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新春特別対談 NHK&フジの名物テレビマンが語る“ネタ番組”の現在と未来

 「笑う門には福来る」という言葉があるように、新年から初笑いでにぎやかにいきたいもの。そんなニーズに応えるように放送されてきた『爆笑ヒットパレード』(フジテレビ系)が、今年で50周年を迎えた。NHKも新年は各地の演芸場と中継をつなぎ、若手からベテランまでのネタを堪能できる番組を提供してきた。一方で、レギュラー放送のネタ番組やコント番組が減少しているという現実もある。そこで、今回は『オンバト+』や『松本人志のコントMHK』などを手がけた松井修平氏(NHK)と『ヒットパレード』の演出・チーフプロデューサー・藪木健太郎氏(フジテレビ)による“局の垣根を超えた対談”を行い、ネタ番組の今とこれからについて語ってもらった。

ネタ番組の現在と未来について意見を交わしたNHKの松井修平氏とフジテレビの藪木健太郎氏 (C)ORICON NewS inc.

ネタ番組の現在と未来について意見を交わしたNHKの松井修平氏とフジテレビの藪木健太郎氏 (C)ORICON NewS inc.

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■ネタ番組はなぜ減った? 視聴率との狭間で抱えるジレンマ

 2000年代前半には『爆笑オンエアバトル』『M-1グランプリ』『エンタの神様』『爆笑レッドカーペット』など、ネタ番組が活況。そこでネタが評価され、その後は『アメトーーク!』をはじめとした、ひな壇に芸人が並ぶ「ひな壇番組」に出演し、やがては冠番組を…という流れが売れっ子芸人定番のルートになっていた。ところが、若手がブレイクするための入口であったはずのネタ番組がこのところ激減。その要因として“芸人のマルチ化”と“視聴者の保守化”があるという。

藪木「15〜20年前は、テレビの人というか“タレントさん”という(肩書きの)方々がいて、クイズ番組に出演したり、MCをやったりしていました。それが2010年代になると、MCも含めてほとんどが芸人さんという状況になって、『芸人バラエティー』が飽和状態になってしまった。それに加えて、視聴者の方々が出ている人に対して信頼感を抱かないと、チャンネルを合わせてくれなくなりました。例えば『ENGEIグランドスラム』では『この人たちを集めたら、絶対面白い』という方々がラインナップされていて、その信頼感が数字(視聴率)へとつながっていると感じているんですが、まだ見ぬ新しい芸人さんと出会いましょうというネタ番組となると、途端に数字が…。だから、若い芸人さんを開拓したいけど、番組としての存在感も出したい、ジレンマですね」

松井「当たり前ですが、芸人さんって面白い人たちなんですよ。だから、私生活も面白くて『ひな壇』もあれだけ活況になっていき、それで彼らの話す“あるある話”とかが爆笑のまま流れていく。そうすると、ネタを見なくてもこの人たち面白いんだということになって、ネタ番組は観なくてもいいと視聴者は思うのかもしれないですね。だけど、ネタ番組は若手の芸人さんが“新しい笑い”を発明する場だと思うので、ここは踏ん張って、新しい方々を掘り起こしていかないといけないなと思います」

■レギュラーのコント番組を…NHKがフジに異例のお願い

 ネタ番組同様に、厳しい状況にあるのがコント番組。大がかりなセットを作るコスト、ひとつのコントにかける時間などの理由から、民放では二の足を踏んでしまい、レギュラーで放送されているものはめっきり減った。この流れは『オレたちひょうきん族』や『夢で逢えたら』といったコント番組で一時代を築いてきたフジテレビにも止められないようだ。

藪木「コントは、お金と時間がかかる。4〜5分のコントを作るのに、2〜3時間くらいかかるんです。それを60分(番組で)正味48分作ろうとすると、最低でも週2回はコントを撮って、セットを何個も用意しないといけない。だから、今のソフトとしては作りづらくなっていますね。実はコントの編集が一番簡単なんです。コントは台本でほぼ完成しているので、撮影した後ちょっと間を詰めるだけで、完成するものなんですけど、若手ディレクターの中には編集でどうにかしようとするスタッフが増えている気がします。それは僕らにはない文化でした。その辺りを伝えていかなければと思っているんですけど、伝える場所がない。正直、悔しいです」

