「最もチケット入手が困難な劇団」という枕言葉が完全に定着しつつあるTEAM NACS。そんな世間の評判にリーダーの森崎博之は「そんなことありませんよ」と照れ笑いを浮かべるが「でもありがたいです。3年に1度しか本公演をしないのに、みんな待っていてくれるんですから」とファンに感謝を述べる。今年で結成23年、「当時から本当になにも変わらない」と断言する関係性――。森崎のインタビューからTEAM NACSの強みを探る。
■TEAM NACSは「ものすごく依存しあっている」
森崎博之、安田顕、戸次重幸、大泉洋、音尾琢真。それぞれドラマや映画、舞台、バラエティー番組など、個人として活躍している実力派だが「どれだけパーソナルな部分で変遷があろうと、僕ら5人になると瞬時に大学時代に戻れるんです」と森崎は断言する。
「学生時代、男が集まるとくだらない下ネタとか言って、ゲラゲラ腹を抱えて笑ったりするじゃないですか。ソロ活動がどんなに忙しくても、顔を合わせるとその当時に戻るんです。一つ気のおける場所、オフと言っては怒られるかもしれませんが、里帰りしてきたところがTEAM NACSであり『ハナタレナックス』なんです」。
もう一つ、TEAM NACSの関係性を象徴するキーワードが「依存」だと語る。
「僕ら、お互いものすごく依存しあっているんです。もちろん昔は『しっかりと個が成長していかなければいけない』と思っていた時期もありましたが、20年以上もやっていると、もう家族なんですよね。家族って依存しあうじゃないですか。そういうチームに昇華できた。だから楽なんです。ファンの皆さんも、そんな僕らのありのままの存在を認めてくれている。そこが他のグループやチームと違うところなのかなと思うんです」。
「基本的にはすごく仲が良い」と森崎は語るが“家族”だからこそ、けんかもするし、仲が悪くなる時期もある。それが自然。でも関係性は壊れない。2016年に行われたTEAM NACS結成20周年を祝う感謝祭『TEAM NACS XX(twenty)』で森崎は、(最年少の)音尾が80歳に到達し、チーム全員が80代になったら解散しようと思っていると宣言した。ある意味で「永久TEAM NACS宣言」ともとれる発言だ。
「覚えています。まあ、そもそも最初が、僕と安田の卒業のために1回限りで結成したチームですから。解散から始まっているんですよね。そのときはまさか23年も続くとは思っていなかった。そんな前提があるんです。でも全員が80歳になるまでTEAM NACSがあったらすごいですよね。大きな目標になるなと思って掲げたんです。その意味で、一番の敵は健康。とにかくみんなに『血液検査だけはしろ』と言っています(笑)」。
もちろん80歳になるまで突っ走るためには、必要不可欠なのがファンの声援だ。ここにもメンバーが常に心掛けていることがあるという。
「やっぱりお客さんは絶対に裏切ることはできない。僕らってファンとものすごい信頼関係でつながっていると思うんです。3年に1回しか本公演がないにも関わらず、首を長くして待ってくれているというのは本当にありがたい。だからこそ、絶対に満足してもらえるものを届けたいという気持ちは強いんです。全員が80歳になったときの解散式でも『日本一チケットがとれない劇団』なんて言われていたらすごいですよね。僕らもしっかり上がっていかなければいけないんです」。
■メンバーの個性は宝「方向性の違いが僕らのウリ」
森崎は本公演の多くで作・演出を務める。強烈なメンバーたちの個性を損ねることなく、一つにまとめ上げるのは相当な苦労があるのではないだろうか。
「手前味噌で恐縮ですが、うちのメンバーは最高の素材ですよね。もちろん楽ではないですが、彼らの個性は宝。方向性の違いが僕らのウリ。それぞれが良いと思ったものを、一つにまとめずにやるのも、僕らの強みだと思うんです。それは“妥協”ととられるかもしれませんが、僕は妥協という言葉が嫌いじゃない。妥協って穏やかに協力することだと思っているんです。稽古やってもメチャクチャですよ(笑)。でも誰一人、お客さんはどうでもいいから、これをやりたいという奴はいない。だから無理にまとめる必要はないんです。みんながファンのために最大のパフォーマンスを見せる。それがTEAM NACSなんです」。
