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10代へ向けた映画館からのアプローチ

 6月1日より、TOHOシネマズ58館等で高校生の入場料金の値下げが始まった。先行して開始していた7劇場では、以前と比べて高校生の動員が最大で2.9倍にもなるなど、成果が出ていたという。若年層を獲得していくことはエンタテインメント業界全体の課題のひとつでもある。さっそく同社に今回の値下げの背景を聞いた。

6月1日から、TOHOシネマズ名の全国58劇場およびお台場シネマメディアージュの高校生鑑賞料金が1000円となった

6月1日から、TOHOシネマズ名の全国58劇場およびお台場シネマメディアージュの高校生鑑賞料金が1000円となった

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■動員で2.6倍〜2.9倍、売上も150%〜170%増に

 本誌『ORIGINAL CONFIDENCE』13年4月8日号では、「若年層にリーチせよ!」と題して、10代、20代への音楽メーカー、メディアの取り組みを紹介した。こうした動きは音楽業界に留まらず、映像業界でも見られる。

 例えば本誌で、動員ランキングを発表しているODSも若年層を含め、新規層を劇場へ呼び込む施策の一つと言えるだろう。そして、6月1日からは、TOHOシネマズが高校生の料金を1000円に変更した。

 「一昨年に、7劇場で入場料金のテストを行いました。早朝・レイト/レディース・シニアなど、サービスが多岐に及んでいたこともあり、料金の簡素化をテストすることも目的でした。結果は当社の予想通りとはいかない部分もありましたが、高校生料金を1000円に値下げした点に関しては、一定の手応えを得ることができ、7劇場ではテスト終了後もその料金で継続しました。この期間に、さらにデータを採り、今回の施策に至りました」(TOHO シネマズ取締役 劇場運営担当 戸嶋雅之氏)

 これまでの料金は1500円。多少動員が増える程度では500円の値下げ分を取り返すことはできない。当然、厳密な検証が行われたという。

 「過去のデータと比較してみたところ、地域差はありますが、テストを行った劇場では、人数は2.6倍から2.9倍の増加となり、売上も150%から170%増に達しました。作品によってばらつきはありますが、これなら全劇場が実施に踏み切れると判断しました。収入増加も見込める上に、業界的な意義においても映画人口の拡大に繋がります」

■映画配給会社や学校・団体とも連携

 もちろん、ただ料金を安くしても、高校生が劇場に押し寄せるとは限らない。スマートフォン等が娯楽の軸になっている彼らに向けて、映画の魅力を伝えるために、どのようなプロモーションが有効か、配給各社とともに戦略を練り込んでいるという。

 「日本映画は内容以外にも、キャスト次第で、ある程度の集客は期待できますが、洋画ではどれほどアメリカでヒットしても、それだけでは高校生世代にはアピールできません。パラマウントの『G.I. ジョー バック2 リベンジ』が“高校生お得だジョー”割を設定して料金を1000円にしたように、危機感を持っている配給会社とともに、この世代の関心を喚起する施策を模索しています」

 ただ劇場としては、あらゆる世代にアピールするように上映プログラムを組むため、時には高校生世代を狙った作品がない状況も起きる。

「映画人口を増やすためには、作品だけではなく、映画館の音響や映像美、視聴環境の素晴らしさをアピールする必要性も感じます」

 TOHOシネマズでは高校生料金だけでなく、今春から団体鑑賞を地元の学校や団体へ積極的にアプローチしているという。昔はよくあった授業の一環としての映画鑑賞。ここからも新たな映画ファンの創出を狙う。

 「当社は常にバラエティに富んだ上映プログラムをご用意することがウリでもあります。新たな料金によって、少しでも多くの高校生が数多くの作品に触れ、映画の魅力を発見してもらえれば最高だと思います」

 TOHOシネマズが値下げを打ち出したことで、各シネマコンプレックス、映画館も追従すると見られている。今年はスタジオジブリの『風立ちぬ』やピクサーの『モンスター・ユニバーシティ』など、若年層を含め、幅広い層に訴求できる大作が控えており、今回の値下げの効果が早くも期待される。(『ORIGINAL CONFIDENCE』13年6月10日号掲載)
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