日々話題を集めるニュースをもとに、経営コンサルタント・坂口孝則氏が背景を解説する『オリコンエンタメビズ』。今回は、東京ディズニーシーの新エリア公開を軸に、チケット価格についての見解をレポートする。
■ラグジュアリーの定義
コロナ禍の前、観光ビジネス業の方と話しました。
「世界的に『ラグジュアリーホテルの1泊』っていくらと思いますか?」と聞かれたので「スイートルームで30万円くらいでしょうか」と答えました。すると鼻で笑われ「最低でも100万円ですよ。普通に500万円くらいもあります」とのことでした。
この金額がいいとか悪いとかいう話ではありません。日本人の年収相当額を1泊で使用する富裕層がおり、それを提供する事業者がいるというだけのことです。
また、日本は世界の中から取り残されてきました。海外旅行時に外国の物価が高かった、というテレビのニュースはもはや陳腐にすらなっています。日本人の物価感覚も、かなり世界基準からするとズレてきています。
■ディズニーシーの新テーマパークとファストパス
さて、このところディズニーシーが二つの“事件”で話題になっています。一つ目は、新エリアの公開です。名前は『ファンタジースプリングス』。2024年6月6日からオープン予定です。5年の月日をかけ建設されました。あ、もともと夢の国だから、建設ではなく魔法によって一瞬で完成したのでしょうけれど。テーマは『アナと雪の女王』等をモチーフにしたもので、さまざまなアトラクションが用意されています。人気と混雑は必然でしょうね。
そしてエリア内には、「東京ディズニーシー・ファンタジースプリングスホテル」も誕生します。冒頭の話のあとではありますが、豪華客室として「一泊34万円を超える部屋もある!」と各メディアは報道しています。
ところで、このホテルにまつわる“事件”が二つ目です。この『ファンタジースプリングス』でアトラクションを楽しむだけではなく、待ち時間を短縮して楽しもうと思えば、特別券(1デーパスポート:ファンタジースプリングス・マジック)が必要になります。ダイナミックプライシングといって、価格が混雑具合によって変動する仕組みです。大人約2万3000円〜約2万6000円の幅になります。
この特別券を購入できるのは、先に紹介した東京ディズニーシー・ファンタジースプリングスホテルの宿泊者のみ。ここで、34万円とはいわなくても、1泊最低料金の部屋であっても6万6000円です。つまり、特別券とあわせて合計が9万円ほどになります。一人9万円もかかるの、という驚きや失望や羨望や嫉妬やらが入り混じって、多くの人々に衝撃を与えたのでした。
■ディズニーシーの価格設定
まず経営的な観点でいえば、ディズニーシーの価格設定は正しいといえます。多段階価格設定といって、収益を最大化する方法です。航空券の価格設定を例に出すまでもなく、早割・繁忙期、さらにはファーストクラスとエコノミークラスのようなグレードによる差別化を実施しています。また、一般入場者の価格を大幅に引き上げるのではなく、あくまで待ち時間を短縮するニーズに対して高い料金を設定しているだけです。航空券の例でいえば、ファーストクラスが高いだけで、エコノミークラスを廃止するわけではありません。
また、例えば米国のユニバーサルスタジオを見てみましょう。エキスプレスチケットは、入場券とは別に209ドル(≒3万円)です。近隣のホテルに宿泊して合計すると、さきの約9万円と遜色ないはずで、国際的に法外に高いとはいえません。また日本でも喜んで支払う層はいるでしょう。
しかしここで問題を書いておきます。ディズニーシーの話ではなく一般論です。
私は意図的に「カネを払える人が払うんだからいいじゃないか」といったトーンで書いてきました。ただ、人間はそれほど理屈で割り切れません。「貧乏人は待たされて、金持ちだけ優遇されるってこと?」と不満をいだく場合があるでしょう。そして、せっかく楽しみにしていたテーマパークを嫌うかもしれません。VIPを横目で見て、楽しめない心情になるかもしれません。
だからここには常に倫理的な問題が横たわっています。また外国ならば許されても、日本人には許せない価格差もあります。もちろんそれぞれの国民を相手にしているのですから、調整は必要です。
ディズニーシーの話に戻します。個人的意見では、約9万円は許される金額で許容されるでしょう。しかしディズニーシーを含めて、今後どこまで価格差の広がりが許容されるでしょうか。例えば9万円ではなく、20万円というチケットが出たら、日本人は許容するでしょうか。引き続き注目する必要があります。
■プロフィール
■ラグジュアリーの定義
コロナ禍の前、観光ビジネス業の方と話しました。
「世界的に『ラグジュアリーホテルの1泊』っていくらと思いますか?」と聞かれたので「スイートルームで30万円くらいでしょうか」と答えました。すると鼻で笑われ「最低でも100万円ですよ。普通に500万円くらいもあります」とのことでした。
