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SMAPベストアルバム 投票結果から見えたファンの“祈り”と“逆襲”

 様々な角度からSMAPに迫る連載第11弾。今回は、11月3日に発表された、ベストアルバム『SMAP 25 YEARS』について語りたい。多くのメディアでも報道されたように、ファン投票により収録曲が決定された本作。投票結果の1位は、誰もが知る「世界に一つだけの花」ではなく、アルバムにしか収録されていない「STAY」という曲。この曲は、メンバーにとってどんな意味を持つのか? そして投票結果に込められたファンの思いとは――。

ベストアルバム『SMAP 25 YEARS』は12月21日に発売。

ベストアルバム『SMAP 25 YEARS』は12月21日に発売。

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◆投票結果はまるでファンからの祈りのメッセージのよう

 SMAPの5人は、この投票結果を、どんな形で知ったのだろうか。このランキングに対して、どんな感想を持ったのだろうか。

 デビューから通算6枚目となるSMAPのベストアルバム『SMAP 25 YEARS』の収録曲が、テレビの情報番組やニュースを賑わせている。400曲以上あった候補曲の中から、ファンからのリクエストによって収録が決定した50曲。「BEST FRIEND」「FIVE RESPECT」「どうしても君がいい」「ありがとう」「A Song For Your Love」「華麗なる逆襲」「手を繋ごう」「どうか届きますように」……。ずらりと並んだそのタイトルを見るだけでも、まるでファンからの祈りのメッセージのようだ。

◆なぜあのとき「STAY」を歌ったのか? 彼らが歌に込めたものを信じて

 1位となったのは、2006年のアルバム『Pop Up!SMAP』の収録曲「STAY」。ファン以外には馴染みのない曲だと思われがちだが、実は、2011年にリリースされたアルバム『SMAP AID』でも、ファンからのリクエストによって、7位に選ばれた“隠れた名曲”である。テレビでは、『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)の歌のコーナー以外に、2014年の『武器はテレビ。SMAP×FNS 27時間テレビ』(同系)のノンストップライブと、2015年から2016年にかけての『CDTVスペシャル!年越しプレミアライブ 2015→2016』(TBS系)の生ライブでも披露されている。どちらも、中居正広の選曲だ。特に『CDTVスペシャル!』では、「Battery」や「オリジナル スマイル」といったシングル曲に混じって歌われたこともあり、歌詞のメッセージ性が際立っていた。

 <永遠なんて言わないからさ 5、60年 それだけでいい>と、ファンの前で、ライブで歌ったとき、それを観ていた誰もが、「デビュー25周年の幕開けにふさわしい曲」と思ったはずだ。だから、そのあとSMAPファンにとっては理不尽で不可解な報道がなされ、夏に年内解散が発表された時、ファンは、このシナリオがメンバーの意向ではないと直感した。なぜ中居は、年明けすぐの生放送ライブで「STAY」を選択したのか。なぜあのとき、木村拓哉が<どうか道の途中で 手を離そうとしないでよ>と歌ったあとに、中居がそれを受けて、<大事なのは続けること>と繋いだのか。5人で、<僕らずっと共に生きよう>と歌ったのか。彼らの口から真実が語られない今、信じられるのは、彼らが歌に込めたメッセージしかない。だから、SMAPの存続を願うファンは何となくではあるが予感していた。「STAY」が、ベストアルバムの1位になることを。この結果は、SMAPファンからSMAPへの、祈りでありメッセージなのだ。何があっても、私たちはSMAPの5人を信じ、愛し続けるというメッセージ。

◆歌番組は中居が、コンサートは香取が演出を担当

 ランキング上位に、一般には馴染みのない曲が並んだせいか、ニュースや情報番組、果ては『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)のような音楽番組で、『Pop Up!SMAP LIVE!思ったより飛んじゃいました!ツアー』での「STAY」の映像を目にすることができた(4日放送のMステでは、この日のゲストのKinKi Kidsが、ライブの映像が流れている最中に時々ワイプに映り込み、二人の真剣な眼差しが切なかった)。10年前の木村は、髪がとても長くて、反対に香取慎吾はシルバーの短髪で。スローテンポの曲なのに、ちゃんとドラマティックな振り付けがついていて、アルバム曲ならではの深い世界観は、シングル曲でのSMAPしか知らない人にとっては、新たな一面に出会うことになるのかもしれない。

