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望海風斗、大好きな宝塚・大好きな男役を卒業し新たに見つけた“自分”

 熱のこもった芝居と豊かで深い歌声、そして確かな歌唱力で、宝塚歌劇団在団時、絶大な人気を誇った元雪組トップスターの望海風斗。昨年4月の退団後は、ミュージカル『INTO THE WOODS』の魔女、『next to normal』の双極性障害を持つ母親、『ガイズ&ドールズ』の踊り子と、一作ごとに進化を遂げ、新たな魅力を開花させている。その望海が、芸能生活20周年の節目を祝うコンサート『Look at Me』を開催する。

望海風斗(撮影:平野敬久) (C)ORICON NewS inc.

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■芸能生活20周年、とは言いながら、「20年というより“18+2”みたいな感覚です」

――来年の4月で芸能生活20周年となります。まずはこの20年間を振り返っての思いを伺えますか?

【望海】20年といっても、宝塚歌劇団に18年在籍し、退団して新たな道に進んで2年目なので、20年歩んできたというより、“18+2”みたいな感覚なんです。それだけ宝塚で過ごした18年間というのは自分にとって大きなもので、とてもうれしい誤算でした。

――宝塚というと厳しい世界と聞きますが、その18年間を支えたものは何だったんでしょう?

【望海】一番の理由は、辞めたら絶対にもう一回戻ることのできない場所だった、ということです。正直、辞めたいと思ったことがなかったわけじゃないです。ただ、一回出たらもう二度と戻れないんだと思うと、辞めるという決断はできなかったんですよね。そしてやっぱり、ファンの方の存在というのもありました。長く応援し続けてくださる方はもちろん、その時その作品その役で興味を持ってくださった方…いろんな方からすごく勇気をもらったし、励ましてもらっていて、その方々のことを思うと簡単に辞めようとは思えませんでした。あとは、宝塚の先輩後輩の関係性もありました。皆さんがいつも近くにいてくれて、何かあったときに背中を押してくれて。そういういろんなことに助けられました。

――しかしその中でも、トップスターというのは並大抵の努力では辿り着けない場所です。ずっと上を目指し続けられたのは何だったと思いますか?

【望海】執念ですね(笑)。もともと誰かに言われたわけではなく、天海祐希さんに憧れて、自分から入りたいと言って目指した場所。にもかかわらず、家族にすごく応援してもらったし、それだけ苦労もかけていて、簡単に辞めて家に帰るってことはしたくないという気持ちがありました。

そしてやっぱり、ファンの方々が、私が真ん中に立つ姿を見たいと言ってくださっていたことが大きかったです。宝塚って、学年が上がっていくその都度都度に段階があって、徐々にトップに近づいていくわけです。最初は、新人公演(入団7年目の生徒による試演公演)の主演が見たいと言ってくださり、次はバウホール公演(小劇場公演)の主演、その次は東京で上演される公演の主演…と、決まるたびに皆さんがすごく喜んでくださる。もう諦めようかと思うたびに、そういう皆さんの想いに触れて、もうちょっと頑張ってみようと奮い立つことができたんです。

望海風斗(撮影:平野敬久) (C)ORICON NewS inc.

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■男役として飛躍のきっかけをくれた『オーシャンズ11』 自分の個性を自覚できた雪組への組替え

――宝塚での18年間を振り返って、ご自身の中でとくに大きなターニングポイントになった出来事というと?

【望海】本当にひとつひとつの公演や出会いがターニングポイントではあるんですが、振り返ってみると、自分の宝塚人生において、最初に花組に配属されたことは、すごく大きかったと思います。もともと性格的に、あまり自分を押し出していくタイプではなかったんです。ただ花組で、隣の人と違う自分の色を出して、前に出ていくということを教えていただいたのは大きかったと思います。その後、雪組に組替えしたのですが、花組でやってきたことが結果的に自分の個性になりましたし、強みになりましたから。

――望海さんの舞台を拝見すると、押し出しが弱かった時代があることが意外にも思えます。

【望海】花組の下級生時代…入団10年目くらいまでは、男役として薄いと言われ続けていました。今振り返ると、自信を持って舞台に出ていく強さみたいなものが足りなかったのかなと思います。当時言われていたことの意味が徐々にわかってきて、自分がちゃんと息をして舞台に立てているなと思った頃、節目となるような役をいただき、100周年が来て、雪組への組替えがあり…。いろんなタイミングが重なったんですね。

――その自信に繋がった作品や役というと?

【望海】いろいろありますが、『オーシャンズ11』のテリー・ベネディクトは大きかったです。あの時期、それまで花組にいた男役のすごいスターさんたちの組替えや退団が重なったこともあり、大劇場公演で初めてというくらい大きな役をいただきました。ただ、当時の自分にはトップの蘭寿(とむ)さんと対峙するだけの大きさがなくて、演出家の小池(修一郎)先生から毎日叱られて。その理由は、本番の幕が開いて徐々にわかっていったんですけれど、あの時、チャンスをくださった小池先生、周りで支えてくれた仲間たち、見守り待ち続けてくださった蘭寿さんには、本当に感謝しかありません。

■『復活』で歌の場面をもらったことで、「作品に深みが出せるような歌が歌いたいと思った」

――望海さんというと、何より芝居心のある情感豊かな歌が魅力かと思います。それが自分の武器になると、どこかで気づいたタイミングはありますか?

