日本を代表する俳優、北大路欣也（79）が主演する藤沢周平原作のオリジナル時代劇『三屋清左衛門残日録　あの日の声』が1月14日、午後7時から時代劇専門チャンネルで放送される。

【写真】その他の写真を見る

　本作は、2011年以来、23作品のオリジナル時代劇を制作した時代劇専門チャンネルと、ケーブルテレビ大手「J:COM」がシリーズ第5作『三屋清左衛門残日録　陽のあたる道』に続き共同制作した。清左衛門を支える心優しい息子の妻には優香、清左衛門を慕う小料理屋「涌井」の女将には麻生祐未、そして、気の置けない親友には伊東四朗とおなじみのキャスト陣に加え、小野寺昭、伊吹吾郎などベテラン俳優がわきを固め、いぶし銀の演技がドラマの重厚感を一層深めている。

　2016年のシリーズ第1作から6作にわたり主人公の三屋清左衛門を演じてきた北大路に、清左衛門という人物と作品の魅力を聞いた。「今回の作品では、藤沢先生の作品のテーマの1つでもある『武士や庶民を問わず静かに生きる人々の力強さ』が色濃く描かれているのですが、それはいつの時代も人としての理想ですよね。思うようにならない現状に不平不満を抱くのは江戸時代の人々も現代人も同様のことかもしれませんが、清左衛門はそういったところからは達観した境地に至っています。清左衛門から感じるのは『私は生きているんだ』というより、『私は生かされているんだ』というメッセージ。そして自分には与えられた役目があり、それを真摯にやりきろうとする。隠居したとはいえ、前藩主の用人まで務めた、いわば元高級官僚ですが、権力を振りかざしたり偉ぶったりするところなどはみじんもありません。むしろ市井の人々の目線で事件やもめ事を解決していきます」。

　最新作では、己の矜持をかけて正義を貫いた者に訪れる悲劇、そしてその悲劇を目の当たりにした清左衛門が事件解決に挑む姿が描かれる。「今の時代を覆っている不穏な空気感や不安感とも相通じるストーリーです。清左衛門が持っている信念や正義感は自身を利するために行使されるものでは決してなく、武士や町人、農民といった立場の違いを超えて周囲の人々と調和を保ちながら、人間らしく生きていくうえで大切なものです」。北大路は、葛藤しながらも粘り強く事件を追い続ける清左衛門の姿にも「憧れる」という。「普段、私たちは清左衛門のように行動できない。だから、この役をやらせていただき、悪に立ち向かい意見を言える爽快感がありました」。

　“時代劇離れ”もささやかれる昨今、若い層の時代劇への反響も明かす。「この世界に入って66年。ご縁のある方が、たくさんいらっしゃる。同年輩の方には、お孫さんもいる。そういう年齢の方が橋渡しとなって『おじいちゃんの友だち』とか『お父さんの友だち』ということで若い人が作品を見てくれる」という。「今は映画、テレビ、配信と接するものがいろいろあるから形は違うかもしれないけれど、人間の持っている『楽しみたい』という願いは永遠に変わらない。私が少年時代に映画館に通っていたのと同じような感覚で、若い人も時代劇を楽しんでくれていると思う」。

　清左衛門の「日残リテ昏ルルニ未ダ遠シ―」という言葉がある。清左衛門と自身を重ねることも多い北大路だが、この言葉については「共感なんてもんじゃない。『昏ルルニ未ダ遠シ―』ですから。大変ですよ」と豪快に笑う。それでも「私も頑張れるだけ、頑張ってついていきたい」と前を向く。

　最後に本作の見どころも。「本当の優しさ。本当に優しい人は強い。清左衛門は『俺は優しい』と主張しているのではなく、周囲への接し方に自然と優しさが出ている。相手が抱えている人生を理解してあげられる優しさが、いかに大事か。誰もが持っていなければいけないものだと思う。作品を見終わった後にそんな風に感じていただければうれしいです」。

＜放送情報＞
藤沢周平原作 北大路欣也主演 大ヒットシリーズ最新第6作
『三屋清左衛門残日録　あの日の声』
時代劇専門チャンネル（CS292）にて1月14日ほか放送