歌手活動はもちろん、能登半島地震の被災地支援を行ったり、災害時にペットと避難する活動にも取り組んだりするなど、多方面で活躍している伍代夏子。5月22日にリリースしたニューシングルは、数々のヒット曲を生みだした田久保真見とシティポップを代表するメロディメーカーの林哲司による「いのちの砂時計」。昨年末に急逝した八代亜紀に背中を押されて作られた歌だ。
■命の尊さを身に染みて感じた今年 「限られた時間を大切に生きよう」という思いを込めて
「今年は、北陸地方を襲った能登半島地震という悲劇とともに幕を開けました。2月に入ってから被災地を訪れて炊き出しを行いましたが、ついさっきまで元気だった人や、昨日まで働いていた職場を急に失い、どうやって生きていけばいいのかと苦しんでいる被災者の方は、正直なところ、歌を聴くような状況ではないんですよね。そんな方たちとお会いして、なんとお声がけしたらいいのだろうかと感じましたし、私に何ができるのだろうかと考えたんです。悲しみはご自身で乗り越えていただくしかないのだけれど、気持ちを楽にしていただけるようなメッセージを歌で届けられるのではないかと思いました」
そんな彼女の背中を押したのは、昨年末に他界した八代亜紀だった。
「子どものころから亜紀さんのファンで、私がデビューできたのも亜紀さんの担当ディレクターにスカウトされたのがきっかけだったこともあり、亜紀さんにはずっとかわいがっていただいたんです。そんな亜紀さんが昨年末に亡くなられて、悲しみに打ちひしがれました。亜紀さんの歌を追悼で歌うときも、『亜紀さんには二度と会えないのか』と思うと泣いて歌えなかったんです。でも、そのときに亜紀さんが『なっちゃん、ファイト、ファイト! 大丈夫よ、いずれ会えるから、今はそっちで頑張って生きなさい』って、空からおっしゃっている気がしたんですよね。そんな亜紀さんに背中を押されるように、『先に逝った大切な人たちにまた会うために、限られた時間を大切に生きよう』というメッセージを込めた歌をつくろうと考えました」
詞は前作「時の川」に続いてヒットメーカーの田久保真見が綴り、曲はシティポップの名手として知られる林哲司が紡いだ。
「田久保先生は、私の想いを100パーセント受けとめて詞を書いてくださいました。林先生に曲を依頼したのは、私がパーソナリティを務める『ふんわり』(NHKラジオ第1/毎週水曜放送)にゲストにお越しいただいたことがきっかけです。新曲は少し冒険したいなと思ったときに、シティポップの名手である林先生の顔が浮かんだんです。演歌の作曲家でポップス寄りの歌を作ってくださる先生もいらっしゃいますが、普段ポップスを手がけている作曲家の先生に演歌寄りの歌謡曲を作っていただくと、匂いが違うんですよね。今回は田久保先生の詞と見事にマッチしたメロディを林先生がつけてくださって、重厚感がありながらも、『悔いなく生きよう』という前向きなメッセージにふさわしいキラキラした曲になったと感じています」
カップリングの「虹の橋」も田久保真見と林哲司のタッグだが、こちらは制作方法が異なる。
「演歌は詞を先に作って曲を詞に合わせてつける、いわゆる“詞先”の歌が多いですが、林先生が手がけてこられたポップスは曲を先に作って詞を後でつける“曲先”の歌がほとんどです。「いのちの砂時計」は伝統的な演歌の作り方にのっとって曲を書いていただきました。林先生も“詞先”の歌は初めてだとおっしゃっていましたね。逆に、「虹の橋」はせっかく林先生にお願いするのだから “曲先”でお願いしました。歌のテーマとしては2曲とも『命の尊さ』を歌ったものですが、“詞先”と“曲先”で、まったく雰囲気の異なる歌になったと思います」
■さまざまな活動を糧に 大切な人々に歌を届ける
「いのちの砂時計」のレコーディングでは、円熟しきったシャンソン歌手の声色をイメージしたという。
「能登半島地震や亜紀さんの死から命の尊さを実感したからこそ、今作は遺言のつもりで作りました。レコーディングのときはいつも声色の年齢層を設定して歌うのですが、冒頭の語りかけるような歌詞は、まさにこれから空の向こうへ旅立とうとしている円熟しきった80代のシャンソン歌手を意識しつつ、ただ、実際には少し年齢層を下げた声色で、語りかけるように歌っています」
伍代夏子名物の“長時間レコーディング”は、還暦を迎えたときにリリースした「人生にありがとう」以来、時短のままだという。
「昔はそれこそ何十回と歌って、『何回目に歌ったここの部分と何回目のそこの部分とをつなげて……』と、全部スタッフさんに指示してすべての作業が終了するまで見届けないと気が済まなかったんです。日付を超えることもたびたびあってみんな辟易としていましたが、還暦を迎えて私も角が取れたんですよね(笑)。それに、何十回と歌ったところでそんなに変わらないということもわかりました。若いころに比べたらレコーディングに費やす時間は半分以下になったと思います。ある程度歌って、セレクトも目安をつけたら、あとは信頼するスタッフさんにお任せです。いい作品に仕上がったなと満足しています」
