9月24日に開催される『RIZIN.44』(さいたまスーパーアリーナ)で、前フェザー王者のクレベル・コイケ(33)と対戦することが決定した金原正徳(40)。プロデビューから20年というベテランで、2009年には戦極のチャンピオンとして大みそかの『Dynamite!!』で山本“KID”徳郁さんと対戦して判定3−0で勝利。さらに世界最高峰のUFCにも参戦するなど、まさに唯一無二のキャリアを持ち日本格闘技界で存在感を放ってきた。
20年からRIZINに参戦すると、初戦でDEEPバンタム王者のビクター・ヘンリーに敗れ引退をほのめかしたが、フェザー級に上げ再起を決意すると21年10月に芦田崇宏、22年4月に摩嶋一整、23年4月に山本空良を下して現在3連勝中。けっしてベテランらしい老獪な戦い方ではなく、現在進行系で強さを見せ続けており、朝倉未来をはじめ多くのトップファイターが「本当に強い」と口を揃える。
ORICON NEWSでは、そんな“裏番長”にインタビューを実施。希望しながらも難しいと思っていたクレベルとの試合への思い、自ら「終活」と語るキャリアの最後に見据えるもの、そしてSNSバトルや減量など現在の格闘技界への提言などを聞いた。
■DEEP、戦極、UFC…プロキャリア20年を超え「経験を重ねた今が一番強いです」
――前王者のクレベル選手との試合が決定しましたが、最初にオファーを聞いた率直な感想は?
【金原】実は、最初の対戦オファー相手はクレベルじゃなかったんです。そこからいろいろあって結果的にクレベル戦を打診されて、僕としては「こんないい相手はいない」ということで、OKさせてもらいました。
――試合決定会見では「ファイター人生の終盤で燃える相手とやれる」とおっしゃっていました。
【金原】その気持ちは大きいですね。クレベルと戦えるなんて「まさか」と思いましたから。自分は(21年10月の芦田戦)でフェザー級に復帰して、すぐに辞めると思っていたんです。そう言いながら10年ぐらいやってますけど(笑)、それで勝ち進んでいく中で前チャンピオンと試合をさせてもらうことなんて想像していなかったし、もう一度トップ戦線でやれることが本当にうれしいです。自分がまだやれるのかっていう不安もあるので、自信をつけるために試合前に海外修行をして厳しい状況でトレーニングしてきます。
――20年を超えるキャリアの金原選手ですが、年齢を重ねることでどのような変化があるのでしょうか?
【金原】プラスもマイナスもあって、マイナスはみんなが言うように年齢とともに反射神経など落ちるものがあります。でも、プラス面では経験も増えるし、落ちるものを補うために頭を使った練習は若い頃にはできなかったことなので、本当にプラスマイナスでゼロだと自分では思っています。
――プロになったばかりの20年前や、UFCで戦っていた10年前と比べて、自分の強さは進化していますか?
【金原】トータルでの強さという部分では、今の方が強いなっていう実感はあります。自分の強い部分と弱い部分を客観的に見ることができるようになって、対戦相手と比較して「ここじゃ勝てないから、ここで勝負しよう」とか、二の手三の手を考えられるようになってきました。自分と同じような年齢で活躍しているほかの格闘家の試合を見ても「こういうことなんだな」って思うことも多いし、そういう部分を勉強して自分の中に落とし込んで練習しています。
――そうして積み上げてきたものの集大成をクレベル戦で見せると。
【金原】何年集大成をやってんだって感じですけど(笑)。自分の練習環境とか練習仲間があんまり変わってないので、“浦島太郎状態”なところもあります。まだ龍宮城にいたい、陸に上がりたくないみたいな(笑)。
――今回のクレベル戦も、長年の練習仲間である所英男選手と肩を組んで一緒に入場しますか?
【金原】もう2足歩行できないくらい僕も所さんも試合前に緊張しているので、今回も彼が断らなければお互いに支え合いながら入場します(笑)。
■「やっと実力が認められた」クレベル戦は、質の高い誰が見ても面白い試合になる
――朝倉未来選手をはじめ多くのファイターが「金原さんは強い」と口を揃え、RIZINの動画でも“裏番長”と紹介されていますが、ご自身としてはそのニックネームの感想は?
【金原】練習で強いだけじゃ話にならないし、でも練習で弱いって言われるのも嫌だし。まぁ自分としては褒められていると思って、いい方向に捉えてポジティブに考えています。
――“裏番長”と呼ばれるほどの強さの秘訣とは、どこにあるのでしょうか?