5月15・16日の大阪・フェスティバルホールを皮切りに、29日に北海道・札幌文化芸術劇場hitaru、6月3・4・5日に東京・Bunkamuraオーチャードホールで、TEAM NACSがこれまで公演してきた数々の舞台を彩った「音楽」をフィーチャーした『NACSYMPHONY2019「COLOR〜彩り続けた楽曲たちの調べ」』が開催される。TEAM NACSの舞台を彩ってきた楽曲を舞台映像とともに、音楽監修を務めるNAOTOのヴァイオリンとオーケストラの生演奏で届けるフィルムコンサート。森崎も“ゲスト”として参加し、舞台制作や楽曲誕生の秘話などを繰り広げる。
「私の扱いが“ゲスト”になっているのが気に入らないんですよ(笑)。あくまでTEAM NACSのイベント。出演させていただくなら、皆さんに楽しんでもらえるように、いろいろなアイデアを出して“ものすごく活躍している”と思ってもらえるようなものにしたいです。もちろん主役は舞台映像とNAOTOさん率いるオーケストラなのですが、私が出るからには、満足して帰ってもらえるようなものにします!」。
「絶対にファンを楽しませる」というTEAM NACSがもっとも大切にしていることを『NACSYMPHONY2019』でも身をもって体現しようとしている森崎。いまや全国にファンがいる人気劇団となっているが「北海道の劇団」と言われることに誇りを持っているという。どのメンバーからも“北海道愛”がひしひしと伝わる。
「北海道は厳しい場所なんです。人柄はとても温かいのですが、笑いに対してはシビア。そこで僕らはずっともまれてきた。だからこそ、他の地域でも臆せずパフォーマンスできる。北海道の方々に育ててもらったようなものなんです」。
ファンを愛し、ファンから愛されるTEAM NACS。彼らの快進撃は「永久に不滅」かもしれない。
(取材・文・撮影:磯部正和)
■TEAM NACSは「ものすごく依存しあっている」
森崎博之、安田顕、戸次重幸、大泉洋、音尾琢真。それぞれドラマや映画、舞台、バラエティー番組など、個人として活躍している実力派だが「どれだけパーソナルな部分で変遷があろうと、僕ら5人になると瞬時に大学時代に戻れるんです」と森崎は断言する。
「学生時代、男が集まるとくだらない下ネタとか言って、ゲラゲラ腹を抱えて笑ったりするじゃないですか。ソロ活動がどんなに忙しくても、顔を合わせるとその当時に戻るんです。一つ気のおける場所、オフと言っては怒られるかもしれませんが、里帰りしてきたところがTEAM NACSであり『ハナタレナックス』なんです」。
もう一つ、TEAM NACSの関係性を象徴するキーワードが「依存」だと語る。
「僕ら、お互いものすごく依存しあっているんです。もちろん昔は『しっかりと個が成長していかなければいけない』と思っていた時期もありましたが、20年以上もやっていると、もう家族なんですよね。家族って依存しあうじゃないですか。そういうチームに昇華できた。だから楽なんです。ファンの皆さんも、そんな僕らのありのままの存在を認めてくれている。そこが他のグループやチームと違うところなのかなと思うんです」。
「基本的にはすごく仲が良い」と森崎は語るが“家族”だからこそ、けんかもするし、仲が悪くなる時期もある。それが自然。でも関係性は壊れない。2016年に行われたTEAM NACS結成20周年を祝う感謝祭『TEAM NACS XX(twenty)』で森崎は、(最年少の)音尾が80歳に到達し、チーム全員が80代になったら解散しようと思っていると宣言した。ある意味で「永久TEAM NACS宣言」ともとれる発言だ。
