中国コンテンツ市場のトレンドと求められる新たな発想
中国企業の2次創作やメディアミックスがトレンド
分部氏は「ここ5年でコンテンツビジネスが成立するようになりました。16年以降は、課金を受け入れる消費者が増え、コンテンツも輸入だけではなく、中国企業による2次創作やメディアミックスがトレンドになっています。中国オリジナルIP創作も増加し、海外輸出の成功事例も増えています」と現況を語る。
ジャンル別では、市場規模がもっとも大きいのがゲーム。30代男性の課金ユーザーが中心となり安定的な成長を遂げ、17年は2000億元(3兆4000億円相当)を突破している。
音楽は、パッケージ、デジタル音楽、コンサートを含めた16年の市場規模は703.98億元(1.1兆円相当)だが、未だ海賊版がはびこるパッケージはそのうち5億元前後(86億円相当)。デジタル音楽は、11年頃から版権保護や市場規制の意識が高まり、レーベルや音楽配信サービスと大型サイトが次々に契約を締結。13年には各サイトが有料ダウンロードサービスを開始し、市場は右肩上がりに成長を続け、16年には529.26億元(9000億円相当)まで拡大している。
コンサート市場規模も13年から伸張し、16年で48.13億元(817億円相当)となっている。ここ最近では「2.5次元ミュージカル公演が増えており、中国人俳優を起用した合作も生まれています。この先の発展が期待される分野です」と語る。
中国ビジネスの難しさとこの先、重要になる発想
「中国人は、権利を購入した以上、自由に扱えると考える傾向が強い。相互の前提条件が異なることを事前に確認、正しく理解したうえで、各種条件を交渉し、1つずつ合意していくことが肝要です。また、日本は製作委員会が権利を保有することが多いのですが、中国は権利保有者が少なく比較的明確でシンプル。日本の権利関係が複雑で、関係者が多いことが原因でスピードが遅くなることに嫌気を刺されることが少なくありません。事前に権利関係をシンプルに整理しておくと中国への展開をスムースに実現しやすくなります」
そして、日中が良好な関係にある今年はチャンスとしながら、今後の見通しを「中国市場はコンテンツビジネス体制の健全化がより図られて、ライセンス費用やユーザー課金による回収がさらに進むでしょう」と語る。その一方、市場の成熟とともに古いIPの価値が薄れていく可能性も指摘する。
「日本のスーパーIPの価値は未だ衰えていませんが、いずれ価値が下がるときが来ます。中国企業によるオリジナルIP創作や、海外企業が中国ニーズにあうIPを新たに創作するケースが増えていくでしょう。単純なIP輸出ではなく、日本のクリエイティブの仕組みそのものを持っていって中国のキープレイヤーと組んで作るという発想が重要になっていくと思います」と中国コンテンツビジネスの先を見据える。
(文:編集部・武井保之)