フラワーウォールをバックにしたジャケットは、意外なイメージで撮影した。
「フラワーアーティストの和田浩一さんの作ったフラワーウォールを背に撮影したジャケットは、棺の中に入った自分をイメージしました。私が死ぬのは20年先かもしれないけれど、明日かもしれないわけで、それは誰にもわからないですよね。そう言う私に、『死に急いでいるんじゃない?』などと言う友達もいるのですが、毎日やり残すことのないように生きてしまう性分なんです。私がこの世を去るときは、今作のジャケットのようにきれいにヘアメイクをしてもらって、ピンク色のお花に囲まれて、白装束ではなくてピンクの着物で、まさにシャンソンの名曲『バラ色の人生』を表すかのように送ってほしいという希望を伝えています』
やり残すことのないように毎日を全力で生きる彼女は、歌手活動以外に、災害時に人とペットが同じ室内に避難できるよう推進するプロジェクトにも取り組んでいる。
「幼いころは犬や鳥、シマリスに金魚、ひよこなど、さまざまな動物にまみれて暮らしていました。特に犬は、ダックスフントからシベリアンハスキー、チン、雑種と、赤ちゃんのときからずっと一緒に生活してきて、生まれたときから愛犬家です。2年前からはダックスの“りく”を飼っていて、つい先日からは同じくダックスの“そら”という弟犬を迎えました。私にとって2匹の愛犬は生きがいであり癒しの存在。そんな彼らを災害時に置き去りにして自分だけ避難するなんて考えられず、昨年7月から、災害に備えて人とペットが安心して同じ室内へ避難できる社会を目指して、犬の“りく”と私の“夏子”から名づけた『りく・なつ同室避難推進プロジェクト』をスタートさせました。工夫すれば人とペットが共生できる避難所運営も可能だということをしっかりと訴えていきたいと思いますし、今後は保護犬の活動にも尽力していく予定です」
ほかにも、ラジオのパーソナリティや演歌仲間との卓球練習など、エネルギッシュに毎日を送る伍代夏子。さまざまな活動を肥やしにして、ますます歌手としても輝きを放つ彼女のニューシングルは、今を生きる人々の心にも、そして先に逝った人々の心にも、しっかりと届くはずだ。
文・森中要子
<リリース情報>
■伍代夏子「いのちの砂時計」
2024年5月22日発売
品番:MHCL-3086/価格:1.500円(税込)
「いのちの砂時計」
作詞:田久保真見 作曲:林 哲司 編曲:萩田光雄
C/W「虹の橋」
作詞:田久保真見 作曲:林 哲司 編曲:萩田光雄
■伍代夏子 公式サイト:http://www.voicemusic.co.jp/
■命の尊さを身に染みて感じた今年 「限られた時間を大切に生きよう」という思いを込めて
「今年は、北陸地方を襲った能登半島地震という悲劇とともに幕を開けました。2月に入ってから被災地を訪れて炊き出しを行いましたが、ついさっきまで元気だった人や、昨日まで働いていた職場を急に失い、どうやって生きていけばいいのかと苦しんでいる被災者の方は、正直なところ、歌を聴くような状況ではないんですよね。そんな方たちとお会いして、なんとお声がけしたらいいのだろうかと感じましたし、私に何ができるのだろうかと考えたんです。悲しみはご自身で乗り越えていただくしかないのだけれど、気持ちを楽にしていただけるようなメッセージを歌で届けられるのではないかと思いました」
そんな彼女の背中を押したのは、昨年末に他界した八代亜紀だった。
「子どものころから亜紀さんのファンで、私がデビューできたのも亜紀さんの担当ディレクターにスカウトされたのがきっかけだったこともあり、亜紀さんにはずっとかわいがっていただいたんです。そんな亜紀さんが昨年末に亡くなられて、悲しみに打ちひしがれました。亜紀さんの歌を追悼で歌うときも、『亜紀さんには二度と会えないのか』と思うと泣いて歌えなかったんです。でも、そのときに亜紀さんが『なっちゃん、ファイト、ファイト! 大丈夫よ、いずれ会えるから、今はそっちで頑張って生きなさい』って、空からおっしゃっている気がしたんですよね。そんな亜紀さんに背中を押されるように、『先に逝った大切な人たちにまた会うために、限られた時間を大切に生きよう』というメッセージを込めた歌をつくろうと考えました」
詞は前作「時の川」に続いてヒットメーカーの田久保真見が綴り、曲はシティポップの名手として知られる林哲司が紡いだ。
「田久保先生は、私の想いを100パーセント受けとめて詞を書いてくださいました。林先生に曲を依頼したのは、私がパーソナリティを務める『ふんわり』(NHKラジオ第1/毎週水曜放送)にゲストにお越しいただいたことがきっかけです。新曲は少し冒険したいなと思ったときに、シティポップの名手である林先生の顔が浮かんだんです。演歌の作曲家でポップス寄りの歌を作ってくださる先生もいらっしゃいますが、普段ポップスを手がけている作曲家の先生に演歌寄りの歌謡曲を作っていただくと、匂いが違うんですよね。今回は田久保先生の詞と見事にマッチしたメロディを林先生がつけてくださって、重厚感がありながらも、『悔いなく生きよう』という前向きなメッセージにふさわしいキラキラした曲になったと感じています」
