横浜流星と清原果耶が出演する映画『線は、僕を描く』。ストイックに作品に向き合う姿勢が、多くの製作陣から厚い信頼を受けている2人の共演は、互いにどんな思いをもたらしたのだろうか。率直な思いを横浜と清原が語り合った。

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■3年ぶりの共演に「成長した姿を見せたかった」

　水墨画の世界を繊細に描いた砥上裕將の小説を、映画『ちはやふる』を手掛けた小泉徳宏監督が映画化した本作。横浜はアルバイト先の絵画展設営現場で、椿の水墨画を見て魅了される大学生・青山霜介を、清原は霜介の師匠となる・篠田湖山（三浦友和）の孫であり、霜介の水墨画の先輩となる篠田千瑛を演じる。

　映画『愛唄 −約束のナクヒト−』以来、約3年ぶりの共演となる横浜と清原。台本を読んだ際、千瑛という役について横浜は「果耶ちゃんが想像できた」と語ると「早く現場で一緒にお芝居をしたい」と期待に胸を膨らませていたという。

　一方の清原は「私がこのお話を伺ったときは、霜介は流星くんが演じるというのは聞いていたので、またご一緒できることがうれしかったです。そして、『ちはやふる』以来である小泉監督との作品なのでがんばろうという思いも強かったです」と語る。

　共に再共演を楽しみにしていたという2人。横浜は「『愛唄 −約束のナクヒト−』のとき、現場での集中力など、感銘を受けることがすごく多かった」と清原の芝居に対する姿勢に惹かれていたことを明かすと「その後の作品も観ていて変化していく姿も感じていましたし、今回はどんな姿を見せてくれるんだろう」とワクワクした気持ちでクランクインしたという。

　横浜の期待は清原にも伝わっていたようで「すごくご一緒できるのはうれしかったのですが、小泉監督にも流星くんにも、少しでも成長した姿を見せたいという思いで、ちょっと緊張していたんです」と胸の内を明かす。

　そんななか対峙した2人は、お互いどんなことを感じたのだろうか。

　横浜は「相変わらず集中力がすごかったです。そして、シーンごとに生まれるちょっとした矛盾にも、とにかくしっかり向きあって妥協しないんです。自分もそこは常に意識していることなので、やっぱり同じ方向を向いているんだとうれしくなったし、芝居をしていてとても楽しかった」と称賛する。

　横浜の言葉に、清原は笑顔を浮かべると「私も流星くんの活躍をずっと見ていたので、どんどん頼もしくなって、器も大きく、深くなっているんだなと今回の現場を通して感じました。簡単な言葉になってしまうのですが、本当に“すごい”と思っていました」とこちらも横浜の懐の深さを絶賛する。

　作品をより良いものにするために、とにかく妥協せず向き合う横浜と清原。同じくワンシーンにこだわる小泉監督との相乗効果は絶大なものだったようだ。

　横浜が「たくさん話し合いましたね」と問いかけると清原も「それぞれ自分で考えて持ってきたことを、調和させて一番良いものを引き出そうとみんなでディスカッションしました」と非常に活気ある現場だったことを強調する。

■横浜流星と清原果耶の関係性は「戦友」

　作品は水墨画という題材を通して、人間の未熟さや成長を描く。作品に臨むために、横浜も清原も水墨画を練習する時間を重ねた。

　横浜は「水墨画は、自分自身と深く向き合うことが大切。僕自身も普段からそういう姿勢は心掛けているのですが、この作品を通して、より意識するようになりました」と語る。

　一方、清原も「水墨画の稽古をしていたとき、先生が『水墨画に“失敗”はない』とおっしゃったんです。『自分では失敗だと思った線も、良い線になっていることがある』この考え方って、固定観念にとらわれないということと同じなのかなと思ったんです。結果よりも、好きだとか、楽しいという感情を生み出していく自由さって大切だなと再確認できた気がします」と、大きな気づきになったという。

　それぞれが自身の考えを述べるたびに「似ている部分が多い」と語った横浜と清原。再共演を果たして、改めてどんな部分に魅力を感じたのだろうか。

　清原は「流星くんは燃えたぎる闘志を持っている感じがするので、そこは変わらず、どんな状況でも闘志の火を絶やさないでほしいなと思います。それが流星くんのとても素敵なところだと私は思っています」とエールを送る。

　横浜は、「果耶ちゃんが素敵な作品に出ているのを見ると『自分もがんばろう』と思えるし、刺激をたくさんもらえる人」と高め合える存在であることを明かすと「僕にとっては藤井道人監督や果耶ちゃんというのは、常に作品を共にして互いの成長を感じ合いたい人です」と最大級の賛辞を贈る。

　それを聞いた清原は「藤井監督が『戦友だよね』と仰っていて、『それだ』と思ったんです。それって先ほど流星くんが言っていた『志が似ている』という言葉に近いのかなと思ったんです。どこか流星くんは戦友という感覚なのかもしれません」と2人の関係性を説明した。

■清原果耶から横浜流星に助言

　作品を通して、固い絆で結ばれた2人。共に作品が続き、多忙を極める中、自分を見失わないためにどんなことを行っていることを聞いた。

　横浜が「壁を見つめることです」と語ると、清原は「え、まだ見つめているの？」と笑う。「うん。やっぱり大切な時間なんだよね。あとは戦友と会うこと。それはとても大事」と続ける。

　清原は「私は、壁は見つめないのですが（笑）、大事にしていることはよく寝ること。あとは好きなものをたらふく食べること。カーテンを開けてしっかり朝日を吸収するのも、とても大事にしていることです」と語る。

「グサッと刺さりました。カーテン閉めたままかも」と横浜が苦笑いを浮かべると、清原は「よく寝ていっぱい食べてください。しっかりお休みもらって、カーテンを開けないなら、白いカーテンにするとか」と提案。「しっかりと丁寧に生活しています」と反省していた。


取材・文／磯部正和
写真／MitsuruYamazaki