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劇団ひとりに学ぶ“通行手形”としての手堅さ 怒りと無縁の生き方

【REACTION】vol.3 劇団ひとり

 「怒られるうちが華」。芸歴26年の劇団ひとり(42)は身にしみてその言葉の重みを感じている。「怒られることがなくなると、怒ってくれるのは自分しかいなくなりますよね。例えば、僕が『仕事に遅刻しました』って言っても、たぶんもう怒られないと思うんですよ。陰口は言われると思うけど、表立っては『しょうがないですよ』ってなる。そこで『まぁーいいや』じゃなくて、自分自身に対してちゃんと怒れないと、また同じミスをする。怒られないっていうのは、実はデメリットかもしれないですね」。舞台では喜怒哀楽を自在に操っているが、実は“怒り”とはほぼ無縁の芸人人生を歩んできて、今の立ち位置を築き上げた。

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■ダチョウイズムを受け継ぐ男

 怒られた経験として唯一覚えているのは、20年以上前に当時組んでいたコンビ・スープレックス(※2000年解散)として初めて出た舞台後のこと。「ネタが終わった後、寺門ジモンさんが僕らのところに来てくれて『お、お、お前たち、もっと落ち着いてしゃべらないとダメだよ』って言われて、あんたに言われたくないと思いましたけどね(笑)。ジモンさんが見ても初舞台は慌てて見えていたんでしょう」。そんな自分がたまに怖くなる。「後輩思いのいい先輩たちはダメなところをちゃんと怒ってあげていますよね。瞬間的にキレることとは違って、やっぱりなんか説教とか教えみたいなニュアンスも入っているんじゃないかな。そういう意味では、誰も怒ってくれないということはオレのことをどうでもいいと思われているのかもしれないですね(苦笑)」。

 怒られることなく歩んできた裏には、所属事務所の雰囲気、お世話になってきた先輩・ダチョウ倶楽部の存在が大きかった。「僕は別に師匠がいるわけではないのですが、太田プロはすごく仲のいい事務所ですし、僕らをかわいがってくれた一番の先輩がダチョウさんでした。3人がああいう人たちで、当然説教をするような人たちじゃないですからね(笑)。そのイズムを受け継ぐというか、自然に僕も後輩に対して説教をしたりとかしないで、ダチョウさんにかわいがってもらったように、かわいがっているように思います」。そんな時に思い出すのが冒頭の言葉「怒ってくれるのは自分しかいない」。自分を律しながら、唯一無二の存在になった。

■「特にお笑いっていうものに関して、言えることはない」

 芸人という特殊な職業ゆえに“怒る”ことが難しいのだと笑みを浮かべる。「説教できるほど、まず自分の腕に自信がないから。例えば、後輩に『お前、ダメだよ。あそこの間は』って言っておいて、その後に自分がすごいスベったりするわけでしょう(笑)。その後輩から『お前、何さっきは偉そうに』と思われる可能性があるっていうくらい、不確定要素が強すぎるので『あいさつをしろ』とか『放送禁止用語は言うな』っていう誰もが知っていることなら言えるけど、特にお笑いっていうものに関して、言えることはないかもしれないな」。

 「考えすぎかもしれないですけど…」と前置きをしながら、こう続けた。「バラエティーの収録で『この人、この間怒っていたやつだ』ってなるのが嫌なんですよ。さっき、マネージャーさんに厳しく当たっていた人が、収録になった途端、おちゃらけていても笑えなくなっちゃうんですよ。だから、あんまりそういう顔を同業者に見せたくないですね。影で号泣していた人が、笑顔で頑張っていても笑えないんですよね。だから、僕は笑い以外の別の感情を見せたくないのかもしれないです」。

 そんなひとりが、ウッチャンナンチャン内村光良と女優の川口春奈がMCを務めるバラエティー特番『怒られ履歴書』(フジテレビ系 9日放送 後9:00)で“進行役”を任された。「人は怒られて成長し、怒られた経験が人格を作っていく」という点に注目し、人気タレントがどんな怒られ経験を通して、どうやって成長してきたのか、その怒られ履歴から人生をひもといていく。“怒り”とは無縁できたひとりにとって、新鮮な番組だった。

