TBSホールディングスは26日、「旧ジャニーズ事務所問題に関する特別委員会による報告書」全文を同社公式サイトに掲載した。同日午前5時25分から拡大放送したTBSテレビ番組『TBSレビュー』でも伝えた。

　表紙など含め、計44ページの詳細な報告書となった。全4章の構成で、1章では調査の目的や概要、2章では個別事案について事実関係と背景を記した。3章ではTBSとジャニーズ事務所の関係をまとめ、これらを踏まえ、最後の4章では外部委員から「再発防止のための提言」とした。

　このうち「提言」部分の4章は、メディアとしての「反省」や「人権尊重」にとどまらず、「公平・公正・正確」という言葉が複数回使用される記述となり、9つの提言がなされた。

　最後の9番目「エンタテインメント業界への働きかけ」では、「今回の問題において、社会が目を向けているのは、長期にわたって性加害が報じられてきた中で、ジャニーズ事務所を単にビジネスパートナーとのみ捉え、問題を看過し、利益を得てきたテレビ局のあり方そのもの、さらにはその社会的責任である」と指摘。

　「『認識していなかった』との主張は、無意識のうちに『見て見ぬふり』をしてきたのではあるまいか、とさえ思える。たとえ、認識していなかったことが事実だとしても、結果に対する責任は免れ得ない。唯一、いまのテレビ業界にできることは、芸能界をはじめとする旧来型のエンタテインメント業界の適正化を進めることである」と受け止めた。

　そして「今回の問題を機に『芸能界は特殊な世界』というステレオタイプな釈明はもはや通用しなくなった。エンタテインメント業界の中心にいるテレビ局が、業界全体を『現代の社会環境』に適応させるべく、推進役を務めるべきである」とし、映画業界の「映適」マーク付与の取り組みに触れ、仕組みづくりを「TBSが率先してリードしていくべきと考える」とも記した。

　また、報告書の締めくくりには「最後に、外部委員としては、上記再発防止策の速やかな実行を担保するために、TBS社内に対策チームを設置し、スケジュールや実行状況を社会に公表することを求める。また、新たな問題が発見された場合にも調査を行い、公表すべきと考える」と伝え、これで幕引きではない姿勢も示した。

　報告書は、弁護士2人が外部委員を務める特別調査委員会が、10月16日〜11月20日の期間、TBSテレビ・TBSラジオを含む全社的に調査した結果をまとめたもの。定例委員会6回のほか、随時個別協議を行った。TBSテレビの役職員や元役職員ら122人、TBSラジオの関係者17人にアンケート調査。その上で、125人に個別ヒアリングを行った。TBSホールディングスTBSテレビの代表取締役社長・佐々木卓氏も含まれた。また、過去の放送原稿、進行表、オンエア映像なども分析した。

　提言として示したのは、以下の9項目
（1）トップメッセージの発信
（2）人権尊重の意識向上に向けた全社的方策の策定
（3）ニュース編集権の独立性確保、及び、報道機関として「公平・公正・正確な情報発信」の徹底
（4）「公平・公正・正確な情報発信」の実効性を担保する有識者機関の設置
（5）調査報道力の強化のための方策
（6）経営陣と現場のコミュニケーションの充実
（7）人権尊重に係る定期的な教育・研修の実施
（8）「公平・公正・正確な情報発信」の意識向上のための教育
（9）エンタテインメント業界への働きかけ