全国の書店員が“今いちばん売りたい本”を決める『2023年本屋大賞』（本屋大賞実行委員会主催）の大賞作品が12日発表され、凪良ゆう氏の『汝、星のごとく』（講談社）に決定した。凪良氏は都内で行われた『2023年本屋大賞発表会』の贈賞式に出席し「言葉にならないくらいうれしいです」と涙を見せつつ、喜びを伝えた。

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　受賞のスピーチで凪良氏は「4年ぶりの贈賞式、記念すべき20回の開催おめでとうございます。このような大きな節目の年に賞をいただけたこと心から感謝しています」と一礼。コロナウイルス感染拡大防止のため、贈賞式が中止となった20年の本屋大賞の受賞時を振り返り「直接、お礼を言えなかったことがこの3年間の悔いになっていました」と涙を流し、「でも、受賞者としてこの場に立っていることが夢のようにうれしくて」と喜びをかみしめた。

　続けて「執筆中、何度も弱音を吐いたときに支えてくださった担当編集員さんにお礼が言いたいです。できあがった作品を読んで全力で背中を押してくださった講談社さんにも感謝しています。そしてこの作品を応援してくださった皆さんは私の輝ける星です」とあふれる思いを伝えた。

　凪良氏は2007年に初著書『花嫁はマリッジブルー』が刊行され、本格的にデビュー。BLジャンルでの代表作に『美しい彼』シリーズがある。17年に『神さまのビオトープ』を刊行し、高い支持を得ると、20年『流浪の月』で本屋大賞を受賞。『滅びの前のシャングリラ』で2年連続本屋大賞ノミネート。直木賞候補、吉川英治文学新人賞候補などに選ばれた『汝、星のごとく』にて、自身2度目となる本屋大賞受賞となった。

　今作は、風光明媚な瀬戸内の島に育った高校生の暁海（あきみ）と、自由奔放な母の恋愛に振り回され島に転校してきた櫂（かい）の物語。ともに心に孤独と欠落を抱えた2人は、惹かれ合い、すれ違い、そして成長していく。生きることの自由さと不自由さを描き続けてきた著者が、ひとつではない愛の物語を描く。

　贈賞式後の囲み取材では、作品について「結婚も出産も、仕事の挫折も夢も希望も詰まっている学生から社会に出ていく15年間を描きました。自分の人生を生きていくのか、選ぶということは捨てることでもあるという決断を描いたものでもあるので、自分の人生を自分で生きていくというメッセージも込めています」と解説。映像化について問われると「話が遠すぎてなかなか現実感はないのですが、しまなみの風景と東京の風景を対比させ、時代の空気感を伝えられる映像になればすてきだなと思います」と願いを込めた。