漫画家・山下和美と笹生那実が代表を務める「旧尾崎邸保存プロジェクト」が8日、東京・豪徳寺の旧尾崎テオドラ邸で、同所のグランドオープンを記念したプレス発表会を開催。山下、笹生のほか、新田たつお、三田紀房、高橋留美子、福本伸行、高橋のぼる、ちばてつや、秋本治、永井豪、大和和紀らが出席した。

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　尾崎テオドラさんは、ワシントンDCに日本の桜の木を寄贈したことで知られる尾崎行雄元東京市長の妻で、日本の民話を数多く英訳した翻訳家。旧尾崎テオドラ邸は、テオドラのために日本人の父が1888年に建てたとされている邸宅で、1933年に現在の場所へと移築された。

　2020年夏に取り壊される予定だったが、山下が設立した「旧尾崎邸保存プロジェクト」を通じて同所を買い取り、近隣住民やネットでの呼びかけに賛同した4000人超の支援者により、建物の保存が実現した。2回にわたるクラウドファンディングや著名漫画家らの支援によって内装などの改修も行われ、3月1日に「ギャラリー」「喫茶室」「ショップ」からなる新たな観光施設としてオープンする。

　山下は同所について「かわいくて品のある佇まいがとても好きで、散歩のたびに眺めていた」とし、「2019年の3月に、この洋館が解体されて建売り住宅になる予定だということを知りまして、いても立ってもいられず、何とか残せないものかと動いた」と振り返った。

　三田は同志を募った経緯や当時のやりとりなどを紹介しながら、「投資家の方に相談するのではなく、漫画家の力でこの事業を成功させたかった。結果、この7人で力を合わせ、我々だけでここまで来ることができたということに満足感と誇りを持っています」としみじみ。「これからこの事業をより発展させていきたい」と意気込んだ。

　三田から「この建物に箔をつけたくて、大御所のみなさんに頼で来ていただいた（笑）」と紹介されたのが、ちば、秋本、永井、大和の4人。ちばは同所の完成を祝いつつ、「漫画家っていうのは、大ヒットを出しているときはいいんですけど、 普段はもうカツカツで生きている。アシスタントの給料も払えるかどうかっていう職業です。そんな漫画家たちがみんなでお金を出し合って、この洋館を買い、日本の漫画の文化を発信できたらいいねというプロジェクトを立ち上げたそうです。話を聞いたとき、本当にいいことだなと思って、大賛成で喜んでいました」とたたえた。

　一方で「ただよく考えてみると、本来こういうことは国がやるべきことだなと思うんですよね」と苦言も吐露しつつ、「なににしても、そういう第一歩が始まった。おめでとうございます」と伝えた。

　永井は「漫画は今でこそ日常生活に溶け込んでいますが、まだまだ歴史の浅い文化。僕らも初期の頃は、漫画を書いているだけで下に見られていたように感じています。でも、だんだんと文化と呼べるものになってきたと思いますので、これからますますアピールしていっていただければと思っています。みなさん頑張ってください」とエールを送った。

　秋本は「ここでおいしいお茶を飲みんだり、ケーキを食べたりしながら、漫画の原画などをじっくり鑑賞できる場所というのは本当にない。東京にとっての新しい名所になればいいなと思いますね」とにっこり。加えて、「漫画の原画を見る機会もなかなかない。特に、僕ら世代だと原画が残っていますけど、今の世代の人たちはデジタルになっちゃっているから、原画そのものがないことも多いんですよ。そんな中で、『やっぱり原画を見せたいから自分たちでやろう』っていうのは、本当に新しいすばらしい志だと思います。どうかみなさんも宣伝してください」と呼びかけた。

　大和は「西洋館と言えば、やっぱり少女漫画の世界でありますし、こうして実際に来させていただくと、天井ってこんなに高いんだってすごく感心しています」と感動を伝え、「私も今は北海道で漫画ミュージアムを作る活動をしておりますが、それは役所と一緒にやってるんですけれども、なかなか畑違いのことで、 上手くいかないことも多い」とし、「これを実現させるためには、いろいろな方といろいろな話をしてきたんだなと思う。本当に頭が下がる思いです」と賛辞を送った。

　今後同所のギャラリーでは、漫画家らの個展や企画展などが行われ、ショップでは展示と連動したグッズ販売などが行われるほか、同所を拠点としたECサイトも立ち上げられ、1点モノの直筆原画などが販売されていく。

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