また、日本は世界の中から取り残されてきました。海外旅行時に外国の物価が高かった、というテレビのニュースはもはや陳腐にすらなっています。日本人の物価感覚も、かなり世界基準からするとズレてきています。
■ディズニーシーの新テーマパークとファストパス
さて、このところディズニーシーが二つの“事件”で話題になっています。一つ目は、新エリアの公開です。名前は『ファンタジースプリングス』。2024年6月6日からオープン予定です。5年の月日をかけ建設されました。あ、もともと夢の国だから、建設ではなく魔法によって一瞬で完成したのでしょうけれど。テーマは『アナと雪の女王』等をモチーフにしたもので、さまざまなアトラクションが用意されています。人気と混雑は必然でしょうね。
そしてエリア内には、「東京ディズニーシー・ファンタジースプリングスホテル」も誕生します。冒頭の話のあとではありますが、豪華客室として「一泊34万円を超える部屋もある!」と各メディアは報道しています。
ところで、このホテルにまつわる“事件”が二つ目です。この『ファンタジースプリングス』でアトラクションを楽しむだけではなく、待ち時間を短縮して楽しもうと思えば、特別券(1デーパスポート:ファンタジースプリングス・マジック)が必要になります。ダイナミックプライシングといって、価格が混雑具合によって変動する仕組みです。大人約2万3000円〜約2万6000円の幅になります。
この特別券を購入できるのは、先に紹介した東京ディズニーシー・ファンタジースプリングスホテルの宿泊者のみ。ここで、34万円とはいわなくても、1泊最低料金の部屋であっても6万6000円です。つまり、特別券とあわせて合計が9万円ほどになります。一人9万円もかかるの、という驚きや失望や羨望や嫉妬やらが入り混じって、多くの人々に衝撃を与えたのでした。
■ディズニーシーの価格設定
まず経営的な観点でいえば、ディズニーシーの価格設定は正しいといえます。多段階価格設定といって、収益を最大化する方法です。航空券の価格設定を例に出すまでもなく、早割・繁忙期、さらにはファーストクラスとエコノミークラスのようなグレードによる差別化を実施しています。また、一般入場者の価格を大幅に引き上げるのではなく、あくまで待ち時間を短縮するニーズに対して高い料金を設定しているだけです。航空券の例でいえば、ファーストクラスが高いだけで、エコノミークラスを廃止するわけではありません。
また、例えば米国のユニバーサルスタジオを見てみましょう。エキスプレスチケットは、入場券とは別に209ドル(≒3万円)です。近隣のホテルに宿泊して合計すると、さきの約9万円と遜色ないはずで、国際的に法外に高いとはいえません。また日本でも喜んで支払う層はいるでしょう。
しかしここで問題を書いておきます。ディズニーシーの話ではなく一般論です。
私は意図的に「カネを払える人が払うんだからいいじゃないか」といったトーンで書いてきました。ただ、人間はそれほど理屈で割り切れません。「貧乏人は待たされて、金持ちだけ優遇されるってこと?」と不満をいだく場合があるでしょう。そして、せっかく楽しみにしていたテーマパークを嫌うかもしれません。VIPを横目で見て、楽しめない心情になるかもしれません。
だからここには常に倫理的な問題が横たわっています。また外国ならば許されても、日本人には許せない価格差もあります。もちろんそれぞれの国民を相手にしているのですから、調整は必要です。
ディズニーシーの話に戻します。個人的意見では、約9万円は許される金額で許容されるでしょう。しかしディズニーシーを含めて、今後どこまで価格差の広がりが許容されるでしょうか。例えば9万円ではなく、20万円というチケットが出たら、日本人は許容するでしょうか。引き続き注目する必要があります。
■プロフィール
坂口孝則(さかぐち・たかのり)
1978年生まれ。福岡放送『めんたいワイド』(隔週)、TBSラジオ『日本リアライズpresents 篠田麻里子のGOOD LIFE LAB!』など出演。日本テレビ系『スッキリ』木曜コメンテーターも担当していた。趣味はメタルのライブに行くことで、音楽をこよなく愛する調達・購買コンサルタント、講演家。未来調達研究所株式会社所属。大阪大学経済学部卒業後、電気メーカー、自動車メーカーに勤務。原価企画、調達・購買に従業。現在は、製造業を中心としたコンサルティングを行う。著書は『牛丼一杯の儲けは9円』『営業と詐欺のあいだ』『未来の稼ぎ方』『製造業の現場バイヤーが教える 調達力・購買力の基礎を身につける本』『調達・購買の教科書』など。直近で『買い負ける日本』(幻冬舎刊)を発売した。■エンタメニュースを“経済視点”で解説【オリコンエンタメビズ】
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2024/05/15