「覚えています。まあ、そもそも最初が、僕と安田の卒業のために1回限りで結成したチームですから。解散から始まっているんですよね。そのときはまさか23年も続くとは思っていなかった。そんな前提があるんです。でも全員が80歳になるまでTEAM NACSがあったらすごいですよね。大きな目標になるなと思って掲げたんです。その意味で、一番の敵は健康。とにかくみんなに『血液検査だけはしろ』と言っています(笑)」。
もちろん80歳になるまで突っ走るためには、必要不可欠なのがファンの声援だ。ここにもメンバーが常に心掛けていることがあるという。
「やっぱりお客さんは絶対に裏切ることはできない。僕らってファンとものすごい信頼関係でつながっていると思うんです。3年に1回しか本公演がないにも関わらず、首を長くして待ってくれているというのは本当にありがたい。だからこそ、絶対に満足してもらえるものを届けたいという気持ちは強いんです。全員が80歳になったときの解散式でも『日本一チケットがとれない劇団』なんて言われていたらすごいですよね。僕らもしっかり上がっていかなければいけないんです」。
■メンバーの個性は宝「方向性の違いが僕らのウリ」
森崎は本公演の多くで作・演出を務める。強烈なメンバーたちの個性を損ねることなく、一つにまとめ上げるのは相当な苦労があるのではないだろうか。
「手前味噌で恐縮ですが、うちのメンバーは最高の素材ですよね。もちろん楽ではないですが、彼らの個性は宝。方向性の違いが僕らのウリ。それぞれが良いと思ったものを、一つにまとめずにやるのも、僕らの強みだと思うんです。それは“妥協”ととられるかもしれませんが、僕は妥協という言葉が嫌いじゃない。妥協って穏やかに協力することだと思っているんです。稽古やってもメチャクチャですよ(笑)。でも誰一人、お客さんはどうでもいいから、これをやりたいという奴はいない。だから無理にまとめる必要はないんです。みんながファンのために最大のパフォーマンスを見せる。それがTEAM NACSなんです」。
5月15・16日の大阪・フェスティバルホールを皮切りに、29日に北海道・札幌文化芸術劇場hitaru、6月3・4・5日に東京・Bunkamuraオーチャードホールで、TEAM NACSがこれまで公演してきた数々の舞台を彩った「音楽」をフィーチャーした『NACSYMPHONY2019「COLOR〜彩り続けた楽曲たちの調べ」』が開催される。TEAM NACSの舞台を彩ってきた楽曲を舞台映像とともに、音楽監修を務めるNAOTOのヴァイオリンとオーケストラの生演奏で届けるフィルムコンサート。森崎も“ゲスト”として参加し、舞台制作や楽曲誕生の秘話などを繰り広げる。
「私の扱いが“ゲスト”になっているのが気に入らないんですよ(笑)。あくまでTEAM NACSのイベント。出演させていただくなら、皆さんに楽しんでもらえるように、いろいろなアイデアを出して“ものすごく活躍している”と思ってもらえるようなものにしたいです。もちろん主役は舞台映像とNAOTOさん率いるオーケストラなのですが、私が出るからには、満足して帰ってもらえるようなものにします!」。
「絶対にファンを楽しませる」というTEAM NACSがもっとも大切にしていることを『NACSYMPHONY2019』でも身をもって体現しようとしている森崎。いまや全国にファンがいる人気劇団となっているが「北海道の劇団」と言われることに誇りを持っているという。どのメンバーからも“北海道愛”がひしひしと伝わる。
「北海道は厳しい場所なんです。人柄はとても温かいのですが、笑いに対してはシビア。そこで僕らはずっともまれてきた。だからこそ、他の地域でも臆せずパフォーマンスできる。北海道の方々に育ててもらったようなものなんです」。
ファンを愛し、ファンから愛されるTEAM NACS。彼らの快進撃は「永久に不滅」かもしれない。
(取材・文・撮影:磯部正和)
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2019/04/01