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過去最高興収を記録した『クレしん』『コナン』、マンネリにならない秘訣は?

 今年4月18日に公開された『映画クレヨンしんちゃん オラの引越し物語〜サボテン大襲撃』の興行収入が、6月27日までに22億2500万円超に達し、シリーズ23作目にして1993年公開の第1作目『映画クレヨンしんちゃん アクション仮面VSハイグレ魔王』を上回る最高記録を更新し話題を集めている。長く続く長寿シリーズというと、ともすればマンネリになりがちだが、今年公開された『名探偵コナン 業火の向日葵(ひまわり)』も、3年連続でシリーズ最高興収を記録。ともに毎年安定した実績を叩きだしている。マンネリに陥らないコンテンツのパワーはどこにあるのだろうか?

シリーズ最高興収を記録した『名探偵コナン 業火の向日葵』(C)2015 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会,『映画クレヨンしんちゃん オラの引越し物語〜サボテン大襲撃〜』(C)臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2015

シリーズ最高興収を記録した『名探偵コナン 業火の向日葵』(C)2015 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会,『映画クレヨンしんちゃん オラの引越し物語〜サボテン大襲撃〜』(C)臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2015

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■“大人も楽しめる子供向けアニメ”として定着した2作

 かつては、下品な下ネタやブラックジョークがてんこ盛りのため、“良識”のある大人たちからは眉をひそめられもした『クレヨンしんちゃん』。あれから20年あまりたった今、いわゆる“サザエさん方式”で番組が続き、子どもたちを中心に友情や家族愛で協力し合って、大人たちの建て前や見栄に対抗していくというストーリーを主軸としながらも、子どもが喜ぶようなネタばかりではなく、大人でも楽しめるネタなども取り入れ、親子で楽しめるような作品に。また、2000年代に入ってから、映画版ではTVとは違った方向性を打ち出し、“大人が泣けるアニメ”として、映画館では大人同士のグループも見かけるようになった。官公庁などの啓蒙キャラとしても使用されることも増え、“子どもの純真な心を尊重した良質な作品”として再評価されているのだ。

 また、『名探偵コナン』も、“サザエさん方式”で続き、来年はTVアニメ放送開始から20年を迎える。身の回りで起こる難事件を子どもの身体になってしまった“江戸川コナン”こと高校生の工藤新一が解決していくという部分を軸としながらも、映画版では起こる事件がより大規模で、アクションシーンが豊富だったり、幼馴染・毛利蘭とのラブストーリー的な要素が強調されていたりと、大人も思わずドキドキハラハラしてしまう仕掛けが満載だ。『クレヨンしんちゃん』と『名探偵コナン』は5作目以降、GW前の4月第3週か第4週の同時期に公開されるため、2作品ともに楽しみに観ている大人のファンも多いようだ。

■「パラレルワールド」が許されるコンテンツの自由度

 この2作品に共通しているのは、基本的にブレない設定・世界観、『水戸黄門』的なお決まりの結末がありながらも、そこさえ守っていればSFのような非日常的なストーリーやキャラクターでもアリで、コンテンツとしての自由度が高いことだ。TVアニメ版も含め、主人公たちが年を取らず、時間軸がほぼ一緒のため、視聴者は無意識のうちに“パラレルワールド”的に展開されるストーリーの感覚を刷り込まれている。極端な話、『名探偵コナン』のように主人公が「キック力倍増シューズ」を利用して数百メートルのタワーまで跳んだり、『クレヨンしんちゃん』のようにタイムスリップをするなど、“現実では有りえない”ことが起こっても、見ている側はすんなり受け入れられるのだ。これは同じく長寿アニメの『ドラえもん』も同様で、普段の主人公たちの生活も差し込み、日常シーンから事件が起こっていくからこそ、違和感なくストーリーに入り込める。

 こうした日常の中でうまく“非日常”的なできごとを見せ、見ている側が無意識のうちにその“非日常”を受け入れる姿勢ができていること、コンテンツ側がそれを確信したうえでの絶妙な“ぶっとび感”で作品づくりをしていることが、つまらなくさせない秘訣といえそう。言い方を変えれば、何でも楽しめる「心地良いマンネリ感」が、固定ファンをつかんで離さない理由なのだ。“子供向け”“親子もの”から、“大人も楽しめる”作品として進化した長寿作品。これからも、多少の毒とともに、子どもも大人も楽しめる様々な要素を取り入れて、幅広い年代を楽しませてくれる“鉄板”コンテンツとして継続していくだろう。 

(文/五目舎)

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