ミュージックビデオからも垣間見える、星野源×『ドラえもん』タイアップの“潔さ”
“潔さ”こそが記憶に残るタイアップのカギ
ここまでタイアップ先の世界を組み込んでいるパターンというのは珍しく感じるかもしれないが、実は広告、マーケティング的観点でもこの形こそがもっとも違和感なくファンにも受け入れられ、効果的なのである。
ファンとしてはプロダクトプレイスメントを見たいのではなく、アーティストの姿や声を純粋な形で見たい。ゆえに“さりげなく”組み込むことで双方の利害を一致させるといういわば大人の事情を考慮したタイアップが多い。
しかし、どうせタイアップをするのなら今回の星野源のように堂々とやりきってしまったほうがファンとしても許容できるし、純粋に楽曲やミュージックビデオに浸れる。結果、何度もリピートしてしまうし、頭の中に映像やメロディが残る。潔さがプラスに働く要素と言える。
得てしてタイアップの場合はなるべくブランド色を薄めようとしがちだが、実際は、潔くやりきったアーティストのほうが得るものは大きい。自身の世界観の中にブランドを昇華させるチカラがあるアーティストは結果、そこに両者の世界観が並列に存在し、意味あるタイアップとなるのである。(文/高野修平氏)
この「ドラえもん」の世界観を活かしたミュージックビデオのアイデア&プロデュースは星野源。映像の中に見られる細かな美術は、「恋」、「Family Song」のMVでもアートディレクションを手がけた吉田ユニ。そして監督は、「SUN」、「時よ」、「恋」、「Family Song」に続き、関和亮が担当。ヒットメイカーたちによる一連のプロダクトは、星野源のファン、そして、すべての世代の「ドラえもん」ファンも楽しめる作品に仕上がっている。この“潔さ”を成立させたプロフェッショナルたちの遊びゴコロこそが本作の見どころ、聴きどころも言えるだろう。