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又吉直樹『火花』、売上223万部超えで年間本ランキング1位 「読書以外の“おもしろいこと”に対抗できる作品をつくる」

 2015年の年間本ランキングを発表。第153回芥川龍之介賞を受賞し、一大ムーブメントを巻き起こした又吉直樹の『火花』が、売上223万部を突破。2位以下を大きく引き離して年間1位に輝いた。又吉は「“本好きのコアな人だけに”とか、その反対で“普段本を読まない人に”とかそういうことを考えず迷いなく書いた作品です。読書以外の“おもしろいこと”に対抗できる作品をつくっていくのが必要なんやろな、というふうに思います。本もお笑いも、これからも両方ちゃんとやっていこうと思っています」とコメントしている。

オリコン2015年 年間“本”ランキング首位を獲得。記念トロフィーを手にする又吉直樹

オリコン2015年 年間“本”ランキング首位を獲得。記念トロフィーを手にする又吉直樹

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◆次回作を待望される新たな作家が登場

 出版不況と言われ、近年の話題と言えば常に“電子書籍”が脚光を浴びることが多かった出版業界において、今年、ある作品の登場が人々の目を再び紙の書籍へと向けさせることに成功した。言わずもがなの又吉直樹『火花』である。

 お笑いタレントが書いたこの純文学小説は、80年を超える歴史を有する文芸誌『文學界』(文藝春秋)に掲載されるや、同誌が創刊以来初めて増刷されるという異例の反応を記録。単行本となった後には、第28回三島由紀夫賞の候補を経て、第153回芥川龍之介賞を受賞したことが一般のニュースでも取り上げられるほどのトピックとなったことなどから、品切れと増刷を繰り返す一大ムーブメントとなった。

 いわゆるタレント本やタレントが執筆した本がヒットするケースはこれまでにも多々あったが、純文学の世界でビッグウェーブを巻き起こした例は皆無であり、これがいかに画期的な“事件”だったかを示していると言えるだろう。コミック部門で上位4作品を独占した『ONE PIECE』や、文庫部門で多くの作品がランキングされた東野圭吾氏のように近年のBOOK市場をけん引してきた存在が貫録を示している一方で、次回作を待望される新たな作家が登場したことは、出版界にとって大きな光となったのではないだろうか。

◆現代人の糧に?年輪を重ねた作家による書物のヒット

 加えて、又吉がノミネートされた段階からマスコミがこぞって煽り立てたこともあり、当該の芥川賞はいつにも増して大きな注目を集めた。このところヒット作を連発している本屋大賞(ちなみに、2015年の大賞受賞作である上橋菜穂子の『鹿の王』もしっかりと年間ランキング18位に名を連ねている)に比べ、ともすればその存在が色褪せていた感のある芥川賞に対して、これまで注目していなかった層が興味を示したことは大きい。『火花』のヒットは、本の世界、延いてはエンタテインメントの分野において、間違いなく“革命”的な衝撃をもたらしたのである。

 このほかでは、2014年の勢いそのままにヒットを連発した『妖怪ウォッチ』関連や、体のケアのノウハウを教える本、痩身法にまつわるムックなどの“定番”商品が上位を賑わした。それらのなかでひときわ輝いたのが、年輪を重ねた人物が手がけた書物のヒットだろう。年齢を引き合いに出して申し訳ないが、『家族という病』(4位)の下重暁子氏は79歳、『置かれた場所で咲きなさい』(8位)の渡辺和子氏は88歳、『一〇三歳になってわかったこと 人生は一人でも面白い』(6位)の篠田桃紅氏は書名に表しているように来年の3月で103歳を迎える(2015年11月末現在)。高齢化社会と言われるようになって久しいが、そんな時代だからこそ先人の声は現代を生きる人にとって何よりの糧となる。今後も80代、90代の人々が文壇に登場する機会は増えていきそうだ。

◆コミック2強を追う『東京喰種』『暗殺教室』

 コミック部門では、前述の『ONE PIECE』、そして2015年に実写化もされた『進撃の巨人』の2強が変わらぬ強さを見せつけるなか、『東京喰種トーキョーグール:re』『暗殺教室』が一年前から比べると明らかな伸びを見せ、複数巻を上位に送り込んできた。映像化やアニメ化はジャンプアップする上で欠かすことのできないファクターだが、この両作もまた2014年から2015年にかけてメディアミックスが打ち出されてきた作品。

 マンガ大国の日本だからこそ、そのなかで大多数の支持を得るためには、大胆な舞台設定や印象に残るキャラクター、息をもつかせぬ展開と心を捉えて離さないセリフ回しが重要なカギとなる。2016年に『東京喰種トーキョーグール:re』『暗殺教室』がどんな広がりを見せてくれるのか、大いに楽しみである。

◆映像化により“バケる”文庫のヒット

 『半沢直樹』シリーズや『永遠の0』など、映像化のヒットがきっかけで、市場に流通して久しかった作品が“バケる”ケースは少なくない。2015年の例でいうなら、結末への伏線が話題となった乾くるみ氏の『イニシエーション・ラブ』や、ノスタルジーを想起させる大人のファンタジーと言える重松清氏の『流星ワゴン』はまさにそうだろう。

 すでに一定層のファンには広く知れ渡っていた作品ではあったが、映画化やテレビドラマ化によって、作品の深みに触れてみたいと新規の読者が書店に足を運んだ。東野圭吾氏の『天空の蜂』にしても同様だ。ヒットメーカーの東野氏ではあるが、同作の文庫での出版は1998年。映画化、それもテーマが原発というタイムリーな話題を背景に今年の一冊に名を刻んだ。時代を予見していたかのような骨太な作品。やはりただのヒットメーカーではない。
(文:田井裕規)

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