ダイヤモンド社より『苦しかったときの話をしようか ビジネスマンの父が我が子のために書きためた「働くことの本質」』が刊行されたことを記念して、紀伊國屋書店梅田本店主催で森岡毅氏のトークイベントが開催された。
USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)をV字回復させたことで知られる稀代のマーケター・森岡毅氏は、現在は株式会社 刀を立ち上げ、様々な企業の再生に取り組んでいる。多忙を極める森岡氏が書店主催のイベントに登壇することは極めて稀なのだが、今回は紀伊國屋書店梅田本店の百々典孝次長のラブコールで実現した。百々次長は、森岡氏の書籍デビュー以来、積極的に応援し、「日本で最も森岡毅の本を売った男」として知られる仕掛け人である。今回の『苦しかったときの話をしようか』も、日本中の書店の中で紀伊國屋書店梅田本店が最も多く売っているという。
今回はイベントの後半、参加者との質疑応答の一部を掲載する。
(撮影/水野真澄)
新規客が獲れないお店は
ブランドの特徴が不明確になっている
――森岡さんの座右の銘は何ですか?
「やっぱり生き方としていちばん大事にしているのは『迷ったときは厳しいほうを取れ』ですね。本当はしんどいんですよ。USJのときもしんどかったし、起業してからはまた別の苦しさがある。でも自分の目的を明確にして、それが実現できる確率の高いほうはどちらかを考えたとき、最後は厳しいほうを選んでいる。これが、私の中で経験値を蓄えていくひとつの仕組みです。実はこれを教えてくれたのは父親です。父親は厳しい人生を歩んだんですが、それはすごいことだったんだなあと思います。やっぱり痛いのは嫌だから、誰でも楽なほうを選びたくなります。私だっていつも絶好調なわけではない。逃げたいときに、それを支えてくれる言葉が『迷ったときは厳しいほうを取れ』ですね」
――森岡さんは何のために働いていますか?
「自分が生きている実感がほしいからです。人のためとか、日本のためということは思っていますが、ぐるっと回って自分のために働いている。自分の頭の中で考え込んだ戦略を世の中に投げ込んだときに、ポジティブなものも含め、いろんな反応が返ってくる。そのときに世界と自分がつながる気がする。この実感と興奮を味わうために生きていると思います」
――自分の息子さんと一緒にビジネスをしたいと思いますか?
「それは思いません。息子を拒絶したいわけじゃなくて、息子に自由であってほしいからです。貧乏なところから、少しずつ努力して上がっていくことは楽しいものなんですよ。結婚して、ひとりふたりと子どもが増えて、少しずつ家財道具も買い揃えていく。それこそが人生です。その段階を一足飛びにして、一緒にビジネスをやろうというのは、彼の人生から楽しみを奪ってしまうことになる。彼がもし私に教えを請いたいと言ってきたとしても、私は信頼できる人に彼を預けて苦労をさせると思う。そうでないと彼のために良くないと思います。ちなみに刀は、縁故採用厳禁です。それをやると会社がおかしくなってしまう。いらぬ忖度みたいなことが会社にはびこるようになるからです。それにやっぱり自分の子どもは冷静に見れないですね。かわいいからです(笑)。自分の子どもは超かわいい。だから自分の仕事の周りには近づけないです」
――私は90歳の経営者です。8年前に関西で450席のバイキングをオープンしました。開店当時は素晴らしい売上でしたが、最近は少しずつ売上が落ちています。○○○というお店です。どうしたらいいでしょうか?
「私は何度かそのお店を利用したことがあります。率直に申し上げると、ブランドの焦点を決めることですね。入ってみれば、和洋中そろった、そこそこよいお店だと思います。でもそれではリピートは増えても、新規のお客様がなかなか取れない。最近、刀と協業した丸亀製麺さんのケースと同じで、新規が入りにくくなっているんですね。新規が取れないお店の特徴は、そのブランドの特徴がお客様にとって不明確になっているということです。そのお店ならではの特徴をお客様の頭の中に植え付けなくてはいけない。店名のとなりに、なんらかの特徴を表示すべきでしょう。インターネットでの表示も同じようにすべきです。ブランドに顔を作っていくことです。ブランドの特徴が減っていくと、消費者は選べないのです。必要なのは、そのお店に行く理由です。店名の横に嘘ではない魅力的な一言を加えられれば、新規のお客様を引き付けるきっかけになります」...