俳優の斎藤工（39）がこのほど、23日にスタートしたテレビ朝日系金曜ナイトドラマ『漂着者』（後11：15〜深0：15　※一部地域で放送時間が異なる）の取材会に出席した。正体不明の漂着者を演じる斎藤が、役への思いや主演としての意識のほか、「『斎藤工が演じる』という、その情報すらちょっと邪魔をしてしまう」と語った本音を明かした。

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■目指すべきは「本当に実在する人物」

　ヒットメーカー・秋元康氏が企画・原作・脚本を手掛ける本作。とある地方の海岸に漂着した謎の男・ヘミングウェイがSNSにアップされた動画から一躍時の人となり、不思議な予知能力で世間を騒がせ、人々を狂信させていく、ジャンル分け不可能な新感覚ドラマとなる。

　記憶もなく、自分の名前すらわからない。そんな正体不明の漂着者で、のちに人々から崇められることになるほどの求心力をもつ謎の男・ヘミングウェイ。数多くのドラマや映画に出演した斎藤にとっても、このような特殊なキャラクターを演じるのは珍しい。その役を表現する上で「今は『斎藤工が演じる』という、その情報すらちょっと邪魔をしてしまう」と本音を漏らす。「なるべく素の自分っていうのは、見てくださる方には届かないほうがいいなと思ってるくらい。自分の名前も時として邪魔になる作品、役割なのかなと思い、日々そこと向き合っている。ちょっと不思議な感覚ではある」と、その個性的なキャラクターについて分析する。

　目指すべきは、視聴者が「本当に実在する人物だ」と思うほど、役になりきることだという。「オーガニックを突き詰めた人間の極地みたいな状態にしたいという願いがあった。衣装さん、メイクさんにご尽力いただいた」と感謝した。また、漂着時に爪を長くしたり、本当に漂着したらどうなるか海で漂ってみたり、リアリティーをとことん追求した。

　主人公を演じている斎藤ですら、秋元氏が手掛ける本作の結末が予想できないという。「着地する場所が“いい意味”で与えられていない。活字（台本）の段階で予想が裏切られていく」と、そのストーリー展開に驚きを隠さない。「“まさか”のオンパレードで、（共演する）ほかのキャラクターの方もそうじゃないかなと思うんですけど、自分の役についてある種の疑念を持ち、安心できないという状況が、演じる人間に与えられている。僕らをサポートしてくださるスタッフの方たちも、どこか浮遊感の中にいる。確証なき確証みたいなところに向かっている感じがドラマに宿るんじゃないか」と語る。

　だからといって、手探りの演技になっているわけではない。「1、2話の終わりだったり、そこに対しては明確な地図があるので、そこへはしっかりと直進できる。心持ちというところでは、1話で演じた自分に対しても、疑心暗鬼になっていくような状況が発生するんじゃないかなという、今まで体感したこと無いような感覚がありますね」と、ジャンル分け不可能な新感覚ドラマに出演する心境を語った。

■東京オリンピック開幕日に放送スタートするめぐり合わせ

　本作での自身の立ち位置について「封印ではないですけど、しゃしゃり出すぎるのもよくない」としつつ、「一視聴者としてより魅力的な、深さのあるものになったらいいなという思いがある」と明かす。「制作陣とディスカッションしながら、より前例のないもの、その好奇心が沸き立つような方向に向かう時に、一演者ではあるが、意見する局面はある。主人公を演じる以上に、このプロジェクトが視聴者により興味深いものになるために自分ができることをしたい」と、主演として意識の高さが垣間見える。

　この作品は視聴者がどの目線で見るかによって、見方も変わってくるという。「（自身が演じる）漂着者をどう見るか。黒船がやってきた時の日本人として見るのか、それとも漂着した側で見るのか。人によって分かれる気がしていて、そこがこの作品の捉え方の大きな分かれ道」と本作の魅力を説明する。

　東京オリンピックが開幕する23日に本作の放送もスタート。「この作品だから、そこに“漂着”した意味もあるんじゃないかと思ってます」と、数奇なめぐり合わせに笑みを浮かべる。「さまざまなことがあったここ数年、どれだけ準備してもやってくる“まさか”に対して向き合っている日々だと思う。そういう意味では、コロナ禍において皆さん家にいても、どこか心が落ち着かない状況だと思う」と思いやる。

　「そんな心の一つの形じゃないですけど、それがヘミングウェイと呼ばれる男の一つの具現化した概念になったらいいなと思う」とし、「彼を見て『自分は何者なんだ』と、時代がツイストしている今の時代に重なって届いたらいいなと思います」と再び笑みを浮かべた。

金曜ナイトドラマ『漂着者』
7月23日スタート　毎週金曜 11：15〜深夜０：15（※一部地域を除く）
斎藤工、白石麻衣、野間口徹、戸塚純貴、リリー・フランキー（友情出演）、船越英一郎（特別出演）、生瀬勝久ほか