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志尊淳、役者人生をかけたトランスジェンダー役 「これでお芝居ができなくなるかも」

 オリコンのグループ会社・oricon ME発行のエンタテインメントビジネス誌『コンフィデンス』が主催し、有識者と視聴者が共に支持する質の高いドラマを表彰する「コンフィデンスアワード・ドラマ賞」が18年1月期(第11回)の結果を発表。「主演男優賞」は、『女子的生活』(NHK)で、トランスジェンダー“女子”を熱演した志尊淳が受賞した。同クールでは『女子的生活』のほか、『ドルメンX』(日本テレビ系)、『トドメの接吻』(同系)と3つのドラマに出演。多忙のなか、それぞれ全く違う癖のある役柄を演じ、注目を集めた。『女子的生活』にあたり志尊は、「これでお芝居ができなくなるかも」と覚悟を持って挑んだ役への思いを語った。

役者人生をかけ、覚悟を持って挑んだトランスジェンダー役

――まずは受賞の感想を聞かせて下さい。
志尊 主演男優賞をいただきとても嬉しいです。『女子的生活』のお話をいただいた際に、プロデューサーさんと監督さんが「共犯者を探しています」と言っていました。とてもセンセーショナルな内容なので、“これでお芝居ができなくなるかも”“命がけで作品を作っていかないといけない”それぐらいの覚悟で、この役を演じました。原作を読ませていただき、「演じてみたい」という気持ちが強くなった一方で、僕の発信の仕方によっては、トランスジェンダーについて間違った印象を世間の方に与えてしまうかもしれない。責任重大だと感じました。みきという人物は、僕ひとりではなく、スタッフとキャストと全員で作った作品です。ご一緒したカンパニーの皆さんに感謝の気持ちでいっぱいです。

――いつ頃、出演のオファーがありましたか?
志尊 撮影の2ヶ月前です。実は、この作品が決まったときに、男性と女性、どちらをキャスティングするか悩まれていたと聞きました。男性が女性を演じるよりも男性らしい女性の方が女性に見える。NHK局内でも、女性で進めた方が良いのでは…という意見もあったようです。でもプロデューサーさんは、男性のキャストで進めるべきだと考え、僕に声をかけてくれました。

――撮影まで2ヶ月前という短い期間でハードなトレーニングを積んだと思いますが、どんなトレーニングを行ったのでしょうか?
志尊 トランスジェンダーの西原さつきさんが開いている「乙女塾」のメソッドで「トランスジェンダー指導」を受けました。“身体は男性だけど心は女性”の方に女性らしさに磨きをかける指導をしていて、マンツーマンで1日8〜9時間のレッスンを毎日受けました。まずは、もともとの骨格を変えるところからスタートしました。自分が普段どういう動きをしているかを認識し、関節の動かし方、佇まい、声の出し方、会話のテンポ、間のとり方、自分が気になる部分について、理論的なところから勉強しました。ある時、監督から「みきとしてさつきさんと雑談してみよう」と言われたことがあって、僕が思い描いているみきになりきって話をしていたら2時間が経っていました。その時に、自然とみきのパーソナルな部分と重なり、役が掴みやすくなりました。もちろん、みきの気持ちに100%共感するのは、そんなに簡単なものではない。だからなるべくみきの気持ちに寄り添うようにしました。

――ちなみに、骨格を女性的に変えるとはどういう感じなのでしょうか?
志尊 女性と男性では姿勢が全く違います。女性の方は、胸を張っているというか、骨盤がきゅっとなっているというか。その体勢をずっとしていると腰がどんどん痛くなるし、レッスン中はずっとヒールなので、ヒールを履くための筋トレやボイストレーニング、ウォーキングのレッスンもありました。それぞれの今の身体にあった見せ方があって、さつきさん曰くマスターするには少なくとも2、3年はかかると言われました。身体にムチを打ってがんばりました。

――意外と体力勝負なんですね。
志尊 はい。でも、教えていただいた先は、「志尊くん次第」とさつきさんに言われました。だから、自分自身をまず見つめ直し、内面的な部分から変えていきました。

みきという人物を通して、正確にトランスジェンダーについて伝えないといけない

――身体は男性で、心は女性として生きて恋愛の対象は女性というとても複雑な役です。
志尊 男性から女性の心になり、でも女性のことが好き。男性の部分を排除して、女性として生活し、女性のことが好き。だけど周りからは男性として見られている。その複雑な心理と状況のなかで、カップルとして付き合う、結婚するというよりもワンナイトでも嬉しいというみきの性に対する貪欲さを突き詰めて演じることで、はたからみたら悲しく、寂しいことのように見えたらいいなと思いました。

――レズビアンの関係性ですよね。
志尊 はい。第1回のゆいちゃん(小芝風花)もそうですが、みきが好きになった人はレズビアンではないんですよ。その心理や状況は、僕にとっては未知なことなので、その想いをどう自分自身に取り込むかというところが、難しかったです。

――みきは、女装ではないんですよね。
志尊 はい。それは僕が責任持って言っていかないといけないことです。ドラマについて「あの女装すごく良かったね」と言われることがあるんですが、女装ではない。この作品に出演して、僕も性的マイノリティについて勉強させていただきました。身体と心が男性で、女性のことが好きなのが、普通だと捉えられているなかで、トランスジェンダーであることを特別扱いされるのも嫌だし、個性とも違う。みきという人物を通して、これも1つのパターンだということを僕がしっかりと伝えていかないといけないなという責任を感じました。

――志尊淳さんが演じているので背が高く、女性には見えにくい部分もあります。それは、みきとしてどのように捉えているのでしょうか。
志尊 好きなものは好き、尊重し合うことは尊重し合うと、劇中のモノローグに出てきますが、それがみきの一番キーとなっている部分です。僕の認識だと女性っぽく見られたいということを越えて、自分自身の姿を恥ずかしいとも思っていない。それは髪型からも言えることで、前髪をセンター分けにしているのもその1つです。男性から女性に容姿を変えるときに、前髪を作った方が、女性っぽく見える。おでこのデコルテやトータルバランスから考えると、前髪でおでこを隠すことで女性に見え易い。そこをみきはあえておでこを出している。それは、みきの自信を意味していて、女性として見られることを一番に思っていない。私は私という強い意志が感じられる部分です。

――ラストシーンは、とても印象的でした。
志尊 これは裏テーマで、最終回でショートヘアにしていますが、あれはみきにとって世の中に対する宣戦布告なんですよ。視聴者の方からもショートヘアの方が可愛かったと言われますが、それが狙いなんです。鏡に向ってあっかんべーってしているのもいろんな意味が含まれています。ヒールを履くこともそうだし、わざと足を露出しているのも女性に見られたいだけならいろんな方法があると思うんですよ。みきは、性別が違っても、好きなファッションをして、好きなことをやって、誰かに認められたいとか、そういうことは問題ではない。劇中でも、性的マイノリティを認めないと言われるシーンがあり、実際に視聴者からそういう声もいただいています。いま性的マイノリティは、13人に1人いると言われています。そのなかで、多くの人が埋没系と言われる自身の性的マイノリティを隠しながら生きている。好きなことをやってもいいじゃないかという、そういう方たちへのメッセージも含まれています。

提供元: コンフィデンス

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