 一方、『サラリーマンNEO』(2006〜11年)のヒット以降、途切れることなくコント番組を打ち出しているNHK。『松本人志のコントMHK』のダウンタウン・松本人志、『LIFE!』のウッチャンナンチャン内村光良、そして『となりのシムラ』の志村けんといったようにラインナップも豪華だ。隣のスタジオで連続テレビ小説や大河ドラマを撮影しており、セットを使い回すことができる点やじっくりと時間をかけて作ることができる環境などが後押しする。『MHK』などでコント番組に関わってきた松井氏だが、自身の歩みに「フジテレビのコント番組」が影響を与えていたと振り返る。

松井「ドリフ、ひょうきん族、そして『夢で逢えたら』ではダウンタウン、ウッチャンナンチャン、清水ミチコさん、野沢直子さんを観て育ってきました。当時、フジテレビさんが作っていたコントは面白くて斬新で、実験的でした。これまで純然たるコント番組をレギュラーでやってこられてきたのに、それが今は途絶えちゃっている。僕はコントをやり続けるフジテレビさんであってほしい。しかも、若い人が出る番組を深夜でもいいので、ずっとやり続けてほしい。きょうは『コント番組は、フジテレビさんが頑張らないといけないんですよ』ということだけは言いたかったんです(笑)」

藪木「うん、本当に頑張らないといけない(苦笑)。コントは、美術や技術のスタッフに転換の早さ、対応の早さが求められる。それは継承されるものだと思うので、定期的にやっているのとしばらくやっていないのとでは、ずいぶん変わってくる。頑張らないといけないんですよね…」

■ネットとの連携を模索 テレビマンが見据えるネタ番組の未来

 ネタ番組、コント番組が作りにくい昨今だが、決して“お笑いブーム”の火が消えたわけではない。藪木氏が「ビートたけしさん、おぎやはぎさんなどは『俺らの時は(芸人の)数が少なかったから、よかった。今の時代はみんな面白いし、レベルが上がっているから無理』と言っていますね」と若手のレベルの高さを力説すれば、松井氏も同調する。「ネットのおかげだと思うんですけど、若手の作る漫才の質は非常に高い。80年代の『THE MANZAI』で、たけしさんとかが出てきた時はそれこそブームだったと思いますが、そこから引き継いで、今では小学生も日常でボケ合いをしているので、笑いが生活のスタンダードになっている。ブームではなくて、大河になっていると思います」。これまで脅威とされてきた“ネット”の存在が、これからのネタ番組のカギを握るという。

藪木「僕もネットはよく見る方ですが、これからはテレビという機械の画面で観ることより、番組というソフトとしてネットなどでも見てもらって、その上で稼げるようにならないとダメだなと思います。ネットで見られているものってテレビを切り取ったものも多いので、それが上手く経済活動に回っていくようなシステムをつくることができればいいですね。だから、何回も見るに耐えるものは作っていかないといけないなと思っていて、その点ではコント番組やネタ番組などはぴったりなのかなと思っています」

松井「先日、ヨーロッパのテレビの見本市に行ってきて、そこで討論会があったんですが、全世界的に若い人たちはテレビを見ずにスマホの縦型(での動画視聴)で済ませているそうです。10代の半分以上が3時間スマホを見ているという現状です。だから、NHKでもスマホを見つつ、テレビに戻ってきてくれるような企画を考えています。特にコントは(1本あたり)5分くらいなので、スマホで見るのはぴったりだと思っています」

 レベルの高い若手芸人がいて、それを視聴者に届けたいという腐心する作り手の熱意がある限り、ネタ番組の火は消えない。

YouTube公式チャンネル「オリコン芸能ニュース」

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  • ネタ番組の現在と未来について意見を交わしたNHKの松井修平氏とフジテレビの藪木健太郎氏 (C)ORICON NewS inc.
  • NHKの松井修平氏が身を乗り出してフジテレビの藪木健太郎氏に異例のお願い (C)ORICON NewS inc.
  • ネタ番組の現在と未来について意見を交わしたNHKの松井修平氏とフジテレビの藪木健太郎氏 (C)ORICON NewS inc.

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