【望海】歌は昔からずっと好きでしたけれど、下級生の時は歌がうまい方が周りにたくさんいらっしゃったので、それを自分の武器だとは言えないと思っていました。でも、少しずつ学年が上がっていく中で、男役としての個性を武器としてちゃんと身につけて勝負していかなきゃいけないと自覚したときに、歌を武器にできたらと思ったんです。歌を極めていきたいと思ったきっかけは、’12年の『復活-恋が終わり、愛が残った-』という作品で、冒頭に歌いながら花道から出てくるという役をいただいたことです。はじめに作品の色を出す役割を与えられたことがうれしくて、毎日毎日、ロシアの厳しい寒さや寂しい孤独な空気感をどうにか歌で表現しようと思ってやっていたのが、すごく楽しくて。そこから、歌がうまくなりたいというより、「この人に歌わせたら作品にもっと深みが出るよね」って言ってもらえるような歌が歌いたいなと思うようになりました。

――退団を決意されてからのことも伺えますか? ずっと男役だけを見つめてこられたのが、男役ではなくなった先の自分と向き合うことになるわけです。

【望海】自分の人生の第1章の終わり、みたいな感覚でした。宝塚はずっと居続けられる場所ではないことはわかっていたし、トップになった時点で、いつか辞めるんだという覚悟もありました。でも、宝塚に入って男役になるというところまでしか目標がなかった私には、その後どうしたらいいかが全然わからなかったんです。退団を発表してからも、あまりに濃い毎日に、先を考える暇もなければ考えたくもなくて、先送りにしていて。そんなときにコロナ禍が始まって…その影響は大きかったですね。

――退団の時期は当初の予定から半年先送りになり、結果的に退団直後からほぼ間を置くことなく舞台に立ち続けています。

【望海】コロナ禍で退団前に思わぬ考える時間ができて、その時に沸き上がってきたのが、舞台に立ちたい、お客さんに会いたいという想いだったんです。ただ、女性の役を演じている自分が全然想像がつかなくて、大丈夫かなと思ってもいたんです。でもその前に、『エリザベート TAKATAZUKA25周年スペシャル・ガラ・コンサート』に出させてもらえたことが良かったと思っていて。退団直後に、エキシビジョン的に男役をやらせていただき、思う存分楽しんで男役とお別れすることができました。辞めてからここまでの1年半、いろんな作品に出させてもらい、いろんな人と出会い、がむしゃらにやり続けてきて思うのは、私、意外に普通に楽しんでるなということ。それはすごくありがたいことだなと思っています。

望海風斗(撮影:平野敬久) (C)ORICON NewS inc.

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■宝塚を退団して出会い直した本来の自分自身 「宝塚歌劇を見にいくことが楽しみだったんだなって」

――男役という肩書きがなくなって、ここまで本当の自分を取り戻す時間だったと思うのですが、あらためて気づいた自分自身というものはありますか?

【望海】もともと宝塚ファンで宝塚に入ったんですが、辞めてから元の宝塚ファンに戻りました(笑)。舞台を見に行けば知っている子たちが頑張っていて、そこにももちろん感動するんですけれど、それとは別に宝塚歌劇のファンだったんだなと改めて思うんです。宝塚は自分が憧れたエンターテインメントの世界の原点で、その舞台を見にいくことが自分にとっての生き甲斐であり楽しみだったんだなって。

――公演に追われていた在団中とは生活も大きく変わったと思いますが。

【望海】やることに追われないと、何もしない人間だったんだなということに気づきました(笑)。時間ができて、何をするかを自分で選択できるようになったら、意外に、家でじっとしていたい…みたいな気持ちに。家にいてゆっくりして、好きなものを見ている時間がすごく好きなんだって思いました。宝塚を目指し始めた中学生の頃から、バレエを習ったりピアノを習ったり、ずっと習い事に打ち込んでいたので、何もやることがない時間を過ごすのって、初めてなんですよ。今、それはそれで面白いなと思っています。

■応援してくださる方に感謝の気持ちを届ける場に 「歌を通して新たな面もお見せできたら」

――今、目前に控えている、望海風斗 20th Anniversary ドラマティックコンサート『Look at Me』は、どんなコンサートになるんでしょうか。

【望海】前回の『SPERO』は、自分が新たな世界に踏み出すにあたって、新しい自分の声を見つけていくという意味合いのコンサートだったと思うんです。今回は、20周年というのもあり、これまで応援してきてくださった方とか、退団後の舞台を見て興味を持ってくださった方に対して、感謝の気持ちをお届けしたいと思っています。そのため、選曲には結構こだわって、何度も何度も構成を練り直しました。

ファンの方からよく「この歌を歌って欲しい」って言っていただいていた曲もありますし、意外なものもありますし、宝塚時代から応援してくださってる方も、退団後からの方も、誰も置いていかれないコンサートになっているはず。今回のコンサートはストーリー仕立てですが、そのお芝居とのバランスもすごく面白いと思いますし、歌を通して、また新たな面もお見せできたらいいなとも思っています。

――昨日(取材日前日)バンドリハがあったそうですが、手応えは?