【金原】格闘技が好きなんじゃないですか。なんでもそうですけど、勝負事って勝たなきゃつまんないし、練習での1本1本のスパーリングもそうだし、やっぱ勝ちたいじゃないですか。特に強い人が来た時に勝ちたいから考えるし、うまくなりたいなと思って練習する。その継続じゃないですかね。「なんで強い」って聞かれると難しいですけど(笑)、やっぱり継続して、あんまり起伏を作らないように同じ感覚でやってきた成果なのかな。もちろん辞めたくなるときもめっちゃあったし、RIZIN初戦で負けて引退を宣言したけど(笑)。
――引退を撤回して復帰して良かったですね。
【金原】そうですね。普通に暮らしていて、格闘技をやってる緊張感とか、試合に勝って周りの人たちが喜んでくれる感覚とか、なかなか味わえないので辞められなくなります。何万人もいるさいたまスーパーアリーナの花道を歩く感覚っていうのは、代えがたいものなので「やっぱいいもんだな」って。そういうことでいうと、言い方が微妙かもしれないけど「やっと実力が認められたな」っていう気持ちが正直あります。
――それまでの世間の評価には満足はしていなかった?
【金原】SNSの数字だったり話題が先行している人がフィーチャーされていく中で、自分とクレベルの試合で格闘技の楽しさがどこまで伝わるのか心配な部分もあります。でも、めちゃくちゃいい試合、質の高い誰が見ても面白い試合になると僕は思っていて、榊原さんも「これぞRIZINという試合を組めたことが主催者としてもうれしいです」と紹介してくれたので、気合を入れて頑張ります。
――榊原さんは金原選手が勝てば一気にタイトル戦線に進むと発言されましたが、熱望していたケラモフとの試合がタイトルマッチになる可能性も出てきました。
【金原】ベルトを目指すとか本当に全然ピンと来てないし、今はクレベルしか頭にないけど、日本にベルトを取り戻したいです。バンタム級王者は(フアン・)アーチュレッタだし、やっぱり日本人が負けたくないという意地はあります。
――『超RIZIN.2』の朝倉未来vs.ケラモフ戦の感想は?
【金原】僕はシンプルに未来が勝つと思って見ていて、未来の調子が悪かったのかなとも思ったけど、それも全て実力でそれ以上にケラモフの強さが光った試合でした。未来が弱いとかじゃなく、シンプルにケラモフが強かった、それだけです。
――同じフェザー級のもう1試合、パトリシオ・ピットブルvs.鈴木千裕戦は?
【金原】あんな短期間でこんな試合が組まれるのかと驚いたし、普通にパトリシオが勝つと思ったら千裕が倒して会場もすごいことになって、彼のポジションもすごく上がっていいことだと思うし、あれこそが格闘技だなった改めて感じました。僕も会場で見ていて、KOした瞬間には立ち上がって「うわー!すげー!」って興奮しちゃって。やっぱ会場でしか味わえない格闘技の醍醐味ですよ。PPVも見やすくて普及しているけど、選手が入場する緊張感とか勝った時の一体感とか、会場でしか感じられない生のリアリティが僕は大好きです。
■知識のない状況での過度な水抜きには警鐘「やり方によっては命の危険性もある」
――格闘技界全体のこともお伺いしたいのですが、RIZINとは別軸で人気を集めているBreakingDownについて、どのようにご覧になっていますか?
【金原】オーディション番組として見てたんですけど、最近はちょっと飽きてきたので全く見なくなりました。ただ、経営しているジムの若い子たちがBreakingDownの話をしているのを聞くとすごいなと思うし、僕はぜんぜん否定派じゃないです。盛り上がることでRIZINも間違いなく恩恵を受けているはずだし、一つのコンテンツとしてすごくいいものだと思います。
――SNSで対戦相手を挑発したり口撃する“トラッシュトーク”については?
