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稲垣吾郎、最初にファンの前に立った 個性派SMAPのスーパーバランサー

 様々な角度からSMAPに迫る連載第8弾。前回は、常にその動向が注目され、バッシングも受けやすい木村拓哉について書いた。今回は、SMAPにおける“中間管理職”と呼ばれる稲垣吾郎について迫りたい。SMAPという個性派集団の中で、稲垣はいつもバランスの良い立ち位置にいるように見える。ある意味SMAPの要である稲垣は、解散発表後、5人の中で最初にファンの前に立った。

年内での解散が発表されたSMAP、12月21日にベストアルバムを発売する

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◆ファンに伝えた「頑張ります」 25周年に誰よりナチュラルな対応

 稲垣吾郎の安定感と面白さが、最近際立っている。

 10月8日に行われた映画『少女』の舞台挨拶や、それに伴うプロモーションでの雑誌のインタビューなど、稲垣の“いま”を目にする機会が増えた。年内解散が発表されて以来、ファンの前にSMAPのメンバーが姿を見せるのは、この舞台挨拶が初。湊かなえ原作らしい『少女』という作品が抱える人間の闇にちなんで、「最近感じた闇は?」と質問されると、「僕は基本的に闇ですから。部屋の中はロウソクだらけだし。占いの館みたいな(笑)」と、ミステリアスだと思われがちなパブリックイメージを利用して、笑いを取った。会場を去る時に、レポーターから「ファンのみなさんに一言お願いします」と声をかけられると足を止め、一言、「頑張ります」と答えた。

 その2日前には、自身のラジオ番組『STOP THE SMAP』(文化放送)で、デビュー25周年記念日である9月9日にSMAPファンがそれぞれに祝ったというハガキを読み、「これ、嬉しいですね」とコメントしている。25周年について、他のメンバーがあまり掘り下げない中、とてもナチュラルな対応をみせているのが他ならぬ稲垣だ。小池百合子東京都知事を迎えた『ビストロSMAP』(『SMAP×SMAP』フジテレビ系)でも、稲垣の父親と小池都知事との意外な交遊が明らかになったり、この期に及んでまだ新鮮なネタを提供できるなんて。でも、昔から稲垣吾郎という人は、意外性の宝庫だった。

◆SMAP随一の正統派ながらいじられキャラ、その裏の心の余裕

 いわゆる“正統派二枚目”ながら、SMAPいちの“いじられキャラ”。屋外のライブでは、「ドライヤーをかけている時間が長過ぎる!」とMCでからかわれるのはお約束だ。デビュー前にテレビ番組の企画でジェットコースターに乗ることになった時、一人、「乗りたくない!」と反抗して、「俺たちはアイドルなんだから何でもやらなきゃいけないんだよ!」と中居正広に頭を叩かれ、腹いせに持っていた鏡を地面に叩き付けたエピソードは、香取慎吾の大のお気に入りである。若かりし頃、メンバー全員で泊まったことがあるのは稲垣の実家だけ。団地の11階にあった稲垣家の風呂は、お湯の出が悪く、「みんなで順番にお風呂に入ろうってなったんだけど、いざ入ってみるとお湯が出ねーの。それで“お湯が出ねー”って、バンバン叩いてたら、ゴキブリがウジャウジャと……」という思い出も、何度となく中居の口から語られている。六本木で移動車に乗っているときに不良に絡まれ、ケンカになりかけた時、稲垣一人が移動車から降りなかった逸話は、のちに『SMAP☆がんばりますっ!!』(テレビ朝日系)で再現ドラマにもなった。全員で売られたケンカを買っていたら、この出来事はありきたりの武勇伝として語られるだけで、そんなに面白くなかったはずだ。他にも、木村拓哉が最初にサインを頼まれたのが稲垣の姉からだったことや、草なぎ剛が09年に芸能活動を自粛したときに高級鰻を差し入れて励ました話、年上の友達“ヒロくん”との関係を公開した『SMAP×SMAP』が高視聴率を記録したことなど、稲垣の“素顔”に絡むエピソードは、スーパースター集団SMAPの、いい意味での人間臭い部分が引き出されて、とても和む。

 SMAPは、仲良し売りはしてこなかったグループである。取材や撮影の時も、慣れ合いは一切なく、適度な緊張感のもとにテンポよく物事が進んでいく。その張りつめた感じがカッコ良かったことは以前にも触れたが、とはいえ稲垣の存在が、場の空気を和らげていたことは間違いない。一緒にSMAPの取材現場にいたライターは、撮影の合間のインタビューで机も用意されていない中、ノートにメモを取りたいのにICレコーダーを手で持たなければならなくなり困っていたとき、稲垣が、「僕が(レコーダーを)持ってましょうか?」と言ってくれたことに感激していた。忙しいはずなのに、稲垣の対応には常に余裕がある。学生時代、英文学の教授がユーモアを“余裕”と訳していたけれど、面白さという意味でも、心の余裕という意味でも、稲垣吾郎という人は、ユーモアの塊なのである。

