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【ネタバレあり】『ドンブラVSゼンカイ』は2作品の魅力が詰まり過ぎた作品に 【篠宮暁の特撮ヤベーイ!】第32回

 ピン芸人・オジンオズボーン篠宮による大好きな特撮に特化したコラム『オジンオズボーン篠宮暁の特撮ヤベーイ!』。第32回は、スーパー戦隊“VSシリーズ”第29作目となるVシネクスト『暴太郎戦隊ドンブラザーズVSゼンカイジャー』(期間限定で劇場上映中)について全力全開で縁を語る。

Vシネクスト『暴太郎戦隊ドンブラザーズVSゼンカイジャー』に出演する(左から)駒木根葵汰、樋口幸平 (C)ORICON NewS inc.

Vシネクスト『暴太郎戦隊ドンブラザーズVSゼンカイジャー』に出演する(左から)駒木根葵汰、樋口幸平 (C)ORICON NewS inc.

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 最終回を迎えたばかりの戦隊とその一つ前の戦隊が共闘する、毎年恒例となったお祭り作品「VSシリーズ」が今年も公開された。今作は『暴太郎戦隊ドンブラザーズVSゼンカイジャー』。『ゼンカイジャー』も『ドンブラザーズ』も違った手法で違った角度からそれまでの戦隊の固定観念や概念を壊しにいった意欲作。

 この二戦隊の共演はドンブラザーズの放送が終わる以前からどうなるんだろう?と例年以上に楽しみにしていた。なぜならあまりにも作品の色が違いすぎるため、共演しているのが想像しにくかったからだ。また『ゼンカイジャー』では主役を務め、『ドンブラザーズ』では名前は同じながら180度キャラクターが違う五色田介人が、このVS作品で一体どう交わるのか。そして結局『ドンブラザーズ』では最後まで詳しくは明かされなかった介人の正体がついに明かされるのか。そもそも『ドンブラザーズ』のラストで『ドンブラザーズ』の記憶がなくなってしまったタロウは今作でどう振る舞うのか。気になるところが多すぎる『ドンブラVSゼンカイ』を見に胸を躍らせながら劇場へ向かった。

 映画が始まってすぐに驚いた。『ゼンカイジャー』のみのパートが始まった。これまでのVSシリーズは二つの世界が多少強引ながらも最初から混じり合って展開されていた。ライダーでは現行のライダーと前作のライダーが共闘するMOVIE大戦というのがあって初期の頃は別々でストーリーが展開されて最後に共闘という流れだったが、今回そのパッケージが戦隊にも取り入れられた形となった。

 『ゼンカイジャー』、無条件で楽しい。そう、これが『ゼンカイジャー』だ。五色田介人を演じる駒木根葵汰さんは『ドンブラザーズ』のクールな演技も確かに素敵だが、圧倒的に『ゼンカイジャー』での全力全開な介人の方が個人的には好きである。ここにきて本編での登場時にツイッターのタイムラインをこれでもかと賑わせたカシワモチワルドを再び登場させるのも『ゼンカイジャー』らしい。

 これまでのVSシリーズだと戦隊の敵組織に由来した新しい敵が登場するのがお決まりだったが、お決まりはゼンカイとドンブラの前では必ずと言っていいほど壊されるということで今回も壊された。

 『ゼンカイジャー』を堪能したあとは『ドンブラザーズ』。タロウの消えた記憶はどうなるのか気になっていたが意外にもあっさり記憶が復活。この潔くサラッと処理するのがドンブラザーズの魅力。タロウなき後のドンブラザーズはジロウによってすっかり変わってしまっていた。ここからが本当に井上敏樹先生節だなと感じた。メンバー全員がリア充で満たされているように見えるが、実は満たされずにどこか渇いていた昔の方が魅力的。井上敏樹先生がこの辺りの人間の弱さや醜さをヒーロー番組に混ぜ込むのは今に始まったことではなく、30年前の『ジェットマン』の頃から果敢に挑戦されている事実にはただただ脱帽するばかり。夢や願いをかなえようともがいている人生と夢や願いをかなえて満たされた人生、果たしてどっちが幸せなのか。

 『仮面ライダー555』でも夢持つと胸がアツくなるが叶えられないと夢は呪いになるとあるように井上敏樹先生の作品には哲学や幸福論が織り込まれていて自分はそういった部分に触れるたびに考えさせられてしまう。また人が変わってしまう様を見せられた時には自分ごとのようにドキッとしてしまう。雉野つよしは本編で何度も人が変わったし、今作でも見事に調子に乗ってしまっている。この雉野こそがドンブラにおいて最も人間味がある。しかし、そこにかわいげを感じてしまうのは脚本の妙と演じている鈴木浩文さんの演技力が成せるワザか。

 人間ではない脳人は人間のように満たされて傲慢になることはなく冷静に見ていて、この人ではない脳人に理想の人間像を投影するあたりも井上敏樹先生らしい。今作で最も目立ったのはその脳人のソノイと言っても過言ではない。タロウとの再会で満月がスクリーンに映った時には思わずうなった。ソノイとタロウの行方は“月ノミゾ知ル”といった感じで本編でも効果的に月が演出されていたが今作でもしっかりと映されていた。そしてソノイのあのシーンでも。

 ところで肝心のマスターの正体は「トゥルーヒーローはトゥルーヒーロー」という結論に。これぞドンブラ。ここがいい。変に整合性とって説明されたとてここまで上がりきったハードルを越えられるはずがない。越えられないのなら飛ばなければいい。潔すぎる。自分がドンブラを好きな理由の一つである。

 衝撃的なシーンを乗り越えてようやく二戦隊の共演。ここはもう細かいことは気にせずにただただ楽しむ。

 見終わってみれば期待を越える仕上がりで大満足だった。最後はこれで締めさせていただきたい。『科学戦隊ダイナマン』、40周年おめでとうございます。
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