なぜ? 夏の風物詩、怪談番組が年々減少

 暑い夏の定番といえば怪談だ。恒例の「怪談ナイト」やテレビ番組出演、『サマーソニック』出演で1万人以上を集客するなど、今年もタレント・稲川淳二がフル稼働で活躍しているが、全体を見渡すと、テレビ放送される怪談番組そのものは以前よりも少なくなってしまったように思う。かつて当たり前のようにあった怪談企画が減少したのはなぜか?

■怪談モノはテレビからネットに移行

 放送16年目を迎える夏の風物詩とも言える『ほん怖』こと『ほんとにあった怖い話 夏の特別編2015』(フジテレビ系)の放送も控えているが、思えば冷房いらずの夜を過ごした時代は、多少の暑さを凌ぐのに“怪談”が最適だった。夏には連日のように怪談番組やオカルト・ホラー映画がテレビ欄に並んでいた。夏休み中の子どもたちにとって怪談ものは定番中の定番であり、怖いもの見たさで子どもから大人まで幅広い人気を集めていた。本物か疑うまでもなく視聴者投稿の心霊写真が次々と紹介され、廃墟やトンネルなどの心霊スポットを霊媒師と共に巡るシーンで視聴率が取れたものだ。それがここのところめっきり番組数が減ってしまった。夏の定番は自局の“夏祭り”を盛り上げる番組に移り変わっているようで、今年8月中に地上波で企画された怪談ものを数えてみると、両手で数えられるほどにまで減少している。

 その理由について、稲川が過去にORICON STYLEのインタビューでこう答えている。「昔はテレビが一番の手段でしたけど、今はそうじゃない。ネットの普及もありますし。私もずいぶんネットで色々やりましたからね。ツイッターでも『つぶやき怪談』やってますし。あと、DVDも増えていて、テレビよりもよっぽど凝って面白いものもある。選択の幅が広がったことで、テレビに求めなくても、みんなそれぞれ選べるんですよ」。つまりメディア環境の変化により、以前はテレビに頼らざるを得なかったものが、他メディアでコアファンが求めるさらにディープなものに簡単に触れられるようになったのだ。

■“心霊写真”が撮れなくなった理由

 また、昨今のテレビ番組の“やらせ”問題により、“やらせ”と指摘されやすい怪談番組の企画が成立しにくくなっていることも理由に挙げられる。放送倫理を検証する第三者団体「BPO」の機能も強くなり、テレビ番組のコンプライアンス基準は厳しくなるいっぽう。具体的な映像を見せることができない怪談番組はある程度“やらせ”演出に頼らざるを得なかったが、それが許されない状況になりつつある。視聴者自身もリアルを求める傾向が高まり、遊びのある“やらせ”でさえも通じず、白けてしまいがちだ。

 また、カメラのデジタル化で誰でも写真を加工できる時代になり、怪談番組には欠かせないリアルな“心霊写真”がなかなか撮れなくなったという事情もある。それどころか、心霊写真を暴く番組や撮り方をレクチャーする番組も。稲川も「デジタルになってから、心霊写真が取れなくなりましたよ。フィルムの時代はちゃんとしたのもあったんです。今はみんな作るのうまいんだ、怪しいやつね。こっちも騙されると悔しいんで、必死に見てますよ(笑)」と話している。さらに語り部が高齢化し、強烈な個性を持った後継者があまり出てきていないことも逆風となっている。

 とはいえ、日本人は根っからの怪談好きだ。夏の風物詩でもある怪談番組が少なくなってしまうのは少し寂しい気がする。

(文/長谷川朋子)