 「テレビだと、だいたいその人のポジティブな歴史を振り返っていく中、今回は“怒られ”という切り口なんですけど、怒られたことによってその人がどう変わったのかに注目していて、視聴者の方も、これを見て、実際に怒られる前に勉強になることがたくさんあります」。MCの内村と川口からは“やわらかさ”を感じたようで「2人ともすごく自然体で話しやすい雰囲気を作ってくださる。これが内村さんの魅力ですよね。『仏のテル』と呼ばれるだけあって、気の利いたコメント言えよっていう圧がないんですよね。自然に振ってくれるから、みんなリラックスしてしゃべることができる」。

 MCとしても活躍する機会があるからこそ、ゲストに圧をかけない進行のすごさを実感している。「僕はなるべく内村さんのようにやりたいですね。緊張感を持たせずにゲストのステキな表情を引き出すようにやりたい。でも、いかんせん、撮れ高を気にすることがあって、収録時間もあとわずか、ゲストに振れて2回か3回、あんまり無駄にしたくない(笑)。そんな時にどこかでいいのくれよっていう顔をしてしまっていることはあるかもしれない」。そんな時、ひとりは誰に話を振るのだろうか。

■「手堅いなと思えるタレントになりたい」

 「井森美幸さんですね(笑)。新しい顔ぶれも出てきている中で、何度も仕事をしたスタッフさんが、やっぱり井森さんにお金を払ってきてもらうっていうことは、手堅い仕事をしてほしいから来てもらうわけですよね。パネラーの席が4つか5つあったら、無駄な席は一つもないし、当然ですが、全部にお金を払っているわけですよ。みんな予算をやりくりしながら、細かく計算しながら、1個も外せない。その中で、やっぱり井森さんを呼ぼうということになるわけですよね」。

 小説家、映画監督、俳優など多彩なジャンルで活躍しているひとりが求める“理想のタレント像”が井森だ。「僕はそういう風になれたらいいなと思います。井森さんのように、手堅いなと思えるタレントになりたいなと思いますね。いわゆる、お笑い番組になったら、手堅さ以外のバクチみたいなのがほしくなるかもしれないけど、ゴールデンとかでやる番組だったら手堅さがほしいって、僕がプロデューサーだったら思いますね。『アイツ、面白いけど波があるな』っていうのは、やっぱり呼ぶのが怖いじゃないですか。だったら、ある程度堅い方がいい…あれ、これって何の取材でしたっけ(笑)」。

■劇団ひとり(42)。1994年にお笑いコンビ「スープレックス」を結成し、しばらく活動した後、2000年にピン芸人に転身。さまざまなキャラクターを演じるひとり芝居風のコントやすぐに涙を流す泣き芸など独特な空気感で人気に火がついた。バラエティー番組で活躍する一方、06年には『陰日向に咲く』で小説家デビューし、100万部を超えるベストセラーとなった。14年には映画『青天の霹靂』で監督デビュー、19年7月から9月まで放送されたテレビ朝日系の土曜ナイトドラマ『べしゃり暮らし』で初の連続ドラマ演出を手がけるなど、幅広い分野で才能を発揮している。


「REACTION」
人生は反応の連続。どういう局面で、どういう選択をするかによって、自らに返ってくる反応も変わってくる。さまざまな分野で活躍する人々の【REACTION】にスポットを当て、どういう道のりを経て現在にいたったのか、注目作が出来上がるまでの過程などを紹介していく。

関連写真

  • 怒りとは無縁の生き方をしてきたと語る劇団ひとり (C)ORICON NewS inc.
  • バラエティー特番『怒られ履歴書』に出演する劇団ひとり (C)ORICON NewS inc.
  • バラエティー特番『怒られ履歴書』に出演する劇団ひとり (C)ORICON NewS inc.

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