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『ギャラクシー賞』受賞作品に見る「放送」を取り巻く現況

 5月31日に都内で放送批評懇談会『第55回ギャラクシー賞授賞式』が開催された。「ギャラクシー賞」は優れたテレビ・ラジオ番組、放送文化に貢献した個人・団体を顕彰する目的で1963年に創設され、今年で55回目。今年の授賞式の司会は、フリーアナウンサーの久米宏小宮悦子が務めた。ここ数年、毎年のように授賞式の取材に行っていたが、今回は久米の歯に衣着せぬ進行ぶりもあってか、「放送」を取り巻く現況を俯瞰する良い機会となった。

倉本聰氏、ギャラクシー賞授賞式に車椅子で登壇「来週、手術」 (18年05月31日)


 会場が暗転し、授賞式がはじまると、最初にできてきたのは司会の久米と小宮だった。来場者の多くにとってはサプライズで、一瞬、ザワザワっとした。「2人が並んで仕事するのは20年ぶりになります。おばけが出てきたんじゃないかと思わないでください」(久米)と自虐的に言っていたが、『ニュースステーション』が始まったのは1985年10月。2004年3月に終了して14年以上経つ(小宮は1998年3月に降板)。同番組は、テレビ朝日の“ステーション”ブランドの先駆けでもあり、現在も放送中の『ミュージックステーション』(1986年10月〜)、『報道ステーション』(2004年4月〜)、昨年9月に16年の歴史に幕を下ろした『SmaSTATION!!』も。

 今回の『ギャラクシー賞』では、『SmaSTATION!!』でMCを務めた元SMAP香取慎吾稲垣吾郎草なぎ剛の3人が出演し、昨年11月2日からインターネット「AbemaTV」で生配信された『72時間ホンネテレビ』が「フロンティア賞」を受賞した。「テレビとネットの架橋するインターネットテレビの持つ可能性を強く印象づけ、テレビの達人である3人(稲垣、草なぎ、香取)が、ネットの初心者として多彩な企画を通じてSNSの使い方を会得していくプロセス自体が、テレビとネットの融合を示す画期的な番組」(テレビ部門・出田幸彦委員長)と評価された。

 「フロンティア賞」はネットやスマートフォンなどの普及によってメディアをめぐる環境が変化してきたことに伴い、2015年度よりテレビ部門の中に創設された賞で、15年は民放テレビ番組の見逃し配信をする「TVer」、16年はNetflixオリジナルドラマ『火花』(YDクリエイション)が受賞している。

 「通信(インターネット)と放送の融合とコンテンツ産業の強化」を目的に、放送規制改革を巡る動きがある中、AbemaTV代表取締役・藤田晋氏(サイバーエージェント代表取締役社長)が受賞スピーチで「ギャラクシー賞、すごい賞というのはなんとなくわかっていたんですけど、我々はインターネット業界出身でAbemaTVもはじまって2年なので、最初ピンとこなかったんですが、周りからも『おめでとう』、『すごいね』と言われて。この賞に恥じないように、頑張っていきたいと思います」と語るのを聞いて、薄ら寒い気持ちになった。

 『ギャラクシー賞』は「CM」「ラジオ」「報道活動」「テレビ」の4つの部門があり、部門ごとに入賞作品(ノミネート)の中から大賞・優秀賞・選奨を選定。「CM部門」では、従来のテレビCMだけでなく、ラジオCMも対象に加え、ラジオCMだけで131本もの応募があった。テレビCMは190本で、前年をわずかに5本上回る応募にとどまったが、結果的に321本から13本がノミネートされ、大賞1本、優秀賞3本、選奨9本を決めるという審査選考は激戦だったという。

 大賞はテレビCM「表情プロジェクト」シリーズ(資生堂ジャパン)だったが、優秀賞の一つにラジオCM「金鳥少年2017シリーズ」(大日本防虫菊)が選ばれた。テレビか、ネットか、と言っている一方で、映像のない点と制作費にハンデがあるラジオCMが「映像なしでもクリエイティブ力、制作力次第で堂々と戦えることを証明し、その存在感を示した」(CM部門・稗田政憲委員長)ことは、今の時代、画期的と言えるかもしれない。

