• ORICON MUSIC(オリコンミュージック)
  • ドラマ&映画(by オリコンニュース)
  • アニメ&ゲーム(by オリコンニュース)
  • eltha(エルザ by オリコンニュース)
ORICON NEWS

JASRAC、管理手数料の抜本的な見直しを3年計画でスタート「クリエイター還元の増加を目指す」

 JASRACによる管理手数料実施料率の変更が2月にアナウンスされた(図1)。一部メディアやネット上などでは、その<引き上げ>の部分ばかりが特に注目され、今回の変更の意図や、背景となる状況の変化にまで言及することはほとんどなかった。だが実は、変更後の手数料は、分配にこそ好影響を与えるよう入念にデザインされたものであり、3年計画の見直しの端緒でもある。JASRACで経理部長などを歴任してきた宮脇正弘氏に、見直しの狙いやロードマップなどを改めて直接うかがった。

【図1】JASRACが発表した変更される管理手数料実施料率(一部抜粋)

【図1】JASRACが発表した変更される管理手数料実施料率(一部抜粋)

写真ページを見る

【写真】その他の写真を見る


■そもそも分配額はどうやって決定しているのか

 2019年、設立から80周年を迎えるJASRACの業務の根幹は、いうまでもなく音楽著作物の使用料を徴収し、権利者へ分配すること。その際、利用区分ごとに細かく定められた一定の割合を管理手数料として控除した上で分配している。19年9月分配期から変更されるのは、その複数の区分ごとの管理手数料の実施料率だ。

「大前提として、私たち自身はそもそも組織として利益を追求する性質の団体ではありません。近年の徴収・分配の構造変化に対して、もちろん内部の合理化や効率化は順次行ってきているのですが、それだけでは吸収しきれない部分も明らかになってきた。そこで、利用分野ごとにより実態に即した実施料率に変更し、全体の経費と分配のバランスを整えたいというのが今回の見直しです。その最大の狙いは、当然ながら権利者への還元を少しでも増やすことにあります」(宮脇正弘氏)

■実態に即したバランスの良い実施料率を分野ごとに改めて設定

 一般の会社と異なり、JASRACは剰余金を内部留保しない(一般会計の収支は単年度決算)。収支差額金は翌年度に権利者へ分配されるが、すでに確定が見込まれる部分はあらかじめ年度内に分配するケースも多い。この3月期の分配でも、いくつかの分野でこの処理が行われたばかり。しかし、こうした処理自体が、従来の実施料率と実態との間のズレに起因するものともいえ、今回の変更はそのギャップを最小化する試みでもある。

「手数料は、基本的に経費÷分配で考えますが、全区分の平均では12%前後。実費として業務を行うための事業費・管理費がかかっているわけですが、費用対効果を含めてその構造を見極める分析をずっと続けてきました。結果、目安として今年度から21年度までの3年間をかけ、管理手数料の体系を見直す取り組みをスタートさせたということです。年度末に調整する必要がなるべく少なくなるよう、実態に即したバランスの良い実施料率を分野ごとに改めて設定した上で、3年内でもさらに柔軟な対応を行っていきます」

■「お支払いいただいた使用料を権利者の方々により多く還元するための変更」

 具体的には<放送等><業務用通信カラオケ>などが引き下げられ、<BGM><映画録音>などが引き上げられている。引き下げ区分は、徴収する使用料の規模が大きく、仮に1%の引き下げでも権利者への送金額を増加させる効果が期待できる。

「新たに設けた<大規模演奏会等>という区分では、入場料×定員数が5000万円を超える特に大規模なライブなどの場合に、手数料を25%から15%に引き下げます。<BGM>は12%から25%に引き上げますが、これはインターネット経由など利用形態の多様化により、個別事業者からの徴収のための必要経費がかさみ続けているため。料率の数字だけ見ると、ずいぶん乱暴に思われるかもしれませんが、実際の徴収金額と経費、権利者への還元という視点では、合理性の高いものになっているかと思います」

 実際、先に発表された2018年度の分配実績の数字によると、<放送等>の分配実績額は311億円あまり。対して<BGM>は6億円ほどとなっている。仮に、それぞれの管理手数料に今回の変更を適用すると、<放送等>では31億1000万円(10%)→27億9900万円(9%)で3億1000万円ほどの差額が発生し、<BGM>では7200万円(12%)→1億5000万円(25%)と7800万円の差額。差し引きで単純に2億3000万円ほどが権利者への分配に上乗せされることになる。こうした増減のバランスを入念に検討した上での変更であり、あくまで主目的はより多くの還元の確保にある(図2)

■著作権使用料は、クリエイターにとっては必要不可欠な創作のための原資

「徴収する使用料の規模が大きければ、たとえ1%の引き下げでも権利者への送金額に与えるプラスは大きくなります。逆に徴収規模が小さければ、全体に及ぼす影響は当然少なくなる。とはいえ、それらは音楽を利用する皆さまからお支払いいただく使用料そのものが増えたり減ったりするということではまったくありません。お預かりした使用料を権利者の方々により多く還元するための変更だということだけは、ご理解いただければ。一部作業の自動化を含め、管理業務全般の効率化と新技術の導入を含めたシステム整備、またさらなる経費削減も、引き続き継続していきます」

 著作権使用料は、クリエイターにとっては必要不可欠な創作のための原資のひとつ。その徴収と分配に特化したエージェントたるJASRACは、より精度の高い効率的な運営を目指し、着実にアップデートを続けている。

関連写真

  • 【図1】JASRACが発表した変更される管理手数料実施料率(一部抜粋)
  • 【図2】2018年度分配実績に今回の変更を適用したシミュレート
  • 宮脇正弘氏(日本音楽著作権協会 常務理事)

提供元:CONFIDENCE

オリコントピックス

あなたにおすすめの記事

 を検索