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佐藤社長が語る、新生「KADOKAWA」変革の狙い

 角川グループホールディングスが6月22日付で商号を「株式会社KADOKAWA」に変更した。また10月1日付で関連子会社9社を吸収合併する組織改編を実施。新たなコーポレートロゴとキャッチフレーズ「新しい物語をつくろう」を発表した。こうした大規模な変革の背景には、エンタテインメント業界を取り巻く環境変化への対応と、ネット・デジタルや海外への進出を加速するための体制作りがある。

新たなコーポレートロゴとキャッチフレーズ

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■グルーバル化とデジタル化を目指した組織改編


――本年は組織改編や商号変更などを発表されました。合併の目的から教えて下さい。
佐藤 角川書店、アスキー・メディアワークス、角川マガジンズ、メディアファクトリー、エンターブレイン、中経出版、富士見書房、角川学芸出版、角川プロダクション。以上連結子会社9社を吸収合併し、ワンカンパニーとなる理由には、少子高齢化や、ネットがメディア化し、そのデバイスとしてスマートフォンの出荷が伸びているといった背景があります。

 また、96年に2兆6000億円あった出版市場が、1兆7000億円まで落ち込んでいる現実もあります。一方でライトノベル、コミック、そこから生まれたアニメやゲームなど我々のコンテンツ市場にはまだ伸びしろがあり、アジアの新興国においても愛されるコンテンツとして育ってきています。

 このように、読者のニーズや、市場が変わっていくのであれば、我々も変わらなければいけません。特にデジタル化とグローバル化、このふたつに取り組む時、今までのようにグループ会社が個々に対応するのではなく、力を結集する必然性を強く感じたわけです。


――合併後は9社の個性と強みをどのようにまとめて、シナジーを生んでいかれる方針ですか。


佐藤 角川書店やアスキー・メディアワークス、メディアファクトリー、富士見書房、中経出版、角川学芸出版などの会社名は合併後もブランドカンパニーとして継続し、エンターテインメント・コンテンツクリエイション事業統括本部の傘下に入ります。井上伸一郎専務が統括本部長です。

 また、従来の雑誌・広告事業はメディア&インフォメーション事業統括本部とし、浜村弘一常務が統括本部長です。エンターブレインと角川マガジンズを統轄し、紙からの脱却を図る新しい情報事業を構築していくことを目標としています。

 力を結集して行う新規事業は統轄本部主体で、従来の事業は各ブランドカンパニーで行っていきます。僕らはそれを“富を再生産するエコシステム”と呼んでいます。例えば、アスキー・メディアワークスの電撃文庫は、毎年たくさんの新人作家をデビューさせ、彼らの生み出すライトノベルをコミックや他の出版領域だけでなく、アニメやゲームへとマルチに展開するプロデュース機能を持っています。

 こうした、新しい作品=富を再生産していくことはKADOKAWAになっても重要な機能ですので、ブランドカンパニーに残しました。一方、新規事業や、より大きなIP(コンテンツ)を育てていく事業は“大きなエコシステム”と呼んでおります。

 出版社の集合体ではありますが、各ブランドカンパニーの事業ポートフォリオには、映画もあればアニメもゲームもあります。それらを大きなエコシステムで作ったプラットフォームに乗せて、展開していきます。


――その“エコシステム”の推進も、ネットや電子書籍がまだ市民権を得ていない時代から始められた蓄積があってこそだと思います。


佐藤 角川グループがホールディングス体制になったのは03年、ちょうど10年前です。いくつかのM&Aを経て、新しい会社も加わりました。この10年間はそれぞれの会社同士が競い合い、結果的に高いシェアを獲得することができました。5年前の社長就任時は事業ごとの濃淡もありましたが、それもかなりの部分で改善できたと思います。

 例えば、映画事業は結果が出せず試行錯誤していましたが、11年1月に角川書店と角川映画の合併を行い、12年度は映画事業が黒字転換を果たしました。本来、出版と映像はシナジー効果があり、加えて、井上専務がコストの掛け方からマーケティングまで出版的な堅実さで映画事業を手がけたことも大きかったと思います。


