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濃すぎる個性は求められない? “職人”が減少するゲーム業界

 スマートフォンの普及により、『パズル&ドラゴン』や『モンスターストライク』『ねこあつめ』など、空いた時間に気軽に楽しめるスマホゲームが主流となりつつある。一方で、据え置き型のゲーム機や携帯ゲーム機を使う重量感のあるゲームは、限られたヘビーユーザー層だけに需要があるという状況は否めず、ゲームメーカーもライトユーザーのニーズにシフトした開発を求められている。時代の流れと言えばそれまでだが、いわば“職人”とも言える、かつての名物クリエイターが求められない風潮は寂しくもある。

通勤中のサラリーマンやOLがスマートフォンゲームをプレイしている光景も珍しくなくなった

通勤中のサラリーマンやOLがスマートフォンゲームをプレイしている光景も珍しくなくなった

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■クリエイターの個性が活きていた時代

 ここ最近、大手のゲーム会社とゲームクリエイターによる騒動が注目を集めている。大手ゲーム会社によるクリエイターのリストラも話題に。もちろん、何らかのトラブルがあったわけではないかもしれないが、一時代を築いたクリエイターたちが続々と退いているのだ。

 1985年、任天堂の宮本茂プロデューサーが手掛けたファミコンソフト『スーパーマリオブラザーズ』は、子どもから大人まで楽しめる理想的なゲームだった。家庭で手軽に遊べる画期的なゲームに子どもから大人まで夢中になったものだ。その後、ハードが進化を遂げていくなかで「ファイナルファンタジー」シリーズや「ドラゴンクエスト」シリーズ、「ロックマン」シリーズ、「ポケットモンスター」シリーズなどの大ヒット作が生まれ、それらを開発した個性豊かなクリエイターやプロデューサーにも注目が集まるようになった。特にやり込み要素の高いゲームはクリエイターの個性が大きく反映されるため、多くのカリスマが誕生したものだった。

■ライトユーザーに向けた開発にシフト

 しかしフィーチャーフォンからスマートフォンに移行し、アプリゲームが主流となった今、家庭用ゲーム機にも勝るとも劣らない詳細なグラフィック、魅力的なキャラクター、やり込み要素を持つスマホゲームが増えている。その勢いは、『モンスターストライク』で再起を果たしたミクシィのように、ひとつの企業の命運を大きく左右してしまうほど。このほか、バンダイナムコホールディングスは自社版権作品を利用したソーシャルゲームの大ヒットで業績を伸ばしているし、スクウェア・エニックスは『ファイナルファンタジー レコードキーパー』で逆転攻勢を仕掛けている。各社の戦略はいかに多くのライトユーザーの心をつかむことができるスマホゲームを開発できるかにシフトしているのだ。

 それに伴って、現代のゲームクリエイターには、濃密で強烈な“個性”は求められなくなってきているのかもしれない。もちろん、名物クリエイターが作った密度の濃い作品を求めているユーザーもいる。さらにゲーム会社も、老舗としてのプライドを守りきれなくなっている現状に歯がゆい思いをしているかもしれない。しかし、ビジネスとして考えた場合、大多数を占めるライトユーザーに向けたゲーム開発に注力していくのは当たり前のこと。かつて、新作ゲームの発売日に、徹夜で店頭に並んでいたマニアックなゲーマーたちにとっては、少しばかり寂しい時代に入ったようである。

(文/五目舎)
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