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「センスがないと戦略は作れない」は大間違い。では、戦略を作れる人と作れない人の差は何か


「構想力・イノベーション講座」(運営Aoba-BBT)の人気講師で、シンガポールを拠点に活躍する戦略コンサルタント坂田幸樹氏の最新刊『戦略のデザイン ゼロから「勝ち筋」を導き出す10の問い』(ダイヤモンド社)は、新規事業の立案や自社の課題解決に役立つ戦略の立て方をわかりやすく解説する入門書。戦略とは何か。変化の時代に、企業は何を問い直すべきなのか。本連載では、さまざまな経営や組織の悩みについて坂田氏に話を聞きながら、同書の考え方を現在進行形の課題へと結びつけていく。

なぜ「戦略はセンスが必要」
という誤解が広まったのか

――「戦略はセンスがないと作れない」と感じている人も多いと思いますが、なぜそのように考えられがちなのでしょうか?

スティーブ・ジョブズやイーロン・マスクのような天才と言われる経営者が脚光を浴びて、そういった人たちが素晴らしいアイデアを突然思いついて実行しているように見えるからではないでしょうか。

しかし実際には、そのような人たちが突然天才的なアイデアを思いついて実行しているわけではありません。

アップルのiPodにしても、少人数のインナーチームを作って設計したから成功したと言われますが、実際には会社が苦境に立たされていて人数を割けなかったという背景もあります。iPhoneについても、スティーブ・ジョブズは当初、電話を作ることには反対していたという話もあります。

――センスだけで戦略が決まるわけではないとすると、実際の戦略はどのような要素で成り立っているのでしょうか?

経営学者のヘンリー・ミンツバーグは経営をアート・クラフト・サイエンスという三つの要素に分けています。この中で、創造力を活かした意思決定の領域であるアートばかりが注目されがちですが、実際には、事実と分析をもとに論理を組み上げるサイエンスも、経験と実践に基づいて戦略を実行していくクラフトも不可欠です。

特に現在は、そもそもゴールを定めること自体が難しい時代です。一つのアイデアだけで勝負が決まるわけではなく、試行錯誤を繰り返しながら実行していくことで、誰にでも勝機がある時代になっています。

戦略を作れる人と
作れない人の本当の差

――では、戦略を作れる人と作れない人の差は、どこにあるのでしょうか?

センスが全く関係ないとは言いません。ただ、仮にセンスとスキルに分けて考えるのであれば、スキルの比重が非常に大きくなっていると考えます。

かつては一つの戦略を実行するのに大きな資本や時間が必要だったため、センスの良い戦略の重要性が高かったかもしれません。一度決めた方向を簡単に修正できず、最初の判断がそのまま成否を左右してしまったからです。

しかし現在は、AIの力を使えばさまざまなことが実現できるようになっています。最初の着想はもちろん大切ですが、それが違っていた場合にすぐにピボットして動ける機動力も重要になっています。

さらに、世界中の人と連携できる時代でもあります。そのため、リソースを組み合わせるための連携力も重要になります。そうした場面で、自分の考えをいかに的確に相手に伝えられるかという力も不可欠です。

ただし日本社会においては、ここに一つの大きなハードルがあります。縦の関係を築こうとしがちで、会社と従業員、発注元と発注先といった上下関係にすぐに置き換えてしまいます。

しかし、それでは共に価値をつくることは難しい。横の関係を築いて、パートナーと共創する力が、これからの時代には求められています。

こうしたスキルを持つか持たないかが、戦略を作れる人と作れない人の差となって現れます。

戦略思考を鍛えるために
日頃からやるべきこと

――では、そのような力はどうすれば身につけられるのでしょうか?

私が最も重要なスキルの一つと考えるのは「言語化する力」です。

多くの人は何かを見たり感じたりしていても、それを表層的な感想で終わらせてしまいがちです。そこから気づきを得て意味を与え、新しい発想につなげるところまで深められていません。

そのレベルまで深めるために必要なのが、言語化する力です。

たとえば、自分の心が動いた出来事について、「なぜそう感じたのか」を具体的なエピソードとして書き出してみる。この習慣を持つことが重要です。そのようにして心が動いた瞬間を正確に言語化できるようになると、自分の判断軸を他者に伝えられるようになります。結果として、人との連携やAIの活用においても大きな力になります。

言語化能力は、すべての土台になるスキルです。

――「戦略を作れない人」がやりがちな、失敗パターンはありますか?

現場を十分に観察せずに、思いつきで戦略を作ってしまうことだと思います。

結果を出している経営者は、例外なく現場をよく見ています。現場を見ていないと、発言はどうしても抽象的なビッグワードに偏ってしまいます。

たとえば、日本の地方都市の問題を「人口減少」「高齢化」「社会インフラの維持が難しい」といった大きなキーワードだけで捉えていても、そこから具体的な解決策は生まれません。

実際にどのような人が、どのような状況で困っているのかを現場に見に行って、具体的なエピソードを聞き、それを自分の言葉で言語化し、捉え直すことが重要です。

ビッグワードは誰でも言えます。戦略の質を決めるのは、現場の解像度です。

「戦略のデザイン」とは
どういうことか

――本書『戦略のデザイン』は、センスではなくスキルで戦略を作るという考え方と、どのようにつながっていますか?

デザインには、「形のないものを形にする」という意味があります。戦略も同じで、本来はまだ存在しない未来に対して、進むべき方向を描いていく営みです。

「戦略立案」と聞くと、難解なフレームワークをセンス良く使いこなすイメージを持つ人が多いかもしれませんが、本質は「自分たちは何者か」「どこを目指すか」「どのルートで進むか」を、チーム全員が理解できる言葉で描くことにあります。

本書では、その際の道しるべとなる10の問いを提示しています。戦略は、センスのある人だけが生み出せるものではなく、適切なプロセスに沿って考えることで、誰でも形にすることができます。

――最後に、「自分にはセンスがないから戦略は作れない」と感じている人にメッセージをお願いします。

本書『戦略のデザイン』では、戦略を作って実行するまでのプロセスを10の問いとして整理しています。それぞれの問いに具体的な事例や思考のヒントを数多く盛り込んでいるので、それに沿って考えていくことで、誰でも戦略を作れるようになります。

ただし、明日からいきなり素晴らしいものが作れるとは期待しないでください。何度も繰り返して、失敗してはまた実行していくという試行錯誤の中でスキルを磨いていくことが重要です。

そして、闇雲に繰り返せば良いわけでもありません。正しいガイドがあって初めて成長できます。本書の10の問いを、そのための指針として活用していただければと思います。

――ありがとうございました。

提供元:ダイヤモンド・オンライン

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