今月13日より、女優の尾野真千子が主演する「Hulu」オリジナルドラマ『フジコ』がHulu／J：COMで全6話一挙独占配信がスタート。原作は真梨幸子氏の小説『殺人鬼フジコの衝動』（徳間文庫）で、物語の衝撃性と猟奇性から地上波では絶対に映像化不可能といわれていた。それを一切の妥協なく映像化に挑んだ本作は、尾野や谷村美月をはじめとするキャストの熱演もあって、番組の評価（☆マーク）はおおむね5段階で4.5と高評価を得ている。

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　一家惨殺事件の生き残りとしてトラウマを負った11歳の少女フジコ。彼女の人生はいつしか狂い始めた。「あたしは人生をリセットできる女」「見つからなければ罪じゃない」と、殺害を繰り返していく。なぜ彼女は殺すのか？　誰が彼女の家族を殺したのか？　殺人鬼フジコのあまりにも憐（あわ）れで、哀（かな）しい一生が明かされていく。原作同様に、ドラマも“青少年の視聴に不適切”な内容を含み、観る者を戦慄と慟哭（どうこく）へと突き落とす。ただ、不快な気分にさせられるのに、先を観ずにはいられない、面白さがあるのだ。

　とりわけ高校生になったフジコの青春時代を描いた第3話と第4話は、「原作の真梨さんからドキュメンタリーを観ているようだとおほめの言葉をいただいた」（プロデューサー談）ほど、傑作に仕上がっている。初めての恋人・裕也と親友・杏奈もいて、自ら「絶好調」というほどの華やぎを見せてからの…転落。そのギャップがすさまじい。

■妥協のない作品づくりは役者たちにとってもプラスに

　高校生のフジコは小野花梨（17）、最初の夫となる裕也を郭智博（31）が演じた。

　小野は2009年の映画『南極料理人』で堺雅人演じる主人公・西村の娘など、子役から活躍。本作では、年上の裕也に恋し、体も許して妊娠、彼が親友と浮気していることに気づき、衝動が弾ける、いままで経験したことがない演技に体当たりで挑んだ。

　「尾野真千子さんが演じるフジコの子役ということで責任重大だな、というプレッシャーと、人殺しの役を初めて演じることへの不安とで頭がいっぱいになっていました。撮影中、尾野さんにお会いすることはなかったのですが、お芝居に迷った時は尾野さんの顔を思い浮かべて、尾野さんだったらきっとこういうお芝居をするだろうな、と想像しながら演じていました」と撮影を振り返る。

　「第3話の高校時代は等身大で演じることができましたが、第4話で裕也と結婚して、子どもを産んで母親になるというのは私にとって未知の世界。パンツスーツも初めて着ました（笑）。想像するにしても初めてのことが多すぎました。監督は最終的にOKを出してくれましたが、でき上がった映像を観て、ものすごく違和感が残りました。わからないってこういうことだな、もう少しどうにかできなかったかな、と反省するばかりです」と、自分を厳しく評価する中に、向上心がうかがえて今後の成長が楽しみだ。

　もともと原作小説のファンだったという郭は「年齢的にできる役ではないかな」と思っていたところで思いがけず裕也役に起用され、フジコを幸せにするどころか、台無しにするダメ男を熱演。代表作の一つ、2001年公開の映画『リリィ・シュシュのすべて』に出演した時は10代だった郭も30代になり、本作で新境地を見せている。

　「20代までに積み重ねてきたことを出しながら、いろいろな役を経験していきたいですね。役者は40代、50代、60代と年相応に求められるものも変わってくると思うので、どんな役にも応じられるように、まだまだ勉強に次ぐ勉強ですね」と謙虚に語っていたが、本作での好演をバネに役者としてさらなる飛躍が期待される。

　また、郭は「音楽がいいですよね。フジコが口ずさむ『夢みるシャンソン人形』は脳内リピートされますし、エンディングにかかる斉藤和義さんの主題歌『シンデレラ』は好きですね。とにかく続きが観たくなる作品になっていると思います」と中毒性についても言及。加入者は何度でも繰り返し視聴できる点や、妥協のない脚本づくりと映像表現、配信ドラマならではの可能性に挑んだことが、結果的に役者たちにとってもプラスに機能しているようだ。