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livetune、ボカロ第一世代だからこそ伝えたい生の声の魅力

 2008年8月、当時は商業作品としてはまだ珍しかった「初音ミク」で制作した楽曲を集めたアルバム『Re:package』が最高5位を記録し、音楽リスナーに大きな衝撃を与えたlivetune。現在はkz氏のソロ・ユニットとして他アーティストへの楽曲提供やプロデュース、リミックスなどを手がけるなど活躍の場を広げているなか、多数のゲスト・ボーカリストを迎えて制作されたアルバム『と』の発売にあたり、kz氏がORICON STYLEの取材に応じた。“ボカロ第一世代”から見た今のボカロシーン、敢えて今生歌にこだわる理由について聞いた。

9月10日に発売されたlivetune『と』ジャケット写真

9月10日に発売されたlivetune『と』ジャケット写真

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■もっと生の声の力強さを再認識してもらいたい

 2年前よりリアルボーカルを起用したプロジェクト「addingシリーズ」を展開してきたlivetune。その集大成となる『と』には、これまでシングルとして発売された中島愛やFukase(SEKAI NO OWARI)、尾崎雄貴(Galileo Galilei)らを迎えた楽曲はもちろん、 鬼龍院翔(ゴールデンボンバー)などを迎え新たに制作した新曲も多数収録。実に12名もの客演陣が、livetuneの音楽の世界をリアルボーカルで彩る。kz氏によると、そもそもaddingシリーズのスタートには、「生の声の力強さを再認識してもらいたかった」という、いわゆる“ボカロ第一世代”という出自からは意外すぎる思いがあった。「ボカロにはボカロならではの魅力がある。だから僕も音楽ツールのひとつとして活用してきました。だけど最近、ボカロ楽曲しか聴かない小中高生が増えてるという話を聞いて、もったいないなと思ったんですよ。世の中には、こんなにいろんな声質や表現力を持ったボーカリストがいるのになって」。

 livetuneが活動をスタートしたのは「初音ミク」が発売された2007年。9月にニコニコ動画で発表されたオリジナル曲「Packaged」は、ボカロ初期を代表する人気曲の一つとして、今も人気を集めている。あれから7年、音楽のみならず小説や漫画の原作を手がけるマルチプレイヤーも登場するなど、今やボカロシーンは当時とは比べ物にならないほど成熟した。「最近は、ボカロ楽曲=四つ打の早いロックというイメージがあって、それがひとつの「ジャンル」として括られてしまっているような気がします。だけどボーカロイドというのはあくまでシンセの一種であって、楽曲を構成する楽器のひとつ。もっと自由に音楽を表現できるツールだと思うんです。シーンとして人気が出てきたことで、逆に狭いところに閉じこもってしまった印象もあります」。

■音楽にまじめに取り組みすぎていた

 そしてkz氏自身、「主にボカロで作品を作ってた時期は、音楽にまじめすぎた気がします」と振り返る。「もうちょっと肩の力を抜いてやってもいいのかなって。僕、ドン・キホーテにCDが置かれるようになりたいんですよ。CDショップは音楽が好きじゃないとなかなか行かないけど、ドン・キホーテは音楽に興味ない人も来るから、置いてあるCDは誰もが知っているようなヒット曲が多い。だからドン・キホーテに置かれるようになれば、お茶の間にも届いてるということなのかなと思うんです」。

 livetuneの立ち位置はクリエイターか?プロデューサーか?と問うと、「プロデューサーであり、アーティスト」という答えが返ってきた。
「たぶんプロデューサーだけだと、届く世界は狭いと思うんです。小室哲哉さんですとか、中田ヤスタカさんのように、自分も表に出て、何かを発信していきたいですね。もっとリアルボーカルプロジェクトもやりたいですし、参加してくれたアーティストを集めてフェスもやりたいですけど、今後は1人か2人くらいのボーカリストを固定して、フットワーク軽く活動していきたいと考えています」

 今や国内のみならず、世界中に熱狂的なファンを持つボーカロイド。そのムーブメントの礎を築いた第一世代・livetuneの活躍が後に続く“ボカロP”たちにどのような道を示すことができるのか、引き続き注目していきたい。

(文/児玉澄子)
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