カップリングの「虹の橋」も田久保真見と林哲司のタッグだが、こちらは制作方法が異なる。
「演歌は詞を先に作って曲を詞に合わせてつける、いわゆる“詞先”の歌が多いですが、林先生が手がけてこられたポップスは曲を先に作って詞を後でつける“曲先”の歌がほとんどです。「いのちの砂時計」は伝統的な演歌の作り方にのっとって曲を書いていただきました。林先生も“詞先”の歌は初めてだとおっしゃっていましたね。逆に、「虹の橋」はせっかく林先生にお願いするのだから “曲先”でお願いしました。歌のテーマとしては2曲とも『命の尊さ』を歌ったものですが、“詞先”と“曲先”で、まったく雰囲気の異なる歌になったと思います」
■さまざまな活動を糧に 大切な人々に歌を届ける
「能登半島地震や亜紀さんの死から命の尊さを実感したからこそ、今作は遺言のつもりで作りました。レコーディングのときはいつも声色の年齢層を設定して歌うのですが、冒頭の語りかけるような歌詞は、まさにこれから空の向こうへ旅立とうとしている円熟しきった80代のシャンソン歌手を意識しつつ、ただ、実際には少し年齢層を下げた声色で、語りかけるように歌っています」
伍代夏子名物の“長時間レコーディング”は、還暦を迎えたときにリリースした「人生にありがとう」以来、時短のままだという。
「昔はそれこそ何十回と歌って、『何回目に歌ったここの部分と何回目のそこの部分とをつなげて……』と、全部スタッフさんに指示してすべての作業が終了するまで見届けないと気が済まなかったんです。日付を超えることもたびたびあってみんな辟易としていましたが、還暦を迎えて私も角が取れたんですよね(笑)。それに、何十回と歌ったところでそんなに変わらないということもわかりました。若いころに比べたらレコーディングに費やす時間は半分以下になったと思います。ある程度歌って、セレクトも目安をつけたら、あとは信頼するスタッフさんにお任せです。いい作品に仕上がったなと満足しています」
フラワーウォールをバックにしたジャケットは、意外なイメージで撮影した。
「フラワーアーティストの和田浩一さんの作ったフラワーウォールを背に撮影したジャケットは、棺の中に入った自分をイメージしました。私が死ぬのは20年先かもしれないけれど、明日かもしれないわけで、それは誰にもわからないですよね。そう言う私に、『死に急いでいるんじゃない?』などと言う友達もいるのですが、毎日やり残すことのないように生きてしまう性分なんです。私がこの世を去るときは、今作のジャケットのようにきれいにヘアメイクをしてもらって、ピンク色のお花に囲まれて、白装束ではなくてピンクの着物で、まさにシャンソンの名曲『バラ色の人生』を表すかのように送ってほしいという希望を伝えています』
やり残すことのないように毎日を全力で生きる彼女は、歌手活動以外に、災害時に人とペットが同じ室内に避難できるよう推進するプロジェクトにも取り組んでいる。
「幼いころは犬や鳥、シマリスに金魚、ひよこなど、さまざまな動物にまみれて暮らしていました。特に犬は、ダックスフントからシベリアンハスキー、チン、雑種と、赤ちゃんのときからずっと一緒に生活してきて、生まれたときから愛犬家です。2年前からはダックスの“りく”を飼っていて、つい先日からは同じくダックスの“そら”という弟犬を迎えました。私にとって2匹の愛犬は生きがいであり癒しの存在。そんな彼らを災害時に置き去りにして自分だけ避難するなんて考えられず、昨年7月から、災害に備えて人とペットが安心して同じ室内へ避難できる社会を目指して、犬の“りく”と私の“夏子”から名づけた『りく・なつ同室避難推進プロジェクト』をスタートさせました。工夫すれば人とペットが共生できる避難所運営も可能だということをしっかりと訴えていきたいと思いますし、今後は保護犬の活動にも尽力していく予定です」
ほかにも、ラジオのパーソナリティや演歌仲間との卓球練習など、エネルギッシュに毎日を送る伍代夏子。さまざまな活動を肥やしにして、ますます歌手としても輝きを放つ彼女のニューシングルは、今を生きる人々の心にも、そして先に逝った人々の心にも、しっかりと届くはずだ。
文・森中要子
<リリース情報>
■伍代夏子「いのちの砂時計」
2024年5月22日発売
品番:MHCL-3086/価格:1.500円(税込)
「いのちの砂時計」
作詞:田久保真見 作曲:林 哲司 編曲:萩田光雄
C/W「虹の橋」
作詞:田久保真見 作曲:林 哲司 編曲:萩田光雄
■伍代夏子 公式サイト:http://www.voicemusic.co.jp/
2024/06/19



