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昭和から令和へ 34年ぶり『ヤヌスの鏡』どう蘇る? 桜井日奈子「違和感はなかった」

 80年代に人気を博した大映ドラマの名作『ヤヌスの鏡』が34年ぶりに映像化され、FODオリジナル連続ドラマとして配信される。真面目で大人しい優等生が、凶悪な不良少女というまったく別の人格を持ってしまう……というストーリーで、学園モノの恋愛映画でヒロイン役が続いていた桜井日奈子(22)が主演。昭和に一世を風靡(ふうび)したドラマが、令和にどうリメイクされるのか? 全8話の撮影を終えた桜井に聞いた。

FODオリジナル連続ドラマ『ヤヌスの鏡』で優等生ヒロミ&別人格の不良少女ユミを演じる桜井日奈子 (C)ORICON NewS inc.

FODオリジナル連続ドラマ『ヤヌスの鏡』で優等生ヒロミ&別人格の不良少女ユミを演じる桜井日奈子 (C)ORICON NewS inc.

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 大映ドラマとは、映画会社の大映から派生した大映テレビが手掛けた作品で、60年代より宇津井健主演の『ザ・ガードマン』、岡崎友紀主演の『おくさまは18歳』、山口百恵主演の『赤いシリーズ』など、ドラマ史に残る名作を数多く生み出してきた。

 独自の色合いが強まったのは80年代。『スチュワーデス物語』、『不良少女と呼ばれて』、『スクール☆ウォーズ』などが代表作で、波乱に満ちた荒唐無稽なストーリー、過酷な運命や出生の秘密を背負う主人公といった作風が際立っていた。セリフも熱く大仰で、『スチュワーデス物語』の「私はドジでのろまなカメです」や、『少女に何が起こったか』の「この薄汚いシンデレラめ!」などが語り継がれている。

 現代のドラマでは考えられない点は多いが、当時は普通だったわけでもなく、今でいうツッコミどころが満載。そこを“お約束”として視聴者は楽しんでいた。2000年代に『冬のソナタ』など韓流ドラマがブームになった際、記憶喪失ネタなどに大映ドラマとの類似性が指摘された。

 『ヤヌスの鏡』は宮脇明子氏のマンガが原作で、1985年にフジテレビでドラマ化。優等生のヒロミ、不良少女のユミという二つの人格を持ってしまう主人公の小沢裕美を、これがデビュー作の新人アイドル・杉浦幸が演じた。杉浦は今回のリメイクでは、オープニングの「古代ローマの神・ヤヌスは物事の内と外を同時に見ることができた」といったナレーションを担当している。

 22歳の桜井は大映ドラマを観たことは当然なく、主演が決まって『ヤヌスの鏡』の原作は読んだが、ドラマはあえて1話しか観てないという。

 「『大映ドラマとは別物にしたい』とうかがったので、意識しないようにしました。杉浦幸さんの裕美に引っ張られてしまうのも、ちょっと怖かったので」。大映ドラマを観ていた世代からは、当時のユミの「アタシについてくるとヤケドするよ」といったセリフの再現を望む声もあるが、桜井によれば「違和感があるセリフはなかった気がします」とのこと。

 「でも、監督は大映ドラマを観てらっしゃったそうで、強盗したユミが黒い手袋を歯で噛(か)んで引っ張って取る演出がありました。その時代の別のドラマでやっていたんですよね?」。それは『スチュワーデス物語』で片平なぎさが演じたヒロインの敵役が、義手から手袋を外すときの定番シーンだ。「『こんなことをしたら面白いんじゃない?』という演出は随所にありました。お札の束にチュッとしてみたり」。

 総じて、元の大映ドラマのアクの強さは薄められつつ、エッセンスは散りばめられている様子。裕美が時代錯誤的に厳格な祖母に折檻されるシーンは、今回もたびたび出てくる。

 「そこは一番印象に残っています。正座させられて、おばあさまに棒でバシンと叩かれて。痛くないようにタオルを巻いてましたけど、来るとわかっていて来るのは怖いんです。それに(祖母役の)国生さゆりさんの迫力がすさまじくて、本気で怯えて泣いてしまいました(笑)」。

 そもそも優等生と不良の二重人格という設定自体が、大映ドラマの中でも“らしさ”を感じさせる作品だった。

 「二重人格の映画をいろいろ観て参考にしました。声のトーンはヒロミとユミで使い分けています。気弱で意志をはっきり表現できないヒロミは私の地声だと違うので、意識して作りました。逆にユミは最初、低い声で作っていたんですけど、低すぎるとおどろおどろしちゃうので、途中から自分のナチュラルな声で演じました」。

 二つの人格のほかに、ユミがヒロミの振りをしている場面も。「難しいところでしたけど、私の中で2人を演じ分けるポイントは目でした。イメージで言うと、ヒロミのときは丸い目で、ユミのときはキッとした目。その目を見てもらって、今は本当はヒロミかユミか、わかったら面白いなと。監督もたぶん私の目を見て判断されて、『今はまだヒロミだね』といったやり取りがありました」。

 近年、若者のテレビ離れが著しく、地上波ドラマは大人をターゲットとしたものがますます増えた。キャスティング的にも10代くらいの若手がメインを張る作品が少なくなっている。かつて『ヤヌスの鏡』で新人の杉浦幸がいきなり主演したようなケースは、今はほぼない。

 そんな中、FODオリジナルドラマでは、期待の若手を積極的に主役に据えている。高橋ひかるの『パフェちっく!』、竹内愛紗の『高嶺と花』、大友花恋の『いつか、眠りにつく日』などがそうで、配信後に地上波フジテレビで深夜に放送する流れも作られた。将来性ある女優にチャンスを与え、ドラマ界を活性化する意味で貴重な試みだ。

 『ヤヌスの鏡』の桜井は「ギャップがある役柄だから、不良少女のイメージからかけ離れている方に」(清水一幸プロデューサー)と抜てきされた。女優として大きな財産を得たようだ。

 「ユミのような不良役は初めてで、自分のイメージを良い意味で壊せると思います。まぶしいほど自由奔放なユミを演じて、自分の殻がひとつ破れたようにも感じました。もっと人間くさい、ドロッとした感情を表現する役に挑戦したいと思うきっかけになりました」。

 また、FODでは『不倫食堂』や『夫のちんぽが入らない』といった“問題作”の映像化にも果敢に挑んでいる。大映ドラマのリメイクはその流れにも入るのかもしれない。荒唐無稽という点では、たまたまだがマンションでの交換殺人をモチーフにした『あなたの番です』(日本テレビ系)が話題になっている。

 大映ドラマ的なものが何周か回って、令和の時代に波を起こすのか? 次世代女優の一角を担う桜井日奈子によって、昭和を彩った『ヤヌスの鏡』がどう蘇ったか注目したい。(文・斉藤貴志)

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  • FODオリジナル連続ドラマ『ヤヌスの鏡』で優等生ヒロミ&別人格の不良少女ユミを演じる桜井日奈子 (C)ORICON NewS inc.
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