑んだアニバーサリーアルバム

デビュー40周年を迎えた森川美穂

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――管楽器が中盤を一層盛り立てていますね。

【森川】そう、今回はトランペットで松井秀太郎さん、サックスで中園亜美さん…、若いミュージシャンにも参加していただいてそれが凄く嬉しい。

――レコーディングは順調でしたか?

【森川】レコーディングに入る前の期間がすごく長かったんです。楽曲それぞれの色合いが結構くっきりしていたので、キーをどこに持ってくるかで大分悩んで何回もやり直しました。「今日はちょっと調子がいいからここのキーでいいんだけど、通常だったらどうだろうね?」みたいな感じでプリプロを繰り返して。勢いでだったらいけるんだけど、でもその勢いは今は要らないっていうこともあったので。「どのタイミングでファルセットに持っていくか?」で、どこにキーを合わせるかっていうことも結構いろいろやって、そこには時間がかかりましたね。でもね、ライブのリハーサルをやると声を張りますね。

――楽器が入るとそこは仕方ないのでは?

【森川】当然、歌い方がレコーディングとはもう全然違うので、違った感じには聴こえると思うんですけど。松本俊明さんの「all alone」や馬飼野さんの「それはただの幻」、中崎さんの「Reminiscence」もそうですけど、バーン!って歌う曲ではないのでね。どこまで引きながら歌うかみたいなところは、レコーディングでもすごく大変でした。

――とはいえ、ボーカルのフェーダーは上げ下げが必要ないくらいに攻めている感じはありますね。

【森川】それを目指してはいるんですけど、ついついバーン!って行ってしまったりするんですけどね。

――『Legendary』の中でいちばん難しかった曲ってどの辺になりますか?

【森川】どれも難しいと言えば難しいんです。 ただ比較的ずっと同じテンションで歌う曲が、本来はいちばん難しいと思います。来生さんが書いてくれた「生活」は、映画のワンシーンをちょっと切り取って、そこを歌っているイメージがあったので、あの曲は叫ばず、泣かず、とにかく同じテンションでずっと歌う。実は「生活」が難しかったんです。

――「生活」はBossa ver.で収録ですが、「ビニールの傘」もMisty ver.で収録されています。また雰囲気が違いますね。

【森川】「ビニールの傘」は五郎さんとの出会いの楽曲で、山川恵津子さんに「私、歌謡曲が歌いたい」って言ったら、「じゃあ、ちょっと五郎さんを紹介するわ」って出来上がった曲なんですけど。「ビニールの傘」が本当に私の歌手人生第二章みたいな感じで、年齢的にもしっかり大人になった自分に、新たなる引き出しを用意してくれた楽曲なんです。「ビニールの傘」はいろんな編成でライブでもよくやるんですよ。ピアノ一本でもやるし、バンドでやるときもあるし、パーカッションのみで、あるいはピアノとベースだけでやるときもあるし。今回はずっと長く一緒にやっているメンバーで録りました。ピアノを弾いた野崎洋一さんがアレンジしてくださったんですけど、これまで一緒にいろいろとやってきたからこそ出てきたアイデアだと思うんですね。「ビニールの傘」は私にとってすごく大事な楽曲なので、この先また全然違う形でレコーディングできたらいいなとも思いますけど。今回のアレンジでやったのも新しい試みだったかもしれません。

――「ビニールの傘(Misty ver.)」はアルバムの中でもかなりライブ感がありますね。

【森川】今回唯一、“せーの”で録ったんでね。直せないぞ、みたいな。

――コーラスでもいろんな方が参加されていますね。

【森川】亀井登志夫さんの書いた「nomad」でコーラスしているmionは私の大学の教え子なんですよ。彼女は最近、後藤真希さんに楽曲提供していて、ミックスボイスの個性的な声で凄く才能がある娘なんです。一昨年出したアルバムでも二人ぐらい、教え子にコーラスとして参加してもらいました。

――「復讐」の宇海-UUMI-さんのコーラスも聴き応えがありました。

【森川】当初自分でやろうって言っていたんですけど、みんなに「難しいから無理だと思うよ」と言われて「やっぱり!?」って。いや、私ね、コーラスが鬼のように苦手なんですよ(笑)。自分でコーラスするのにあんまりこだわりがないんですよね。たださっきも言ったように「彷徨う二人」は十川さんがコーラスを作ってくださって、最初はボーカロイドでやったのを送ってくださったんですよ。それを「ちょっと私これコーラスやりたい」と言って。で、トップはボカロなんですけど、その下の二声、三声を自分でコーラスしたんです。

――えっ!? 気づきませんでした…。

【森川】とうとう私はAIと一緒に歌いました(笑)。でも言われないとわからないと思いますね。

――まさに新境地もありつつ、美穂さんの40年分の音楽性の流れも感じる一枚ですね。

【森川】絶対そうだと思うんですよね。世界観が大人にはなりましたけれども、多分ちょっと昔に応援してくださっていた方が聴いてくださっても、きっと満足してもらえる一枚になったなと。客観的に今回のアルバムを見ても、こんな幸せな歌手はいないよなって思いますね。

取材・文:北村和孝

デビュー40周年を迎えた森川美穂

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<作品情報>
森川美穂 デビュー40周年記念アルバム『Legendary』
2025年12月15日リリース
品番:MM-40TH/価格:3300円(税込)

森川美穂 デビュー40周年記念アルバム『Legendary』

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【収録曲】
01 砂に落ちたイヤリング
  作詞:松井五郎 作曲:コモリタミノル 編曲:安部潤
02 復讐
  作詞・作曲:ASKA 編曲:藤山祥太 澤近泰輔
03 生活
  作詞:松井五郎 作曲:来生たかお 編曲:野崎洋一
04 nomad
  作詞:松井五郎 作曲:亀井登志夫 編曲:十川ともじ
05 Reminiscence
  作詞:松井五郎 作曲:中崎英也 編曲:安部潤
06 all alone
  作詞:松井五郎 作曲:松本俊明 編曲:安部潤
07 わたしの証
  作詞:松井五郎 作曲:後藤次利 編曲:安部潤
08 それはただの幻
  作詞:松井五郎 作曲:馬飼野康二 編曲:安部潤
09 Treasure hunt
  作詞:松井五郎 作曲:マシコタツロウ 編曲:安部潤
10 カゴの鳥
  作詞:松井五郎 作曲:塩入俊哉 編曲:安部潤
11 彷徨う二人
  作詞:松井五郎 作曲:林哲司 編曲:十川ともじ
12 ビニールの傘
  作詞:松井五郎 作曲:山川恵津子 編曲:野崎洋一

<ライブ情報>
2026年1月11日(日)
『森川美穂 40周年記念アルバムリリース記念ライブ』
(東京・六本木クラップス)※ Sold Out / 配信チケット発売中

2026年2月6日(金)
『森川美穂 40周年記念アルバムリリース記念ライブ』東京追加公演
(東京・目黒Blues Alley Japan)

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