 ところで、SMAPほど、テレビの企画でライブを披露しているグループは他にないのではないだろうか。『ザ・ベストテン』(TBS系)も『夜のヒットスタジオ』(フジテレビ系)も終了した、音楽番組冬の時代にデビューしたせいか、メンバーの中でも特に中居には、テレビの音楽番組に対する思い入れが強い。ちなみに、2014年の『27時間テレビ』生ライブのあとで中居に取材する機会があったのだが、そのとき彼は、このライブの演出は、衣装からセットリストに至るまで、すべて自分で担当したと話していた。オープニングで、全員がメガネをかけて登場して、途中でそれを外す演出がとにかくカッコ良かったことを伝えると、「その演出は前日に急に思い立って、急きょ、親しいスタイリストに20個以上の白縁メガネを用意させた」という。さすがは、デビューからずっと、SMAPのツアーを中心になって演出していただけのことはある。2008年から、ツアーの演出は香取が担当するようになっていたけれど、テレビの歌番組でライブを披露する際の演出担当は相変わらず中居だった。

 『27時間テレビ』生ライブがあったのと同じ年、香取が4回目の演出を担当したツアー『Mr.S-SAIKOU DE SAIKOU NO CONCERT TOUR-』は、本当に素晴らしい出来栄えだった。おそらく、SMAPのライブ史上最高に踊っていたと思う。香取が演出担当になった2008年のライブは、それまでの中居演出とは打って変わって、タイトル通り“アーティスティック”になり、正直、好き嫌いの分かれる感じはあった。それが、2年後にはエンタテインメント感をふんだんに盛り込み、どんどんライブが大胆に、遊び心を持って進化していった。だから、2016年のライブは、本当に本当に楽しみだった。

◆森の脱退、稲垣の復帰、5人旅 忘れられない節目の「BEST FRIEND」

 少し大げさな話になってしまうけれど、ランキングの結果を見ながら、人間にとって“音楽”って何なんだろうと考えた。芸術にしてもエンタテインメントにしても、音楽や絵画、文学との出会いが人の心を豊かにしてくれることはあっても、それがないと生きられないものではない。人は音楽がなくても、死なない。でも、音楽がない人生を想像すると、世界から一気に、彩りや煌めきが失われていく。私だって、SMAPの曲に支えられながら、でもSMAPの曲だけを聴いてきたわけじゃない。歌謡曲にも、J-POPにも、洋楽にも、クラシックにも、心を揺さぶられた曲はたくさんある。でも、SMAPのいない人生を想像したとき、とてつもない寂寥感のようなものが胸に押し寄せてくる。

 好きなミュージシャンの曲には、ファンなら誰でも思い入れはあるだろう。でも、SMAPは、アイドルとして、“音楽”以外のところでも自分をさらけ出してきた。傷も痛みも、挫折も失敗も、全部さらけ出して、その葛藤の数々を提供された曲を媒介にして、主にライブで表現してきた。しかも、25年間、少しも休むことなく、走り続けてきた。ランキング3位に選ばれた「BEST FRIEND」は、森且行がオートレーサーになるためにグループを脱退する前、最後の『スマスマ』でメンバーがボロボロ泣きながら歌った曲で、稲垣吾郎が活動自粛から復帰した2002年のツアーでも披露された。2013年の『スマスマ』の“5人旅”で、有馬温泉の旅館で5人でカラオケをしたときに、中居が泣きながら歌っていたことを覚えている人も多いだろう。

◆アルバムの最後の曲は……まだ“華麗なる逆襲”を諦めない

 SMAPの曲には、ドラマがありすぎる。「世界に一つだけの花」にしても、「夜空ノムコウ」にしても、「がんばりましょう」にしても、ある意味、人々の日常に寄り添いすぎる。歌なんか上手くなくても、振り付けがなかなか揃わなくても、草なぎ剛のギターがなかなか上達しなくても、それでも、SMAPの音楽のない日常なんて想像できない。勇気をくれる曲だった、グループの絆を感じさせてくれる曲だった「STAY」が、悲しい曲になってしまうことなんて、想像したくないのだ。

 SMAPのストーリーは、「Can’t Stop!! -LOVING-」、つまり“愛を止めない”という誓いから始まっている。今回のベストアルバムのランキングを見ていると、SMAPのファンもまた、彼らのプロデューサーとしての役割を果たしているのかもしれないと思う。というのも、3枚組のCDは年代別に並べられ、「Can’t Stop!! -LOVING-」から始まるアルバムは、椎名林檎作詞作曲の「華麗なる逆襲」で終わるからだ。SMAPのファンは、5人の“華麗なる逆襲”を、まだ諦めてはいない。
(文/菊地陽子)

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