NHKで放送中の大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺（ばなし）〜』（毎週日曜　後8：00　総合ほか）は、30日放送の第25回「時代は変る」から第2部（後半）がスタート。中村勘九郎演じる金栗四三から主役のバトンを受け取るのは、田畑政治（たばた・まさじ）役の阿部サダヲ。後半の見どころを語った。

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　「金栗さんは陸上でしたが、田畑は水泳。前半は日本の体育・スポーツについて描かれましたが、後半はオリンピックが世界情勢や国内の五・一五事件や二・二六事件、そして戦争に翻ろうされていく。金栗さんや嘉納治五郎（役所広司）さんも引き続き登場しますし、ガラッと変わる感じでもないんですが、より現代と重ねて観ることができると思います。来年は東京オリンピックがありますし、第25回では大正天皇が亡くなって、新しい元号が発表されるまでのエピソードも描かれます」

　田畑は、1898（明治31）年、現在の浜松市内で生まれる（ちなみに、金栗は1891年生まれ）。造り酒屋の次男として裕福な家庭で育ち、幼少期から浜名湖で泳ぎ鍛えていたが、病に侵されたのをきっかけに、水泳選手への道を断念。水泳の指導と普及に力を注ぐようになる。こうした田畑のバックボーンは、金栗が主役の第1部の中で描かれてきた。

　初めて日本がオリンピックに参加したストックホルム大会から4年後のベルリン大会は第一次世界大戦により中止となり、8年後の1920年アントワープ大会で日本の競泳陣が初参加。田畑と同じ浜松出身の選手が日本泳法で出場したが、米国のクロール泳法に太刀打ちできず、惨敗に終わる。

　第2部は、1923（大正12年）年9月1日に発生した関東大震災の翌年、田畑が東京帝大（現・東京大学）から朝日新聞社に入社し、政治部に配属されるところからはじまる。

　「嘉納治五郎さんが、田畑のことを『彼は口がいだてんだな』というせりふがあって。若い頃は特に、『口がいだてん』に見えるように、考えるより先に口が動いている感じに見えればいいな、と思っています。田畑さんが、何を言っているかわからないくらい早口で、せっかちで歩くのも早くて、誰も読み取れないくらい字も汚かったというのは史実らしいんです。うそだろう？と思うようなこともほぼ史実で、アドリブではない、というのだけは言っておきたいです」

　史実として有名なのは、時の大蔵大臣の高橋是清からオリンピック出場のための助成金を取り付けることに成功した、ということ。

　「怖いもの知らずというか、情報がなかった強みというか。だからこそ強気でいられた。誰なのか知らずに歯向かっていったりする人だった。僕も何も知らずに芝居をはじめたので、近いところあるかもしれないな」。

　『いだてん』では既報のとおり、高橋是清役は先日亡くなった萩原健一さんが演じている。

　「存在感がすごかったです。今回、初めてお会いしたんですが、まさか最後になるとは思っていなかったですし、ご病気されていたことも知らなかったです。すごく熱心に台本と向き合われていて。宮藤官九郎さんの台本はト書きが少ないんですよ。そこに、萩原さんご自身でいろいろ書き込んでいて、動作の一つひとつの意味をすごく考えていらっしゃるんだな、と思いました」

　萩原さんは、第25回、第26回に登場した後、田畑がアムステルダム大会の結果報告にやってくるシーンに再登場する。

　「オランダのお土産の木靴を渡すのですが、その木靴で僕を叩くというアドリブを入れてきて。ものすごく痛かったんですけど（笑）、おかげでショーケンさんに最後に叩かれた俳優として箔が付きました。歌手から俳優に転向されて、自由にお芝居するイメージがあったのですが、芝居にこうしなきゃいけないというルールみたいなものがない感じに憧れもありましたし、共演できて本当によかったと思っています」