ワタナベエンターテインメントが、今年4月に「渡辺ミュージカル芸術学院」を開校する。ミュージカル俳優の育成では、宝塚歌劇団と劇団四季が数多くのスターを輩出。日本のミュージカル市場を下支えする役割を担ってきたが、そこに新たな育成機関が誕生することで何が変わるのか? 同社代表取締役社長・渡辺ミキ氏にその狙いを聞いた。
■歌って踊ることと、ナチュラルな演技を共存させられる俳優を育てる
18年9月に発表された「2018ライブ・エンタテインメント白書」(ライブ・エンタテインメント調査委員会発行)によれば、17年は国内ミュージカル公演が「1公演当たりの動員数」で前年比2.0%増の739万人、「市場規模」は同8.2%増の603億円と、大きな成長を見せている。しかしそれ以上に、映画・舞台でのミュージカル人気は今や世界規模で広がっており、欧米のみならず韓国でも優れた作品が数多く作られているという。
「ミュージカルは演じる人物が歌・ダンスをするので、本来ナチュラルではないし、そこでは昇華された表現が成立しなければなりません。今ここで起きているドラマと地続きで、歌い出したり踊り出したりしても奇異に映らないもの。欧米のミュージカル俳優のメソッドに習い、日本独自の表現も加味しながら、グローバルスタンダードな作品を作るための人材教育が日本でも必要だと考え、3年間の準備を経て開校することになりました」
渡辺ミキ社長がそう語る理由を聞くと、ミュージカルという芸術の奥深さも自然と理解できる。
「ミュージカル俳優には、歌とダンスのテクニックが必須。そこには音程やリズムといった、ある種の“型”を覚えなければなりません。しかしその一方で、演技における嘘のない人物造形というものは、型では作れません。あるレベルの俳優になれば、この2つは対立するものではないとわかるのですが、最初は自己矛盾を感じてしまうことがあります」
そうした懸念を払しょくし、「歌って踊ることと、ナチュラルな演技を共存させられる俳優を育てる仕組みが作りたかった」という渡辺社長の意志が、このミュージカル芸術学院設立に結実したのだ。
■歌と芝居では、人のなかで感動が伝わる経路が違う
自己矛盾に陥らないように、1人ひとりの生徒にカルテを作り、関わる先生同士がその子の長所や弱点、成長度合いを確認しながら育てる。
「ダンスは胸式呼吸で歌は腹式呼吸。それぞれの先生が教えていくと、そこでもう矛盾が生まれるのですが、それらを乗り越えるような教育を行っていく」(渡辺社長)という。
では、そうした教育の先に見据える、エンタテインメント業界の未来とはどんな世界なのだろうか。
「私がそもそもミュージカルに関わりたいと思ったのは、物語と音楽は人に与える影響が違っていて、どちらにも興味があったからです。音楽は極めてエモーショナルでダイレクトに届く一方、物語は人の思考のなかで感動する。この2つが掛け算になっているのがミュージカルという芸術。言葉だけではなく、音の力も利用することで、感動が伝わりやすくなると思ったからですが、今まさにエンタテインメントは、音楽の使われ方が変化しているように感じています。もしかしたら、この先“ミュージカル”というジャンルの定義も広がって、その言い方が正しいのか? と思う時代が来るかもしれません。ただ、そうした時代になっても、やっぱり人物造形を表す演技が表現の核であることは変わらない。それは、この学校に関わって下さっている栗山民也先生や前田清実先生など皆さんおっしゃるので、間違いないだろうと思います」
ミュージカルの定義が変わるかもしれない時代を視野に入れながらの船出となる「渡辺ミュージカル芸術学院」。ここからどんな期待の若手ミュージカルスターが巣立っていくのか。期待を持って見守っていきたい。
■歌って踊ることと、ナチュラルな演技を共存させられる俳優を育てる
18年9月に発表された「2018ライブ・エンタテインメント白書」(ライブ・エンタテインメント調査委員会発行)によれば、17年は国内ミュージカル公演が「1公演当たりの動員数」で前年比2.0%増の739万人、「市場規模」は同8.2%増の603億円と、大きな成長を見せている。しかしそれ以上に、映画・舞台でのミュージカル人気は今や世界規模で広がっており、欧米のみならず韓国でも優れた作品が数多く作られているという。
渡辺ミキ社長がそう語る理由を聞くと、ミュージカルという芸術の奥深さも自然と理解できる。
「ミュージカル俳優には、歌とダンスのテクニックが必須。そこには音程やリズムといった、ある種の“型”を覚えなければなりません。しかしその一方で、演技における嘘のない人物造形というものは、型では作れません。あるレベルの俳優になれば、この2つは対立するものではないとわかるのですが、最初は自己矛盾を感じてしまうことがあります」
そうした懸念を払しょくし、「歌って踊ることと、ナチュラルな演技を共存させられる俳優を育てる仕組みが作りたかった」という渡辺社長の意志が、このミュージカル芸術学院設立に結実したのだ。
■歌と芝居では、人のなかで感動が伝わる経路が違う
自己矛盾に陥らないように、1人ひとりの生徒にカルテを作り、関わる先生同士がその子の長所や弱点、成長度合いを確認しながら育てる。
「ダンスは胸式呼吸で歌は腹式呼吸。それぞれの先生が教えていくと、そこでもう矛盾が生まれるのですが、それらを乗り越えるような教育を行っていく」(渡辺社長)という。
では、そうした教育の先に見据える、エンタテインメント業界の未来とはどんな世界なのだろうか。
「私がそもそもミュージカルに関わりたいと思ったのは、物語と音楽は人に与える影響が違っていて、どちらにも興味があったからです。音楽は極めてエモーショナルでダイレクトに届く一方、物語は人の思考のなかで感動する。この2つが掛け算になっているのがミュージカルという芸術。言葉だけではなく、音の力も利用することで、感動が伝わりやすくなると思ったからですが、今まさにエンタテインメントは、音楽の使われ方が変化しているように感じています。もしかしたら、この先“ミュージカル”というジャンルの定義も広がって、その言い方が正しいのか? と思う時代が来るかもしれません。ただ、そうした時代になっても、やっぱり人物造形を表す演技が表現の核であることは変わらない。それは、この学校に関わって下さっている栗山民也先生や前田清実先生など皆さんおっしゃるので、間違いないだろうと思います」
ミュージカルの定義が変わるかもしれない時代を視野に入れながらの船出となる「渡辺ミュージカル芸術学院」。ここからどんな期待の若手ミュージカルスターが巣立っていくのか。期待を持って見守っていきたい。
2019/01/19