【金原】僕はあんまり好きじゃないです。相手がやってくるのはいいですけど、自分が追いつけてない部分もあるし、やりたいと思わない。SNSはファンからの支持を得られて選手との距離が近くなるけど、会いたい人や見たい人ってそんなに簡単に近寄れないっていうプレミア感も大事だから、格闘家にはあんまり安っぽくなってほしくない。ただ、今の時代はやらなきゃいけない必要性もわかっているので、別に僕がやらなくてもやれる人がやればいいのかなと。外から人の喧嘩を見ているのは楽しいので(笑)。
――続いて「減量」について、クレベル選手が計量失敗して王座を剥奪されたり、朝倉未来選手が1日で5.7キロも水抜きする動画を公開して話題になるなど、いま改めて減量が注目を集めています。
【金原】クレベルが失敗したときは自分もクレベルにメールしたんですけど、真面目にやっている人と楽に減量している人は、体を見れば一発でわかるんです。普段の取り組みも体の作り方を見ればわかるので、クレベルみたいに人生をかけて格闘技をやってる人が失敗してしまったら、それはしょうがない誤差だと思います。水抜きについては、未来が動画をあげることによって、知識がないのに「このぐらい落とせるなら、俺も試合前まで減量しなくていいや」って思う人が増えてしまうと、ちょっと危ないなと。未来は知識も経験もあってやっているので、そこはしっかり周知してあげたほうがいいですよね。僕は水抜き反対派で、やり方によっては命の危険性もあるので、そういう部分もちょっと伝えてほしいなという思いはあります。
――最後の質問です。20年にわたって日本だけなくUFCでも戦われてきた金原選手から見て、かつてのPRIDEの人気と現在のRIZINの人気は違うものでしょうか?
【金原】違うと思います。SNSの発達もあってお客さんの層が変わってきましたし、ファンの熱量は今の方が高いです。昔はコテコテの格闘技ファンが会場に来てましたけど、今は本当に若い女の子にも「金原さんですか」って声をかけられるようになりました。照れちゃいますよ(笑)。自分の息子の友だちのお父さんに言われることはあったけど、最近はお母さんにも好きな人が増えているし、ライト層の広がりは身をもって感じますね。今回の試合も注目度は高いですけど、僕はクレベルと戦ったり格闘技ができることが幸せで、知名度やお金は後からついてくるものだと思っているので、あまり世間の声には流されずに自分の好きなことを追求していきたいです。
――そのストイックな姿勢が、コアな男性ファンからの求心力も高めているんですね。ありがとうございました!
●RIZIN.44 決定対戦カード
・フェザー級
牛久絢太郎vs.萩原京平
・フェザー級
クレベル・コイケvs.金原正徳
・ライト級
スパイク・カーライルvs.堀江圭功
・フェザー級
中原由貴vs.白川陸斗
・フェザー級
摩嶋一整vs.横山武司
・バンタム級
中島太一vs.岡田遼
・ヘビー級
シビサイ頌真vs.ヤノスチューカス
・ヘビー級
スダリオ剛vs.トッド・ダフィー
20年からRIZINに参戦すると、初戦でDEEPバンタム王者のビクター・ヘンリーに敗れ引退をほのめかしたが、フェザー級に上げ再起を決意すると21年10月に芦田崇宏、22年4月に摩嶋一整、23年4月に山本空良を下して現在3連勝中。けっしてベテランらしい老獪な戦い方ではなく、現在進行系で強さを見せ続けており、朝倉未来をはじめ多くのトップファイターが「本当に強い」と口を揃える。
ORICON NEWSでは、そんな“裏番長”にインタビューを実施。希望しながらも難しいと思っていたクレベルとの試合への思い、自ら「終活」と語るキャリアの最後に見据えるもの、そしてSNSバトルや減量など現在の格闘技界への提言などを聞いた。
■DEEP、戦極、UFC…プロキャリア20年を超え「経験を重ねた今が一番強いです」
――前王者のクレベル選手との試合が決定しましたが、最初にオファーを聞いた率直な感想は?
【金原】実は、最初の対戦オファー相手はクレベルじゃなかったんです。そこからいろいろあって結果的にクレベル戦を打診されて、僕としては「こんないい相手はいない」ということで、OKさせてもらいました。
――試合決定会見では「ファイター人生の終盤で燃える相手とやれる」とおっしゃっていました。
【金原】その気持ちは大きいですね。クレベルと戦えるなんて「まさか」と思いましたから。自分は(21年10月の芦田戦)でフェザー級に復帰して、すぐに辞めると思っていたんです。そう言いながら10年ぐらいやってますけど(笑)、それで勝ち進んでいく中で前チャンピオンと試合をさせてもらうことなんて想像していなかったし、もう一度トップ戦線でやれることが本当にうれしいです。自分がまだやれるのかっていう不安もあるので、自信をつけるために試合前に海外修行をして厳しい状況でトレーニングしてきます。
――20年を超えるキャリアの金原選手ですが、年齢を重ねることでどのような変化があるのでしょうか?