――角川書店と角川映画の合併が、今回の大規模な改編に繋がったようにも思います。


佐藤 角川グループでは、会社の赤字を解消させるためや、事業を成長させるため、常にいろいろな企業再編のアイデアを議論しています。その時、角川歴彦会長がふと「こういうアイデアが出るのは、グループがひとつになっていくプロセスなのではないか」と言ったのです。

 実は合併吸収はものすごくストレスがかかること。今までのようにそれぞれ独自判断でやっていくわけにはいきません。ひとつになることのメリットと、デメリットを、どう解決していくのかを時間をかけて話し合うなかで、ブランドカンパニーという考え方や、横文字のKADOKAWAという発想も出てきました。


――KADOKAWAの出版以外の主力を担う事業について、まず電子書籍から、BOOK☆WALKERについて展望を教えてください。


佐藤 BOOK☆WALKERは、まだ日本の電子書籍市場が立ち上がる前の10年にオープンさせました。当時からライトノベルという当社に強みのあるコンテンツを打ち出していけば、プラットフォームとして成立するという考えで一致していました。

 ただ、初めはグループ内でも消極的な会社もあれば、積極的にコンテンツを出していく会社もありました。そこから2年半が経過し、今ではグループ外の出版社の作品も多数加わり、コンテンツが充実し、急激に売上も伸びてきています。

 先日『インプレス』の記事で、大型総合書店としてのKindleストアと、専門店のBOOK☆WALKERはうまく棲み分けができており、非常に面白いポジショニングだと評価していただきました。

 アニメでもNTTドコモさんとの合弁事業で「dアニメストア」を始めましたが、立ち上げ当初から他社さんにアニメ作品を多数提供いただいています。業界という平場があって、そこに寄り集まっているだけではなにも起こらない。デファクトスタンダードを作ってこそ、ものごとは動くということを実感しています。


――海外展開はいかがですか。


佐藤 海外については、リスクがあっても自社で開拓していく。そのうえで現地化し、現地で成長させることをモットーとしています。

 台湾と香港、中国本土の中国語圏のライトノベルの作家やイラストレーターの新人賞を開催し、現地の作家の開発・育成も行っています。日本のコミックやライトノベルの翻訳出版からスタートしますが、現地のクリエイターを育成し、雑誌も現地化して事業を行う。
中国本土では現地の編集者が自主的に企画して始まった画集の反応が良く、新たな化学反応も生まれ始めました。これは日本から編集者が乗り込んでいっただけでは作れないヒットだと思います。


――ゲーム事業についても展望を教えてください。


佐藤 ゲームをグローバルで展開しようとすれば、アメリカ、ヨーロッパで受けるゲームでなければなりません。当社では、ゲーム会社のテクモ(現コーエーテクモゲームス)の社長だった安田善巳氏とご縁があり、09年に角川ゲームスを設立しました。ワーナー・ブラザースとの提携も彼の経験が活かされたものです。

 ワーナーと提携した「ロリポップチェーンソー」のようなグローバル展開するゲームや、これまでコツコツとやってきたライトノベルやコミックをベースにしたドメスティックなパッケージゲーム。次はソーシャルゲームやネットゲームなど、海賊版対策も施しながらアジアでの流れを作っていきたいと思っています。


――新生KADOKAWAをどのような会社にしていこうと考えていらっしゃいますか。


佐藤 環境の変化とともに、自分たちも変わっていく。それを楽しめるかどうかがカギだと社員総会で話をしました。たくさんのストレスを乗り越え、ひとつになることを決意したのは、新しい事業を面白いと思えたからだと思うのです。

 会社に合わせるのではなく、どれだけ自己実現できるか。やはり出版社は人の力で成り立っている部分が大きいわけですから、会社の成長が個人の成長に結びつく、もしくは個人の成長が会社の成長に貢献するようであってほしいと思っています。

 また、物を作るだけで完結せず、これからますますコンテンツを「事業化」させるセンスが求められます。今回のワンカンパニーは人の配置もより活性化させていくためのものです。メガコンテンツ・パブリッシャーとして、さらなる成長を目指していきます。(ORIGINAL CONFIDENCE 7月22日号掲載)

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