【望海】武部(音楽監督の武部聡史)さんのアレンジがすっごくかっこいいんですよ。知っている曲もちょっと違う新さがあって、飽きずに楽しんでいただけると思いますし、バンドの方々もすごい方が集まってくださっていて、私を置いといても、サウンド自体お楽しみいただけると自信を持って言えます。

また今回のために、公演タイトルである『Look at Me』を冠したオリジナル曲も作っていただきました。すごくキャッチーな曲なので、ぜひ覚えて家で歌ってもらいたいなと思います。昨日のリハーサルで思ったのは、詰め込みすぎかなって思うぐらいすっごいボリュームだなと。きっと皆さんお腹いっぱいで帰ってもらえるんじゃないかと思います。

――タイトルの『Look at Me』に込めた想いを伺えますか?

【望海】20周年ということで、原点を振り返った時に最初にあったのは、自分を見てほしいっていう想いからだったんですよね。そこからバレエを習ったり、歌を習ったり、宝塚に入りたいと思ったりしたのも、きっとその気持ちをずっと持ち続けていたからで。それが反映されていたからこそ、皆さんも見て応援してくださったんだと思っています。

望海風斗(撮影:平野敬久) (C)ORICON NewS inc.

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■「俳優としてはまだまだ修行の身 自分の新しい扉を開けていくことにワクワクしています」

――この先、望海風斗として、舞台に立つ者として、こうありたいと思う理想像のようなものは?

【望海】俳優としては、まだまだ勉強中というか、修行中の身。いろんな役とか作品、一緒に仕事をする共演者やスタッフさんと出会って刺激をもらっている最中で、まだまだやるべきことはたくさんあるはず。宝塚を退団したことで、確実に幅は広がるだろうし、それを私自身も楽しみたい。自分の新しい扉を開けていくことに、今、すごくワクワクしています。望海風斗としては…本来、男役としてつけた芸名で、まさかずっと続くとは思っていなかったので、今、私自身が望海風斗ってなんだろうって思っているところです。ただ、男役としての望海風斗は終わってしまったけれど、この18年間に積み上げてきたことは、自分の中にずっと生きているはずで。その延長線で、芸名の自分というものが、もっともっと色濃くなっていったらいいなと思います。

――本名の自分として、やってみたいことはありますか?

【望海】これまではなかなか会えなかった友達に、退団してから会ったりしたんです。そしたら、友達がすごく昔の自分のことを覚えてくれていて、当時の自分を思い出してみると、あの頃の自分は意外に何でもない人だったなぁって。それでもやりたいことがあって今まで20年間頑張ってきたんですよね。その背景には、すごく高い夢を持って頑張っている何でもない人を応援してくれていた人たちの存在があったんだなと。皆で笑いながら、当時の私の失敗話などもしているうちに、いろいろなことを思い出してきて…。そういう自分を、今はもっと取り戻していきたいと思っています。

――そんな高校生時代だったとは意外です。

【望海】高校時代、周りにすごく個性の強い人たちが集まっていて、その中では、全然何の強さもない一人だったんですよね。でも、10歳の時から入るんだって言っていた宝塚に入って、入ったからにはやらなきゃ、頑張らなきゃみたいな気持ちがすごくあったんですよね。だから高校時代の友達とは会いにくかったんだと思います。会ってしまうと、本名の自分と男役の自分というのがうまくバランスが取れない気がして。宝塚で学年が上がってからは、男役・望海風斗でいる時間の方が、居心地がよかったんですよね。

望海風斗(撮影:平野敬久) (C)ORICON NewS inc.

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■舞台に立っている時が、生きていると感じる瞬間 「もっとお芝居がしたいし、いろんな役と出会いたい」

――コンサートの後は、年明けにミュージカル『DREAM GIRLS』も控えています。この先、どんな挑戦をしていきたいですか。

【望海】もっとお芝居がしたいし、もっといろんな作品、いろんな役と出会いたいなと思っています。やっぱり舞台に立っている時とか、稽古をしている時…何かに向き合っている時の方が自分としては「生きているな」って感じるので。

――あらためて、コンサートへの意気込みをお願いします。

【望海】コンサートではいろんな色をお見せできると思うので、カラフルなステージになったらいいなと思います。ただ、お客様が入らないとわからない部分が多いんです。スタートしてからもっとこうしたいと思うことが出てくると思うので、それまでにしっかり作品を固めて、お客様が入ったところでフレキシブルに千秋楽まで作り続けていきたいなと思っています。お客様が楽しんでくださることを前提にするしか頑張れないので、今、眠っているであろうショーの精神を思い出して、パワーを放出できたらいいなと思っています。

(取材・文/望月リサ)

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