【金原】プラスもマイナスもあって、マイナスはみんなが言うように年齢とともに反射神経など落ちるものがあります。でも、プラス面では経験も増えるし、落ちるものを補うために頭を使った練習は若い頃にはできなかったことなので、本当にプラスマイナスでゼロだと自分では思っています。
――プロになったばかりの20年前や、UFCで戦っていた10年前と比べて、自分の強さは進化していますか?
【金原】トータルでの強さという部分では、今の方が強いなっていう実感はあります。自分の強い部分と弱い部分を客観的に見ることができるようになって、対戦相手と比較して「ここじゃ勝てないから、ここで勝負しよう」とか、二の手三の手を考えられるようになってきました。自分と同じような年齢で活躍しているほかの格闘家の試合を見ても「こういうことなんだな」って思うことも多いし、そういう部分を勉強して自分の中に落とし込んで練習しています。
――そうして積み上げてきたものの集大成をクレベル戦で見せると。
【金原】何年集大成をやってんだって感じですけど(笑)。自分の練習環境とか練習仲間があんまり変わってないので、“浦島太郎状態”なところもあります。まだ龍宮城にいたい、陸に上がりたくないみたいな(笑)。
――今回のクレベル戦も、長年の練習仲間である所英男選手と肩を組んで一緒に入場しますか?
【金原】もう2足歩行できないくらい僕も所さんも試合前に緊張しているので、今回も彼が断らなければお互いに支え合いながら入場します(笑)。
■「やっと実力が認められた」クレベル戦は、質の高い誰が見ても面白い試合になる
――朝倉未来選手をはじめ多くのファイターが「金原さんは強い」と口を揃え、RIZINの動画でも“裏番長”と紹介されていますが、ご自身としてはそのニックネームの感想は?
【金原】練習で強いだけじゃ話にならないし、でも練習で弱いって言われるのも嫌だし。まぁ自分としては褒められていると思って、いい方向に捉えてポジティブに考えています。
――“裏番長”と呼ばれるほどの強さの秘訣とは、どこにあるのでしょうか?
【金原】格闘技が好きなんじゃないですか。なんでもそうですけど、勝負事って勝たなきゃつまんないし、練習での1本1本のスパーリングもそうだし、やっぱ勝ちたいじゃないですか。特に強い人が来た時に勝ちたいから考えるし、うまくなりたいなと思って練習する。その継続じゃないですかね。「なんで強い」って聞かれると難しいですけど(笑)、やっぱり継続して、あんまり起伏を作らないように同じ感覚でやってきた成果なのかな。もちろん辞めたくなるときもめっちゃあったし、RIZIN初戦で負けて引退を宣言したけど(笑)。
――引退を撤回して復帰して良かったですね。
【金原】そうですね。普通に暮らしていて、格闘技をやってる緊張感とか、試合に勝って周りの人たちが喜んでくれる感覚とか、なかなか味わえないので辞められなくなります。何万人もいるさいたまスーパーアリーナの花道を歩く感覚っていうのは、代えがたいものなので「やっぱいいもんだな」って。そういうことでいうと、言い方が微妙かもしれないけど「やっと実力が認められたな」っていう気持ちが正直あります。
――それまでの世間の評価には満足はしていなかった?
【金原】SNSの数字だったり話題が先行している人がフィーチャーされていく中で、自分とクレベルの試合で格闘技の楽しさがどこまで伝わるのか心配な部分もあります。でも、めちゃくちゃいい試合、質の高い誰が見ても面白い試合になると僕は思っていて、榊原さんも「これぞRIZINという試合を組めたことが主催者としてもうれしいです」と紹介してくれたので、気合を入れて頑張ります。
――榊原さんは金原選手が勝てば一気にタイトル戦線に進むと発言されましたが、熱望していたケラモフとの試合がタイトルマッチになる可能性も出てきました。
【金原】ベルトを目指すとか本当に全然ピンと来てないし、今はクレベルしか頭にないけど、日本にベルトを取り戻したいです。バンタム級王者は(フアン・)アーチュレッタだし、やっぱり日本人が負けたくないという意地はあります。
――『超RIZIN.2』の朝倉未来vs.ケラモフ戦の感想は?
【金原】僕はシンプルに未来が勝つと思って見ていて、未来の調子が悪かったのかなとも思ったけど、それも全て実力でそれ以上にケラモフの強さが光った試合でした。未来が弱いとかじゃなく、シンプルにケラモフが強かった、それだけです。
――同じフェザー級のもう1試合、パトリシオ・ピットブルvs.鈴木千裕戦は?
