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映画界の要注目人物ヤン・イクチュン「楽しむだけの作品も大事だけど…」

 韓国の俳優、監督であるヤン・イクチュン。初の長編映画の監督・主演作『息もできない』(2008年)で、世界各国40以上の映画賞を受賞。自らの身を削り、全てのエネルギーを注入し、まさに魂をつめ込んだ作品からは、彼の映画へのほとばしる情熱があふれ出る。今世界中の映画界がその動向に注目している逸材だ。

『かぞくのくに』(ヤン・ヨンヒ監督)に出演するヤン・イクチュン(C)2011 Star Sands, Inc.

『かぞくのくに』(ヤン・ヨンヒ監督)に出演するヤン・イクチュン(C)2011 Star Sands, Inc.

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 そんな鬼才の素顔は驚くほど穏やか。カメラを向けると恥ずかしがったり、ふざけたり。『息もできない』の後のことを聞くと、冗談を交えて場を和ませながらも、発する言葉のなかにはしっかりと力強い意思を詰め込む。

「『息もできない』の後は、肉体的にも精神的にもものすごくエネルギーを消耗していることを生まれて初めて実感しました。エネルギーを枯渇させてはいけないと2〜3年前から感じていて、今は休んでいるところです(笑)。その状態で作品に取り掛かることは痛みをともなうし、傷も大きくなるので、エネルギーを使ったらそれを満たすという調節が大事。次の作品のためにエネルギーをためています。以前はシナリオのなかに妙ななにかを感じさせるものがあるかどうかで出演を決めていましたが、最近はそういった枠を超えていて。その意味では作品を選ぶ基準が厳しくなっているといえるかもしれません」

 イクチュンからは“エネルギー”という言葉が多く出てくる。次に監督として手がけるのは、ようやく貯めたエネルギーを全てつぎ込みたいと思える作品。どんなものになるのか気になるところだが、明言はしない。「いずれにしても僕がやりたいのはリアルな人間ドラマですね。そうは言っていても、それだけではなくて、出演はすぐに決めてしまうこともあると思いますけど(笑)」。

 そんなイクチュンは、現在公開中の『かぞくのくに』(ヤン・ヨンヒ監督)、9月8日公開の『夢売るふたり』(西川美和監督)に出演している。両作には「自分が本当に演じてみたいキャラクターが出ている作品のなかに、エネルギーを全部つぎ込みたい」という想いがあった。

 一方、エンターテインメントとはなにか、という問いかけがイクチュンのなかには常にある。誰もが楽しめる作品だけではない。作り手の理屈による作りやすい作品だけでいいのか。「ただ単に甘いもの、簡単なものの方向に走るのではなく、たまには苦いもの、難しいものに目を向けて一緒に悩んでいくうちに価値観が出来上がっていく。楽しむだけの作品も大事ですが、苦しみや悲しみがあったらそれに打ち勝ってこそ幸せがあると思います」。韓国のインディペンデント映画界から、辛酸をなめてのしあがってきたイクチュンの胸のうちに秘める想いが伝わってくる。

 前述の出演作はまさにイクチュンのいう「観客に観て考えてほしい」エンターテインメント。「矛盾した人たちの社会、社会の矛盾した環境を語っています。自分の前の世代の問題であり、次の世代の問題でもある。いろいろな問題を今の世代が話し合う必要がある。同時代を生きている人間として、いろいろなことに一緒に悩んでくれたら」と語る。

ヤン・イクチュンが素顔をみせる動画インタビュー

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