2003年4月１日、46歳という若さでこの世を去った香港の大スター、レスリー・チャン。没後20年を迎え、東京（Bunkamuraル・シネマ）や大阪（シネ・リーブル梅田）、京都（アップリンク京都）で「レスリー・チャン没後20年特別上映」として、『欲望の翼 デジタルリマスター版』や『流星』の上映が行われる中、1993年の「カンヌ国際映画祭」でパルム・ドール（最高賞）を受賞したチェン・カイコー監督作『さらば、わが愛／覇王別姫』の4K版が7月28日より劇場公開されることが発表された。

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■名作の中で輝き続けるレスリー・チャン

　『欲望の翼 デジタルリマスター版』（1990年）は、レスリーが初めてウォン・カーウァイ監督と組んだ青春群像劇の傑作。

　『流星』（1999年）は、レスリーが父親役として主演し、プロデューサーとしても参加したヒューマンドラマ。チャールズ・チャップリンの名作『キッド』をモチーフにした本作では、失脚した元証券アナリストの男が捨てられていた赤ん坊を拾い、愛情深く育てていくなかでの悲喜こもごもが描かれ、無償の愛の表情にあふれるレスリーの父親役が見どころとなっている。

　この映画は、1998年当時、香港がアジア金融危機の影響を受け、映画製作が困難な状況に陥り、これを打破するために、香港の映画監督や役者たちが参加して、ノーギャラで映画製作に参加して後に収益から配分を取るという製作スタイルの「創意連盟」プロジェクトによって制作されたもの。このプロジェクトに参加した20人の監督の中で最終的に唯一完成を迎えた作品となった。そういった理由で、本作主演のレスリーは出演料を受け取っていなかったという。レスリーは、社会経済が低迷する中、香港の映画労働者の雇用機会のために闘っていた。そのことにも思いを馳せたい作品。

　2ヶ月半の撮影期間中、アイドルや歌手としてのイメージを完全に捨てて、撮影終了まで髪はボサボサ、顔には無精ひげを生やして撮影に取り組んでいた、レスリーこん身作の一つ『流星』は本日（4月1日）よりデジタル配信もスタートしている。

■『さらば、わが愛／覇王別姫 4K』

　レスリーが主演し、中国を代表する女優コン・リーと俳優チャン・フォンイーの共演で、激動の時代に生きた2人の京劇俳優の愛憎を中心に描いた作品。没後20年、さらに映画公開30年の特別企画として、7月28日より東京の角川シネマ有楽町、109シネマズプレミアム新宿、グランドシネマサンシャイン池袋ほか、全国で順次上映することが決定した。

　京劇の俳優養成所で兄弟のように互いを支え合い、厳しい稽古に耐えてきた2人の少年。成長した彼らは、程蝶衣（レスリー・チャン）と段小樓（チャン・フォンイー）として京劇の古典「覇王別姫」を演じるなど一躍スターに。女形の程蝶衣は覇王を演じる段小樓を秘かに愛していたが、娼婦の菊仙（コン・リー）と結婚してしまう。

　中国映画界第5世代のチェン・カイコー監督が、京劇の古典「覇王別姫」を演じる2人の京劇俳優の愛憎を、1925年から文化大革命時代を経て50年にわたる中国の動乱の歴史を背景に、圧倒的なスケールと映像美で描く一大叙事詩。

　パルム・ドールをはじめ、同年ゴールデン・グローブ賞外国語映画賞受賞、NY批評家協会賞外国映画賞・助演女優賞（コン・リー）受賞、LA批評家協会賞外国映画賞受賞、米アカデミー賞外国語映画賞ノミネートなど世界中の映画祭で高く評価され、日本でも特に女形の程蝶衣役を狂おしいほどの妖艶さで演じたレスリー・チャンに魅了される観客が続出、当時大ヒットを記録した。そんな名作が圧倒的な映像美でスクリーンによみがえる。