【金原】あんな短期間でこんな試合が組まれるのかと驚いたし、普通にパトリシオが勝つと思ったら千裕が倒して会場もすごいことになって、彼のポジションもすごく上がっていいことだと思うし、あれこそが格闘技だなった改めて感じました。僕も会場で見ていて、KOした瞬間には立ち上がって「うわー!すげー!」って興奮しちゃって。やっぱ会場でしか味わえない格闘技の醍醐味ですよ。PPVも見やすくて普及しているけど、選手が入場する緊張感とか勝った時の一体感とか、会場でしか感じられない生のリアリティが僕は大好きです。
■知識のない状況での過度な水抜きには警鐘「やり方によっては命の危険性もある」
――格闘技界全体のこともお伺いしたいのですが、RIZINとは別軸で人気を集めているBreakingDownについて、どのようにご覧になっていますか?
【金原】オーディション番組として見てたんですけど、最近はちょっと飽きてきたので全く見なくなりました。ただ、経営しているジムの若い子たちがBreakingDownの話をしているのを聞くとすごいなと思うし、僕はぜんぜん否定派じゃないです。盛り上がることでRIZINも間違いなく恩恵を受けているはずだし、一つのコンテンツとしてすごくいいものだと思います。
――SNSで対戦相手を挑発したり口撃する“トラッシュトーク”については?
【金原】僕はあんまり好きじゃないです。相手がやってくるのはいいですけど、自分が追いつけてない部分もあるし、やりたいと思わない。SNSはファンからの支持を得られて選手との距離が近くなるけど、会いたい人や見たい人ってそんなに簡単に近寄れないっていうプレミア感も大事だから、格闘家にはあんまり安っぽくなってほしくない。ただ、今の時代はやらなきゃいけない必要性もわかっているので、別に僕がやらなくてもやれる人がやればいいのかなと。外から人の喧嘩を見ているのは楽しいので(笑)。
――続いて「減量」について、クレベル選手が計量失敗して王座を剥奪されたり、朝倉未来選手が1日で5.7キロも水抜きする動画を公開して話題になるなど、いま改めて減量が注目を集めています。
【金原】クレベルが失敗したときは自分もクレベルにメールしたんですけど、真面目にやっている人と楽に減量している人は、体を見れば一発でわかるんです。普段の取り組みも体の作り方を見ればわかるので、クレベルみたいに人生をかけて格闘技をやってる人が失敗してしまったら、それはしょうがない誤差だと思います。水抜きについては、未来が動画をあげることによって、知識がないのに「このぐらい落とせるなら、俺も試合前まで減量しなくていいや」って思う人が増えてしまうと、ちょっと危ないなと。未来は知識も経験もあってやっているので、そこはしっかり周知してあげたほうがいいですよね。僕は水抜き反対派で、やり方によっては命の危険性もあるので、そういう部分もちょっと伝えてほしいなという思いはあります。
――最後の質問です。20年にわたって日本だけなくUFCでも戦われてきた金原選手から見て、かつてのPRIDEの人気と現在のRIZINの人気は違うものでしょうか?
【金原】違うと思います。SNSの発達もあってお客さんの層が変わってきましたし、ファンの熱量は今の方が高いです。昔はコテコテの格闘技ファンが会場に来てましたけど、今は本当に若い女の子にも「金原さんですか」って声をかけられるようになりました。照れちゃいますよ(笑)。自分の息子の友だちのお父さんに言われることはあったけど、最近はお母さんにも好きな人が増えているし、ライト層の広がりは身をもって感じますね。今回の試合も注目度は高いですけど、僕はクレベルと戦ったり格闘技ができることが幸せで、知名度やお金は後からついてくるものだと思っているので、あまり世間の声には流されずに自分の好きなことを追求していきたいです。
――そのストイックな姿勢が、コアな男性ファンからの求心力も高めているんですね。ありがとうございました!
●RIZIN.44 決定対戦カード
・フェザー級
牛久絢太郎vs.萩原京平
・フェザー級
クレベル・コイケvs.金原正徳
・ライト級
スパイク・カーライルvs.堀江圭功
・フェザー級
中原由貴vs.白川陸斗
・フェザー級
摩嶋一整vs.横山武司
・バンタム級
中島太一vs.岡田遼
・ヘビー級
シビサイ頌真vs.ヤノスチューカス
・ヘビー級
スダリオ剛vs.トッド・ダフィー
2023/08/20