◆“SMAPの魅力質量保存の法則”、変わらないアイドルの王道

 他にも、彼の余裕や安定を物語るものがある。それは、ビジュアルと歌と笑いに関してだ。化学の法則のひとつ“質量保存の法則”は、「化学変化の前と後で、物質の総質量は変化しない」ことを指すが、長くSMAPというグループを見ていると、美しさだったり、輝きだったり、ユーモアだったり、様々な場面で5人が常に補い合って、魅力の質量を保存しているのを感じる。ビジュアル面に限って言えば、中居や草なぎは、役柄に合わせて体重を落としたり、中居にいたっては、坊主頭になったこともあった。木村や香取は、芝居から離れている時は髪型で冒険することも少なくなかったし、木村の場合は日焼け、香取は体重の増減が気になったりもした。が、稲垣だけは、25年間常に安定のビジュアルをキープ。もっと言えば、他メンバーが役作りや趣味の流れで、アイドルらしからぬビジュアルになっているとき、稲垣はそのカッコ良さを強化しているようにも感じられた。

 一人一人の魅力もすごい。でも、5人集まると、その華やかさは最強になる。誰かが自分の魅力のボリュームを控えめにせざるをえないとき、稲垣が自身の魅力のボリュームを調整することで、SMAP自体の魅力を一定以上に保ち続けた。私は、これを密かに“SMAPの魅力質量保存の法則”と呼んでいた。この法則は、実はSMAPの歌唱についても当てはまる。歌があまり得意でないことを自覚している草なぎがいて、歌下手をネタにしている中居がいて、香取の歌唱はパワフルで、木村の歌唱はエモーショナル。稲垣の歌声も、90年代は“エンジェルボイス”などと評されたものだが、実はピッチ(音程)はメンバー一安定しているし、喉も強く、声量もあって、さらにアイドルらしい甘さもある。ビジュアルと歌、どちらに関しても、25年間、SMAPの中で誰よりもアイドルの王道を貫いてきたのが稲垣なのである。

◆“ピンチはチャンス”、稲垣の存在の大きさを改めて感じたSMAP復活劇

 もちろん、試練が彼を強くした面もあるだろう。15年前、テレビに「稲垣メンバー逮捕」というニュースが流れたとき、「SMAPはこの先どうなるんだろう?」「明日のライブは?」といてもたってもいられなくなり、私は翌日、急遽ナゴヤドームに向かった。4人が最初に謝って、コンサートはぎこちなさを残しつつも無事に終了した。その翌週のスタジアムライブでは、メンバーの頑張りが印象的だった。5ヶ月後に稲垣が復活して、2002年のツアーでは、いろんな意味でSMAPがより強く、大きくなったことを実感した。稲垣自身の存在の大きさを改めて感じた。5人での、鮮やかなSMAP復活劇。あの奇跡を見たからこそ、ファンはまだ諦め切れないのだ。SMAPの新たなる奇跡を。

 SMAPには、ライブのときにテッパンの盛り上がりをみせる“メンバー紹介曲”が3曲もある。1999年のアルバム『BIRDMAN 〜SMAP 013』収録の「Five True Love」、2002年の『SMAP 015 Drink!Smap!』収録の「FIVE RESPECT」、2012年の『GIFT of SMAP』収録の「CRAZY FIVE」。この中で、「FIVE RESPECT」は、稲垣がSMAPに復帰したことがきっかけになり、新たに生まれた曲だ。いずれも、曲制作には中居が関わっているが、「〜True Love」は森且行の脱退後の5人のグループ愛を歌に託し、「〜RESPECT」は、稲垣が活動を休止していたその“不在の時間”に感じたメンバーへの大切さを歌詞にしている。また、「Crazy〜」には、草なぎの活動自粛が明け、5人での未来を誓った決意表明のような力強さがある。「〜RESPECT」で5人は、“ピンチはチャンス”だと歌った。「CRAZY〜」では、“くじけそうでも拳をあげろ”“We are all one”と歌った。

◆あらゆる能力が鍛えられた、SMAPのスーパーバランサー

 彼は自分のことをよく、「SMAPの中間管理職だから」と言う。年齢的にも真ん中で、ライブのMCでは中居に真っ先にいじられ、その度に当意即妙な切り返しをみせる。木村とは“友達付き合い”を感じさせるエピソードも少なくないし、ヘルシーな生活スタイルが草なぎと似ていることはファンの間でも有名で、2人は“ロハス”と呼ばれている。香取は、年下なのに稲垣を“ゴローちゃん”と呼び、ときに苦手なフリをしてみたり、適度なツンデレ具合で稲垣を翻弄する。稲垣吾郎という人は、SMAPの中では“スーパー”のつくバランサーだ。あの個性派集団の中でバランスをとっていくためには、観察力、適応力、瞬発力、抑制力に爆発力……と、社会を渡っていく上での、あらゆる能力を鍛えざるを得なかったはず。

 面白いのは、稲垣だけが、SMAPの中で他メンバーからの呼ばれ方が四人四様なのだ。中居は、「稲垣さん」と呼び(くだけた場では“吾郎”と呼ぶこともあるけれど)、木村は「吾郎」、草なぎは「吾郎さん」、香取が「ゴローちゃん」。できることなら、そんなふうにこれからもずっとずっと、メンバーにいじられる彼であってほしい。

 かつてのインタビューで、「(SMAPの仲間感は)『Marching J』のようなイベントで、アドリブというか、その瞬間瞬間のノリを大事にしていっているときに感じる」と答えていた。そんなSMAPの“ノリ”を、より軽妙に、洒脱にしているのは、他ならぬ彼の存在なのである。
(文/菊地陽子)

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