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作曲家・村松崇継氏が明かす、『思い出のマーニー』音楽制作の舞台裏

 7月19日より全国で公開中のスタジオジブリ最新作『思い出のマーニー』の音楽を担当した作曲家・村松崇継氏がORICON STYLEの取材に応じた。米林宏昌監督や西村義明プロデューサーといった次世代を担うスタッフが中心となった新作ということも話題を集めるなか、長編アニメーション映画の音楽を手がけるのは初めてという村松氏に、楽曲制作の裏側やジブリ作品に関わることへのプレッシャーなどについて聞いた。

■閉ざされた杏奈の心にそっと寄り添う音楽

――最初に『思い出のマーニー』の話を聞いたときはどう思われましたか。
【村松】 びっくりしましたよ(笑)。過去の作品も聴いて下さっていましたし。まずは米林監督からマーニーと杏奈の設定のメモをいただき、イメージ曲を作ることになりました。もちろん、その時はまだ映像がなかったのですが、メモにはふたりの生い立ちからマーニーに会って凍っていた心がだんだん溶けていく杏奈の成長などがこと細かく描写されていたので、イメージは膨らませやすかったですね。最初にイメージソングを作ったことで、その後の音楽の世界観も固まっていきました。

――ジブリ作品の音楽を担当することに対して、プレッシャーはなかったのでしょうか。
【村松】 プレッシャーが全くないと言ったら嘘になります。しかも今回に関しては“新生ジブリ”“世代交代”と、大きな注目を集めている作品でしたから。ただ、それよりも『思い出のマーニー』の世界観を音楽で表現したい、作品として良いものを作りたい、という思いのほうが強かったですね。ジブリ作品の音楽を手がけることは夢でもありましたし。

――今回の作品ならではのご苦労などはありましたか。
【村松】 音楽の入り方やフェードアウトのタイミング、楽器の編成などを、1ロールごとに1、2ヶ月かけてディスカッションしながら作り上げていったんですけど、杏奈がマーニーに出会うまでが一番難しかったですね。最初はもっと様々な楽器を入れてドラマチックな作りにしていたんですよ。でも、監督から「音楽は語らなくてもいい。もっと杏奈の心に寄り添ってくれ」と言われて、閉ざされた杏奈の心にどうしたらもっと寄り添えるのかと考えた結果、余計な音をそぎ落としたシンプルな編成になりました。マーニーと出会ってからは、杏奈の変化とともに音楽も少しずつ音が加わり、表情豊かになっていくのですが、それでも全体を通して音楽は主張しすぎず、なるべく後ろからそっと寄り添うような楽曲に仕上げることを心がけています。

■子どもである一方で大人の部分も持っている 今の子どもたちが共感できる映画

――実際に完成した映像を観て、いかがでしたか。
【村松】 もう、試写を観終わったあと、ぼろ泣きだったんですよ(笑)。大人の男の心にも響く映画です。最近の子どもたちってある部分で大人化していて、本当に子どもなの?と思うこともあって、子ども騙しがきかなくなっているじゃないですか。杏奈も年齢的には子どもなんだけど、一方で大人な部分も持っていて、自分のなかで葛藤している。そういう意味では、今の子どもたちが共感できる映画なんじゃないかなと思います。

――多くの作品を手がけるなかで、曲のインスピレーションを枯れさせないコツはありますか?
【村松】 景色を見ることです。常日頃から意識して旅行に出かけているので、例えば草むらのにおい、鳥の鳴き声などを聞いて、旅先で音が浮かぶこともありますし、ドラマや映画のシーンでそのイメージを思い浮かべながら書くこともあります。基本は普段の生活で蓄積していってますね。メロディーが浮かんだら忘れないうちに書けるように、仕事部屋だけでなく寝室、お風呂、トイレと、全部の部屋に五線紙を置いているんですよ。『思い出のマーニー』では、舞台の北海道まではいけなかったんですけど、湿地や大岩家の雰囲気をつかむために長野に行きました。

――最後に、今後の抱負を教えてください。
【村松】 これまで実写にこだわってきたんですけど、今回の作品でアニメーション作品の魅力を改めて感じたので、アニメーションの音楽にももっと挑戦していきたいと思いました。米林監督も西村プロデューサーも僕と同世代なんですけど、本当に楽しく曲作りができたので、また機会があったら一緒に新しいものを作りたいなと思っています。

(文/河上いつ子)

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