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難治てんかん”ドラべ症候群”の周知マンガに反響「病気を知ってもらう助けになれば」

 「ドラベ症候群(別名:乳児重症ミオクロニーてんかん(SMEI)」という乳幼児期に発症する“難治てんかん”をご存知だろうか。発症率は2〜4万人に1人、多くは1歳未満で発症し、けいれんの発作が長く続けば続くほど脳細胞が壊死していく。医師でさえ、知らない人もいる病気だという。発作が現れれば一刻も早く薬を使用しなければならないが、日本では発作を止めるための薬は病院でしか使用することができない現状がある。Twitterでは、この病気の周知をテーマとしたマンガが話題となり、子どもを持つ親、治験に携わる人など、多くの異なる立場の人から反響を呼んだ。マンガの投稿者であるかざりさんに、病気のことをマンガにしたきっかけや、今回のツイートで改めて気づいたことなどを聞いた。

ドラべ症候群について描かれたマンガ(画像提供:かざりさん @kazarigiri)

ドラべ症候群について描かれたマンガ(画像提供:かざりさん @kazarigiri)

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■「まずは病気の周知を」難解なテーマを“共感”呼ぶマンガに

 投稿者であるかざりさんは、友人の子どもがドラベ症候群だと聞き、「衝撃」だったという。それまでは、難病といってもなかなか自分ごと化することができず、はじめは「私にできることはない」と思った。しかし、てんかん発作を鎮静させる治療薬「ブコラム(口腔内投与ミダゾラム)」を、海外のように日本でも家庭や学校で使用できるようにするための署名キャンペーンがあることを知り、「まずは病気自体を知ってもらう必要がある」と自身のブログ記事で病気を周知、Twitterやブログで拡散することを思いついた。

――ご自身のブログで記事にしようと思ったきっかけは?

【かざりさん】Twitterのフォロワー数やブログのPVがそこそこあったので、「やり方次第では病気の周知と署名活動の後押しができるかもしれない」と思い、ドラベ症候群の子どもを持つ友人夫婦に「迷惑じゃなければ、取材させてほしい」と連絡しました。取材の帰り道に「ブログ記事だけじゃ絶対に広まらない。マンガならTwitterで拡散される可能性がある」と考えました。

――取材で一番印象に残ったことは?

【かざりさん】「友人夫婦が最初にお医者さんからもらった薬が、実はドラベ症候群においては“悪化させるケースもある薬”だった」ということです。素人からすると、お医者さんって病気のことを何でも知っていそう、薬は飲めば治る、というイメージがあったんです。でも、世の中にはお医者さんでも知らないほどの難病があって、薬で悪化することもあるんだ……と知って、とてもショックを受けました。

――マンガはマンガ家のニシハラハコさんが担当されていますね。どのような関係ですか?

【かざりさん】ハコさんは、もともとTwitterで相互フォローしている方で、私から「マンガ家を目指そうよ」と声をかけて、私がアドバイスをしながらマンガをつくる、ということを半年ほどやっていたんです。取材の帰り道に「友達の難病について周知を促すマンガを描きたい。作画をお願いしたい」と連絡して、私がプロットを書き、マンガにしてもらいました。

――マンガにする際に、ハコさんに伝えたことは?

【かざりさん】とにかく、「日常から離れた専門的な話」にはしたくありませんでした。目的は『共感』ということに定め、病気の解説マンガにはせず、あくまで私個人の出来事として描きたい、ということを伝えました。私が感じたことなら、嘘にならないと思ったので。


■SNSで賛否両論。「“治験の仕組み”と当事者の間に距離を感じた」

 当事者である友人夫婦への事実や表現についての確認を細かく行いながら、ハコさんと試行錯誤を重ねた末に4カ月をかけてマンガが完成。SNSに投稿すると、またたく間に拡散された。Twitterでは65000リツイートを超え(2019年4月24日現在)、「このような疾患があると初めて知りました」「この漫画で(ドラベ症候群について)よく知る事が出来ました」などのコメントが。

 マンガでは、てんかん発作を鎮静させる治療薬「ブコラム(口腔内投与ミダゾラム)」の治験が進むことで、日本でも家庭で薬を使えるようになる可能性についても触れている。一刻も早く病を抱える子どもたちに安心して暮らせる日が来てほしいと思う一方で、医療関係者からは「治験は基準を厳しくしないといけない理由がある」「勉強してから発信すべき。無責任」といった厳しい意見も飛び交った。

――ツイートには様々な意見が寄せられましたが、どんなことを感じましたか?

【かざりさん】Twitterでは、治験関係者の方々が「治験がいかに大変で時間がかかるか」「薬の副作用のリスク」などの“治験の仕組み”について教えてくださいました。一方で、ドラベ症候群の子どもを育てている方は、リスクを知った上で、ブコラムの承認が進まないこと、治験の条件的に協力することが物理的に難しいことに苦しんでいる。この間には、やはり距離があるように感じました。


■医療現場から見ると無茶かもしれない内容でも「素人が発信したことに意味があったと思えた」

 かざりさんは、SNSでの思わぬ反響を「本来は味方であるはずの治験関係の方に違和感を抱かせてしまったことは本当に申し訳ない」と前置きしたうえで、「全てが完璧な知識に基づいた状態で公開をしていたら、ここまで話題にしてもらえなかったのでは」と振り返る。今、SNSで発信することの意味をどう感じているのか。

――SNSで発信して、気づいたことは?

【かざりさん】すべてを調べてから発信していたら、内容が難しくなって多くの人に受け入れてもらいにくくなっていたでしょうし、治験がいかに難しいかを公開前に知ってしまったなら、その難しさを前に発信もできなかったんじゃないかと思います。無知な素人が、現場の人からしたら「無茶かもしれない内容」を発信したことで、とりあえずはお医者さんも知らないほどの難病があるということは伝わりました。

――結果的に、発信してよかったと思いますか?

【かざりさん】ブコラムの早期承認の状況を変えられなかったとしても、ただの一個人として発信してよかったと思っています。私は治験関係者でも、ドラベ症候群の当事者でもない外野の人間。でも、治験の重要性や困難さを伝えるよりも、「治験は大切だし、時間がかかるのは分かっているから、承認されるまで待とう」と、当事者ならばじっとしていられないその“気持ち”のほうに寄り添いたかったんです。「うちの子も発作を繰り返しているけれど診断名がついていないからもしかして……」という連絡もいただきました。今回のことがきっかけで、専門医の受診につながったかもしれません。

――今後、ご自身のアカウントから伝えていきたいことは?

【かざりさん】今回は「私の身に起こった、友人の子供が難病だという話」を発信しただけで、難病の子供たちを救っていきたい!といった大義は背負っていません。私の手の届く範囲にいる大事な友達が向き合っている問題に、私ができるかたちで協力しようと頑張ってみた、というだけ。なので、今後も普通の人として、普通の日常とその中で感じたことを発信していきます。
(文:高橋七重)

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