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『おそ松さん』、修正対応するも称賛の声やまず 赤塚マインドを受け継ぐ正統派作品

 10月5日から放送開始した『おそ松さん』(テレビ東京系/月曜深夜1:35〜)の内容が、ブッ飛んでいるとネットなどで話題を集めている。故・赤塚不二夫さんの生誕80周年を記念して、1988年以来、27年ぶり、3度目のアニメ化となった同作だが、他の人気アニメのパロディと下ネタが満載の内容に賛否両論。3話に至っては地上波放送後、BSで放送する際に修正することになり、テレ東・高橋雄一社長が釈明するという事態になったが、視聴者及びネット反応を見るとむしろ批判よりも称賛のコメントのほうが多い。なぜなのだろうか? 『おそ松さん』の魅力と根底に流れる赤塚マインドを改めて検証してみたい。

■『うたプリ』『ラブライブ!』『進撃の巨人』など1話から衝撃だったパロディ

 本作の設定は原作から10年後の大人になった六つ子たちの姿を描くというもの。上からおそ松、カラ松、チョロ松、一松、十四松、トド松の六つ子に、イヤミ、チビ太、トト子などの主要キャラが登場する…というところまでは事前発表されていたので、「六つ子がニートになったりオタクになったりするんだろうな…」くらいは、誰もが予想できた。また声優陣が、おそ松役の櫻井孝宏(『好きっていいなよ。』の黒沢大和役ほか)や、『進撃の巨人』のリヴァイ兵士長役の神谷浩史など、女性人気が非常に高い豪華なメンツ揃いで、女性のアニメファンからはそれだけで期待度が高かったが、そんな生ぬるい予想や期待は、第1回目の放送で木っ端微塵に破壊された。

 まずは、初期の作品を彷彿とさせる白黒の映像で、六つ子と主要キャラが登場。「僕たち昭和のキャラだよ? こんなアニメ、人気になるわけないし、みんな昭和顔だし…」と不安がるチョロ松をよそに「僕たちがバッチリ人気が出るいい作戦があるんだ」とおそ松。画面は突然カラーに変わり、人気アニメ『うたの☆プリンスさまっ♪』風のイケメン男性アイドル6人(六つ子)のライブシーンに! しかも声優陣は歌手活動もしているだけに、やたら歌のクオリティが高い。そのまま舞台は『花より男子』風の、“日本で唯一BL(ビックリするほどルックスがいい)制をとる”「私立おそ松学園」へ。さらに『弱虫ペダル』や『黒子のバスケ』、『ラブライブ!』といった人気アニメのパロディを連打連発。チビ太が巨人化すれば(『進撃の巨人』風)、「アソコはチビの要素残してるの!?」、さらにはトド松とカラ松のボーイズラブっぽい絡みといった下ネタてんこ盛りで、とりあえず、ちまたで売れているアニメの要素を全部詰め込んでみました的な内容だった。最後に冒頭の部屋のシーンに戻ると、「赤塚先生怒ってないかな?」「平気だよ、だいぶ前に死んだから」との発言まで。

■アナーキーな赤塚不二夫へのリスペクトを感じる『おそ松さん』

 翌週からは通常通りの『おそ松さん』が始まるが、第3回目にして問題が発生する。まずはサスペンスホラー映画『SAW』をパロったシーンのタイトル文字「OAW」が、BSジャパン(テレビ東京のBS局)で再放送された際に「OSO」に変更。この第3回は見ているほうが冷や冷やするほどのパロディぶりで、『それいけ!アンパンマン』を思わせる「ほれいけ!DEKAPAN‐MAN」では、デカパンがお腹をすかした子どもに、パンツの中からこげ茶色のかりんとう、さらには金色の球体を差し出すというシーンがしつこく繰り返される。これらもBSジャパン版では、かりんとうは「光る棒」、金色の球体は「白いボール」に修正されたが、逆にその修正行為がネットなどで批判されると、10月29日、テレビ東京社長は都内の定例会見で、「オリジナルに失礼な行為だった」と謝罪する騒ぎとなった。

■BPOに対する痛烈なアンチテーゼ

 昨今のアニメではまれに見る過激ぶりを披露した『おそ松さん』だが、それもそのはず、監督は痛快なパロディが支持を受ける一方で、「放送倫理・番組向上機構」(BPO)に苦情も殺到したアニメ『銀魂』の藤田陽一監督なのである。『銀魂』はブッ飛んだパロディはお約束だが、前述の通り、今回の『おそ松さん』はただの過激なパロディの範疇には留まっていない。むしろ日本のギャグアニメ創成期の第一人者・赤塚不二夫さんの生誕80周年記念にふさわしい、最大級のトリビュート作品と言えるかもしれないのだ。というのも、そもそも『おそ松くん』だけでなく赤塚さんの作品全体にパロディや下ネタがあふれていたし、伝説の作品『ギャグゲリラ』ともなれば、時事問題や社会風刺、大人の事情まで、過激さの宝庫であった。先述の第1作目にあった「だいぶ前に死んだから」発言も、実はフジオプロ側からの提案だったとも伝えられているし、実はこれらの内容すべてが、“赤塚不二夫へのリスペクト”から成り立っているのかもしれない。

 BPOその他の世間的な批判を怖れて、無難にやりそごそうといったアニメ制作側の姿勢が、本来のギャグの矛先を鈍らせ、昨今のアニメ作品は“二番煎じ”や“柳の下のドジョウ”ばかりを狙うようになってしまった。『おそ松さん』は、そうした業界に対する強烈な“アンチテーゼ”として、結果的に問題提起をしたことになるのかもしれない。今後の『おそ松さん』は、おとなしく、面白く収束していくのか、あるいはさらに過激になっていくのかわからないが、観るほうも作るほうも、それ相応の“懐の深さ”を持っていきたいものである。とは言え今回の騒動にしても、赤塚不二夫先生にしてみれば、草葉の陰から「これでいいのだ」とおっしゃるだけかもしれない。

(文/五目舎)



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