“身の丈”なんて忘れちまえ
クラシカルなスタイリングと本気のオフロード性能を併せ持つ「トライアンフ・スクランブラー1200XE」。870mmという高いシート高が気になるところだが、実際に乗ってみると、「それでも欲しい」と思わせる魅力にあふれた一台に仕上がっていた。
ライダーのM心を刺激する
クルマを運転する時、最初にすることはシートやハンドル位置の調整だ。安全に操作できる環境を整えてから走りだすのが当たり前で、もしも調整機構が付いていなければ批判にさらされる。
ところがバイクにその感覚はない。調整機構など備わっていないのが普通のことで、あったとしても可動範囲は数mmからせいぜい20mm程度。車体サイズが身の丈に合わなければあきらめるしかないのだ。そうでなければスキルアップを果たすか、体を鍛えて出直すか。クルマと比べると絶望的なおもてなしの欠如ながら、そういうハードルを強いられても納得できるバイクがある。トライアンフから登場したスクランブラー1200 XEがまさにそれで、ライダーなら少なからず持ち合わせているドM心をくすぐる一台だった。
スクランブラー1200 XEのデザインはネオクラシックに属する。それゆえ、一見すると穏やかな癒やし系ながら明らかに腰の位置が高い。それを察知した編集スタッフのSさんは、賢明にも「バイクの引き取りと返却もお願いできますか?」とリクエスト。リスクを回避するのも重要な仕事である。
とはいえ、筆者の身長は174cmほどだ。低くもないが高くもない極めて平均的な日本人サイズであり、股下もしかり。トライアンフジャパンの地下駐車場で車両を受け取った時、いかにも「全然余裕ですから。こんなの毎日ですから」という体で発進したものの、緊張感はそれなりにあった。...