 ラジオ部門で大賞に選ばれたのは、CBCラジオ『最期への覚悟』。超高齢化社会を迎え、独居世帯も増える今、国も地域も個人も試行錯誤する終末医療の課題に真っ向から挑み、奮闘する一人の女性医師の日常を丁寧に取材した作品。授賞式でトロフィーを受け取ったディレクターの菅野光太郎氏は「(取材対象の医師に)テレビは嫌だけどラジオならいいよ」と密着取材を快諾してもらったことを明かしていた。

 ラジオ部門では優秀賞に選ばれた静岡放送『幸せのカタチ〜本当の親子 本物の親子〜』(里親制度をテーマに里親たちの苦労や悩みのリアルな声を取材した番組)でもインタビューを担当した原田亜弥子アナウンサーが「ラジオだからこそ深い話をしてくださった」と語っていた。誰でもスマホで動画が気軽に撮れる時代である。久米も「住宅の内部や本人の顔がラジオには映らないので、プライバシーも守られるし、本当にラジオ向きの企画だと思う」といい、原田アナの丁寧な取材ぶりをほめていた。

 報道活動部門の大賞に選ばれたのは、名古屋テレビ放送『変わる自衛隊 地方から伝えた一連の報道』。2014年に政府が集団的自衛権を閣議決定したのをきっかけに、「自衛隊はどう変わるのか」という視点で継続取材したもの。一連の取材の中で、青函航路に使われていた民間のフェリーが、自衛隊の運搬船として隊員や戦車を運び、運航のため民間の船員を予備自衛官として活用する新たな制度も作られていることなど、いつの間にか民間人と戦争との距離がどんどん近くなっている、そんな実態を浮き彫りにした。

 テレビ部門の大賞には、毎日放送『映像’17 教育と愛国〜教科書でいま何が起きているのか』が選ばれた。道徳や歴史の教科書の採用を巡り、教育現場に圧力がかかっている現状の背景に何があるのか。歴史教科書の執筆者、従軍慰安婦の記述がある教科書を採択した中学校に抗議のハガキを送った政治家など、教科書出版社や学校関係者、野党時代の安倍晋三首相や沖縄戦の経験者にも光を当てる幅広い取材を行い、これからの教科書に携わる人々の一面を浮かび上がらせた。「本作品のように、忖度のない報道番組が必要」と高く評価された。

 『ギャラクシー賞』は作り手側に贈られる賞だが、「放送」は誰のためにあるのかを考えれば、視聴者こそ他人事ではない。



関連写真

  • 高橋一生にインタビューする久米宏(左) (C)ORICON NewS inc.
  • 受賞者にインタビューする久米宏(左) (C)ORICON NewS inc.
  • 『第55回ギャラクシー賞授賞式』で司会進行を努めた(左から)小宮悦子、久米宏 (C)ORICON NewS inc.
  • (左から)藤田晋社長、香取慎吾 (C)ORICON NewS inc.
  • 『第55回ギャラクシー賞授賞式』に出席した高橋一生 (C)ORICON NewS inc.
  • 『第55回ギャラクシー賞授賞式』に出席した(左から)藤田社長、香取慎吾、小宮悦子 (C)ORICON NewS inc.
  • 祝福に駆けつけた風吹ジュン(左)、清野菜名(右) (C)ORICON NewS inc.
  • 『第55回ギャラクシー賞授賞式』に出席した倉本聰 (C)ORICON NewS inc.
  • 『第55回ギャラクシー賞授賞式』で司会進行を努めた小宮悦子 (C)ORICON NewS inc.
  • 『第55回ギャラクシー賞授賞式』で司会進行を努めた久米宏 (C)ORICON NewS inc.
  • 『第55回ギャラクシー賞授賞式』で司会進行を努めた(左から)小宮悦子、久米宏 (C)ORICON NewS inc.
  • 『第55回ギャラクシー賞授賞式』に出席した倉本聰 (C)ORICON NewS inc.
  • 『第55回ギャラクシー賞授賞式』に出席した役所広司(右) (C)ORICON NewS inc.
  • 『第55回ギャラクシー賞授賞式』で司会進行を努めた(左から)小宮悦子、久米宏 (C)ORICON NewS inc.

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